モノ作りの明日(2)

March
19
2009

 先日、ある取引先の工場へ出向いた折に、面白い製品を見せていただきました。それは、私たちの身の回りにある何の変哲も無い製品なのですが、その工場の設備をつかって素材を変えて作ったものだと言うことです。もちろん、いろいろと商品として不備な点はありましたし、理由の無い加工が随所に施されていました。ご多分に漏れず仕事が激減してしまったということで、社長の言葉を借りれば「遊んでいてもつまらないから作ってみた」と言うことですが。失礼かも知れませんが、商品としては相当に未熟であると感じました。しかし、実際に販売を行って50個ほど売れたといって喜んでおられました。私はその笑顔がとても印象的だった。製品を自社で開発、または独自のアイディアを形にすることは、製造業であればままあることかもしれません。しかし、実際に販売してみるというところまで突っ込んでみるケースは非常に少ないもの。その社長さんも、「もう少しこうすればよかった」といろいろ販売してみての感想を聞かせてくれました。その感覚は、まさに私が最初にCPUクーラーの販売を開始した11年前と同じだと思いました。アドバイスなんておこがましいですが、様々な経験からもう少しこうすればいいのに、といった点をいくつか口添えさせていただきましたが、その感覚こそが「モノ作り」の基本のような気がします。本来、使用することを身近に感じてこその「モノ作り」であって、それは実際に販売をしてお客様の声を直接聞かないといい製品というのは作れません。分業が進んだ今の時代では、これがなかなか難しいことでもあります。特に下請けとして加工の一部を請け負っていたりすると、間違えばどんな製品になるのかさえ知らないこともありえます。高度に分業化が進んでしまった現在の資本主義で、この「モノ作り」でもっとも大切なことをいかに、取り戻すのか。結局、新しい時代というのはそこからスタートしないといけない、私はそう実感しました。もちろん、新しいWiNDyもそういうことを大切にしてゆこうと申し合わせています。結果として現在は、非常に厳しい品質基準をあえて設定しているのもそのためです。私は、その工場を後にする前に社長さんに言いました。「頑張って面白いものを作ってください」 こういう努力が、特に明日の中小企業、零細企業の有り方の一つであると思うからです。

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Posted by 有海啓介 | この記事のURL |