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ああ、日本から夕刊が消える!

共同通信加盟49社の過半数が朝刊単独紙に。夕刊廃止が記者の雇用問題に火をつける。

2009年4月号

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では、現在の朝夕刊の頁数はどうか。「朝・毎・読」縮冊版で頁数を拾ってみると、今年1月の総頁数は朝日が前年同月比11.3%減、読売が7.1%減、毎日4%減とすさまじく落ちている。

さらに、5大紙の今年2月の平均頁数(小数点以下四捨五入、別刷りを含まず)を多い順に並べると、首位が日経で朝刊36+夕刊17=53頁。次いで読売が朝35+夕15=50頁、朝日が朝32+夕14=46頁、毎日が朝29+夕11=40頁、産経が朝28+夕12=40頁となる。夕刊の頁シェアは日経で約32%、読売、朝日、産経が約30%、毎日が28%と、およそ3割だ。

この「3割」部分が空洞化している。主因は読者と広告主の夕刊離れの悪循環だ。読者の夕刊離れに伴い、広告主は告知効果の薄い夕刊を敬遠する。その結果、広告出稿減少→広告料下落→頁数減少となり、読者がますます夕刊から離れる。

朝日では2割が「余剰記者」

その中でにわかに顕在化しつつあるのが「社内失業」だ。減頁に加え、ここ10年来、各紙が活字を拡大した結果、記者が書くスペースはどんどん減っている。新聞の活字は長らく1行15字の時代が続いたが、現在は朝日、日経で11字と15字時代より27%も縮小。毎日に至っては10字と33%も縮小している。この結果、朝日では2割ほどの記者が「社内失業」状態に陥り、今年から本社で余剰となった記者を地方の拠点総支局に配置転換させ始めた。新聞社は歴史的に労組が強く、解雇は難しいため、地方記者を増やす形で総人件費を抑制し、かろうじて雇用を維持している。

だが、めぼしい産業・企業の少ない地方では、広告減少は都市部よりも顕著で、地方版の執筆余地は乏しい。このまま夕刊が減頁を続ければ、産経、毎日以外の全国紙も夕刊廃止は不可避となる。夕刊の頁シェア3割に照らせば、夕刊廃止後の社内失業者は少なくとも3割、朝刊の減頁分も含めると4割に跳ね上がる社まである。夕刊廃止は新聞社の雇用削減の引き金となるのである。

すでにその兆候は表れている。2月末で夕刊をやめた南日本新聞は整理記者の減員、配転を実施。琉球新報も「整理部など内勤部門の一部部員の配置転換を行ったうえ、夕刊専門の配達員だった約950人の一部も朝刊配達に振り向けたり、昨秋から受託印刷している『日経』夕刊の配達に回したりした」(経営企画局)。雇用調整はすでに始まっている。

広告激減に伴い、各紙は4月以降、さらに減頁を進める見通しだ。このため、夕刊を廃止する地方紙の中には、記者のワークシェアリングを検討している社もある。例えば、記者の給料を半分にする代わりに勤務日数を半分にして副業を許すという考え方だ。社内外の記者と特ダネを競う環境で育てられる記者に、単純なワークシェアリングはなじまない。しかし、そうでもしなければ大量解雇は避けられない。夕刊を廃止した地方紙の経営者の中には「現在の給与水準では記者の半分が過剰」と言い切る人もいる。

思えば、世界で朝夕刊を出し続けている国は日本と韓国だけだ。新聞の祖国イギリス、新聞大国のアメリカやロシア、中国でも、朝刊か夕刊の単独発行だ。収益拡大を狙って朝な夕な新聞を出し続けてきた日本の新聞が、テレビとインターネットという後発媒体に押されて世界標準に回帰しつつある。歴史の必然とはいえ、わが国の新聞界にとっては深刻な事態と言わざるを得ない。

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