現在、設立に向けて準備を進めている(仮称)生駒市立病院の計画が、本年7月に生駒市医師会が突如、反対を表明したことにより、見通しが立たなくなっています。この問題は本市にとって大変重要であり、本日の朝刊各紙にも昨日の医師会との話し合いの結果が報道されていますので、本欄でこの問題の経緯、背景等をお伝えし、市民の皆さんのご意見を伺うことと致しました。
この問題は、平成17年1月に突如、同年3月末をもって生駒総合病院が閉院されることが報道を通じて明らかになり、患者や市民に不安が広がったことから始まりました。同病院の閉院後、市は近畿大学による病院機能の継承を模索したものの同大との間で話がまとまらず、そのまま市長選に突入しました。前市長も私も市が中心となった病院の再建を公約とし、当選後、私はこの問題を市政の最重要課題と考え、最も多くの時間を割いて病院の再建に奔走してきました。
18年11月に生駒市医師会、生駒地区医師会、奈良県医師会、奈良県病院協会の各団体からご推薦頂いた委員4名を含む9名の委員で「新病院整備専門委員会」を立ち上げ、新病院で必要となる診療科目や診療内容についてご検討頂き、その結果を「中間答申」として19年1月にご提言頂きました。そして、市立病院の指定管理者として、この答申を実現して頂ける医療機関を探し始めました。
しかし、196というベッド数の少なさや医師確保が困難という理由から、なかなか手を挙げてくれる医療機関はありませんでした。一方、奈良県が定める保健医療計画で本市を含む地域で利用出来るベッド数は決められており、その利用可能期限が20年3月末に迫っていました。そこで、本市は市立病院の指定管理者を、これまで接触してきた医療機関も含めて全国公募することとし、結果、医療法人徳洲会だけが応募してきました。本市は、徳洲会が「中間答申」の内容を実現することのできる医療機関かどうかを審査し、前述の委員会、市議会、生駒市医師会とも協議した後、最終的に同法人を指定管理者候補と決定致しました。
このようにステップを踏んで計画を進め、本年2月には奈良県に対し、県による病院開設許可の前段階である奈良県医療審議会の審議に付するため、新病院の事前協議書を提出致しました。しかし、前述の通り、7月に市医師会が反対を表明され、それを理由に8月の県医療審議会では継続審議となりました。
9月に市医師会と会って話をしたところ、「指定管理者を民間医療法人とすることは認められない。そうなれば地域の医療機関が潰れてしまう」と言われました。また、昨日、市医師会、生駒地区医師会、奈良県医師会の3者と話をしたときには、「指定管理者が徳洲会であることに反対だ」と言われました。「何故か」と聞いたところ、愛媛県の宇和島徳洲会病院で行われた病気腎移植の問題などを指摘されましたが、それ以外に徳洲会の医療と関わる具体的な問題の提示はありませんでした。なお、この問題では、与野党の国会議員でつくる「修復腎移植を考える超党派の会」(約70人)が本年5月に、問題視された病気腎移植は第三者による客観評価などを条件に容認できるとの見解をまとめ、今後、議員立法を検討することを決めました。(こちらの記事をご覧下さい。)
今、日本全国で自治体病院が苦境に陥っています。新聞報道によれば、全国で約1000ある公立病院のうち、赤字解消のため、過去6年間で民間に譲渡された病院は19も、運営を外部委託した病院は44もあります。佐賀県武雄市では、市立病院の民間委譲に対し、やはり地元医師会が反対しているそうです。
総務省も自治体病院の経営改善のため、民間への譲渡や民間医療法人等を指定管理者とすることを推奨しています。現在、地方自治体はどこも財政難であり、かつ行政職員には病院経営や医師・看護師確保の力が乏しいので、当初から私も指定管理者制度を念頭に置いていました。
今回の計画も、土地と建物は市で用意するものの、経営は指定管理者である徳洲会の独立採算でやってもらい、市は一切赤字補填をしないことになっています。また、建物の建設費についても、建設のための借入金の元本相当額を毎年度徳洲会に分割納付してもらうことになっています。このような計画で、開業3年目から市の資金収支は黒字となることを想定しています。
私は、地方自治体が病院経営から手を引くような厳しい時代に敢えて病院経営に乗り出すには、市の計画のような形態しかあり得ないと考えております。また、指定管理者として経営を引き受けられる医療機関も資金面や医師確保の面でそれなりの体力のある徳洲会のような大規模法人しか、現実には無理であろうと思っています。
従って、本市で今なお不足する小児医療などを確保し、市民の期待に応えるべく、今後は、県医療審議会委員や県当局に本市の考えを理解して頂けるよう努力してまいります。市民の皆様、どうぞ、この問題に関するご意見をお寄せ下さい。
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