モノ作りの明日(最終回)

March
27
2009

 「拘り」は一種のマーケティングになりうる・・・私はそう考えています。WiNDy製品の製造では、この拘りの伝達がもっとも苦労する点の一つになっています。「モノ作り」は、まず加工から始まるのではなく、まずアイディアがあって、製品のコンセプトができて、それを実際の加工にどのように伝達するかが最初の勝負どころ。このニュアンスがなかなか難しいのですが、たとえば、加工する際に「どうしてこういう加工方法を用いるのか?コストを考えると疑問だ」という場面がよくあります。コストを品質に置き換えてももちろん成り立つことですが、製品コンセプトからしてたとえコストが増大しても、引くことが出来ない部分というのがあります。こういうことを頑固に守ることで一つのイメージの構築に繋がると思いますし、決して妥協したくない部分でもあります。また、拘りというのは製品だけではなく、加工方法などにもあります。星野金属工業株式会社が倒産して、ソルダム自社工場へ製造を切り替えたとき、「星野金属製は良かった」「ソルダム製品はダメ」という何とも厳しい評価をいただいたことがあります。確かに星野金属製は、加工の9割を同社内で行っていて、どの工程でもかなりこだわりを持っていました。たとえば、曲げ加工。スタンダードな薄板の曲げ加工は「エアベンド」といって90度曲げ加工をバックニング(曲げ戻り)をあらかじめ想定した加工を行いますが、星野金属ではコイニングという、バックリング発生後に再度90度成形を行う曲げ方式を採用していました。コイニングを用いると90度曲げの外Rが非常に小さくなりスキっとしたイメージの製品が出来ます。この違いは、製品全体に及ぼすイメージを大きく向上することになる。見た目での違いや寸法精度のばらつきが最小といった点で、非常にいいと思いますが、当然欠点もあります。加工時間が長い、金型の耐久性が半分以下になる、型傷がつきやすい等々ですが、それを克服するような工夫が随所になされていました。こういった要素も「拘り」として十分に通用することだと思います。

 

 こうして特色を持った製品を作ることや加工への拘りが、2009年以降の生き残りをかけた競争の中で大切なファクターとなると思います。その意味で、いかにこの「拘り」を伝えてゆくか、お客様はもちろんのこと、それ以前に加工の現場や販売の現場にそれをどう浸透させてゆくかが、星野アイエヌジーの大きな課題でもあると思います。WiNDy製品は、「拘りの塊」のような部分がありますが、だからこそこの時代、この状況にあっても多くのお客様のご支援をいただけているものと思っています。来期はますます製品開発に力を注いで行こうと思います。そして、多くのパソコンファンの皆様に新鮮な感動を持っていただけるように頑張ります。

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Posted by 有海啓介 | この記事のURL |