岩手県立病院 5施設で無床化スタート

入院患者がいなくなり、19のベッドはすべて空いた=九戸地域診療センター
 入院ベッドをなくし、夜間診察も行わない岩手県医療局の無床化が1日、5カ所の地域診療センターで始まった。これまで当直応援をしてきた基幹病院の負担が減った一方で、地元住民からは不安と不満の声も上がった。県は同日、医師支援推進室を設置するなどし、医師不足解消と病院経営の黒字化を目指す。ただ、先行きの厳しさは変わらず、達増拓也知事は病院再編など新たな見直しの可能性にも言及した。

 「現場の医師の声を聞き、(岩手に)定着してもらえるように取り組んでほしい」。達増知事は1日、医師支援推進室の発足式で強調した。

 県と医療局が合同で設置した推進室は、これまでの医師確保対策室に代わる組織。県外から医師を招く活動に加え、県立病院を中心に、現在の勤務医の退職を防ぐ活動などに取り組む。

 県は4月、花泉(一関市)、大迫(花巻市)、住田、紫波、九戸の診療センターの無床化を始めた。住民の不安を取り除くため達増知事が今後、地域説明に出向くほか、2次保健医療圏ごとに地域医療のあり方を考える協議会も設ける。

 加えて県立病院の女性医師らの支援策として、24時間対応可能な院内保育を現在の一病院から十病院に拡大し、医師定着への取り組みを加速させる。

 だが、無床化などによって県立病院経営を2011年度に黒字転換させる医療局の「新しい経営計画」には、「黒字化は信じられない」との声が、有識者らによる経営委員会から上がっている。

 こうした意見を踏まえ、達増知事は1日の定例記者会見で「(22病院、5診療センターを抱える)県立病院システムが県財政を破綻(はたん)させることがあってはならない」と強調。病院体制のさらなる見直しの可能性について「臨機応変に対応することはやぶさかではない」と述べた。

◎不安ぬぐえぬ住民/医療機関は連携強化へ/二戸・九戸

 九戸村の九戸地域診療センター。無床化が始まった1日、ベッドだけが残る2階の病室はひっそりとしていた。
 「入院患者の急変などに備える当直は医師の大きな負担。無床化はどうしても必要だった」。センター長を兼ねる二戸病院の佐藤元昭院長はほっとした様子で話した。

 無床化に伴いセンターの入院患者は3月26日までに約20キロ北の県立軽米病院に転院するなどした。夜間と休日は医師不在になるが、平日の外来診療に変わりはない。県立病院長経験者の内科医が着任して常勤医が2人になり、当直負担をなくした効果も出た。

 二戸病院も引き続き、外来応援を続ける。同病院では24時間保育も今月始まり、5月着任予定の女性医師が「安心して働ける」と話すなど、医師確保に向けた態勢も整いつつある。

 だが、九戸村民の不安は解消されていない。1日に受診した無職中村昭男さん(76)は「医師が1人いてくれれば安心できるのに」と夜間受診ができないことへの影響を懸念。主婦七戸サキさん(54)は「高齢の母がいるので心配だ」と話した。

 「(九戸で)外来診療も受けられなくなる」と思い込む住民が少なくなく、二戸病院の外来が増えたこともあり、誤解や不安を取り除くことが課題だ。

 佐藤院長は今後、二戸地域の医療機関で連携を強める方針。「九戸では訪問診療にも力を入れるなど、無床化が住民の皆さんの負担にならないようにしたい」と語った。
2009年04月02日木曜日

岩手

政治・行政



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