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クローズアップ2009:小沢・民主代表、続投会見 強気の全面対決

 民主党の小沢一郎代表の政治資金管理団体をめぐる違法献金事件で、4日会見した小沢氏は「違法性の認識はない」「不公正な強制捜査」と、検察側と全面的に対決する姿勢を打ち出した。強気の裏には「何らやましいことはない」との確信に基づく「政治家としてのプライド」(側近)があるという。だが、それを支える献金への認識は、捜査の進展次第で揺らぎかねない。異例の強制捜査に踏み切った検察は、小沢氏の反論にも立件に自信を示している。【渡辺創、安高晋】

 ◇「認識の違い」支えに

 「私は政治献金をすべて法にのっとって報告し、オープンにしている」。40分弱の会見で、小沢氏は5回も同じフレーズを繰り返し、合法性を強調した。「ゼネコンからの多額の献金は自民党と同じ体質では」と指摘されると、「献金はどこから受けても構わないが、すべて公開し妥当かどうか国民が審判を下すというのが民主主義のあり方だ」と自らの「民主主義論」を展開。「『自民党と同じ体質』というたぐいの意見は、まったく心外だ」とむきになって反論した。

 政治資金規正法違反について「一方的なこじつけた理由での検察権力発動は非常に公正を欠く」とも訴えた。

 献金を受けた事実に争いはなく、小沢氏の「やましいことはない」との確信を支えるのは、公設第1秘書の大久保隆規容疑者(47)が「企業献金とは思わなかった」との認識が中心となる。

 ただこれは、どこで献金を受け取ったかなど外形的事実の積み上げ次第で、たちまち窮地に陥りかねない、脆弱(ぜいじゃく)な支えだ。その点を隠すための会見での強硬姿勢だったとも見ることができる。

 また会見では論点をずらし、次期衆院選を前に世論を意識した発言も目立った。

 冒頭で「衆院の総選挙が取りざたされている時期に異例の捜査が行われた。非常に不公正な検察権力の行使だ」と断言。その後も検察批判を繰り返し、「このような権力行使が今後も行われれば、国民の人権を守ることができない。大変民主主義を危うくする」と、重ねて「民主主義の危機」を訴えた。

 記者会見をテレビで見た小沢氏側近は「小沢さんは本気で怒っている。潔白だと思っているからだ。(大久保容疑者が)起訴されようが関係なく、裁判で結論が出るまで徹底して争うのではないか」と語った。

 小沢氏は、04年に国民年金保険料未納問題が浮上して辞任した菅直人代表(当時)の後任に内定したが、自らの年金未加入発覚を受けてあっさり辞退した。「小沢さんは少しでも落ち度があると思えば簡単に引く。今回のように突っ張るのは政治家としての意地だ」(側近)との指摘だ。

 小沢氏は、政治家個人の意地と選挙をにらんだメッセージを記者会見で同時に発信し、民主党すべてを自身の戦いに巻き込んだ。小沢氏の強気の姿勢に、執行部から若手に至るまで党内は「当面静観」の構えが大勢だ。しかしある中堅議員は「党がボロボロになりかねない。代表を辞めてから個人として戦ってくれればいいのに」と漏らす。また、「検察とは徹底的に戦う一方で、『自分が代表でいると政権交代のためにプラスでない』との理由で辞任する可能性もある」(周辺)との見方もある。

 ◇検察「証拠はそろっている」--時効迫り異例捜査

 「小沢さんの言っている通りなのか、捜査が進めば分かる」。会見で小沢氏が繰り返した検察批判に、ある検察幹部は立件に自信を隠さなかった。

 「政争の具になることに極めて慎重」(検察OB)といわれる東京地検特捜部だが、解散・総選挙の可能性もあるこの時期に政界捜査へと踏み切った。背景には、今月中に逮捕容疑の一部が時効を迎えることに加え、来年度予算が年度内に成立する見通しが立ったこともあるとみられている。別の検察幹部は「衆院解散が近々あるなら別だが、証拠がそろっている状態で時効が成立するのを見過ごすわけにはいかない」と指摘する。

 検察側が強気なのは、大久保容疑者が、今回の献金は西松建設からの違法献金であると知っていたことを示す信用性の高い証拠をつかんだことがあるともみられる。

 「不公正な検察権力の行使」などの反論に法務・検察幹部は「政治資金規正法は、国会議員たちが改正していった経緯がある。小沢さんは、自分たちで作ったルールを自分で否定しておきながら、検察を批判するのは筋違い」と批判する。

 だが、これまで政治資金規正法違反で国会議員周辺が刑事責任を問われたのは、日本歯科医師連盟から自民党旧橋本派への1億円の小切手提供など、政治資金収支報告書に記載のない「裏献金」のケースばかりだ。収支報告書に記載されている「表献金」を摘発した今回の捜査について、「これまで多くの議員が大丈夫と思っていたものを、いきなり『違法だ』と強制捜査に踏み切るのは、検察への誤解を生みかねない」と懸念する法曹関係者もいる。

毎日新聞 2009年3月5日 東京朝刊

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