ヴァンヴェール×エール | ゼフィール×エール | ベルノワール×エール
【エール】 |
「ねぇ、ヴァン。僕たちが出演する『君の中のパラディアーム』って、どんなお話なの?」 |
【ヴァン】 |
「近親相姦ゲームといってな、俺とエールがあーんなことや、こーんな恥ずかしいことをするゲームなんだって」 |
【エール】 |
「あ、今日ってエイプリルフールか。なーんだ、嘘でよかった」 |
【ヴァン】 |
「残念なことに、これは本当のことなんだ」 |
【エール】 |
「……嘘って言ってよ」 |
【ヴァン】 |
「100%事実だ!!」 |
【エール】 |
「いやだぁぁぁっ!!」 |
【ヴァン】 |
「そんな、全力で拒否しなくても……兄ちゃん、ちょっと傷ついちまったぜ」 |
【エール】 |
「ありえない。僕とヴァンが――」 |
【ヴァン】 |
「今から練習しとくか。ちゅ〜」 |
【エール】 |
「……」 |
【ヴァン】 |
「なんだよその目は。ちょっと冗談言っただけだろ」 |
【エール】 |
「ちょっと今から台本書き換えてくる」 |
【ヴァン】 |
「書き換えるって――エールはどういう話がいいんだ?」 |
【エール】 |
「そうだね――例えば……昔、昔、あるところに神様がいました」 |
【ヴァン】 |
「ふむふむ、それで?」 |
【エール】 |
「白き翼の神と黒き翼の神はとても仲良しでした」 |
【ヴァン】 |
「お、物語っぽいな」 |
【エール】 |
「白き翼の神は登山に、黒き翼の神は海水浴に出かけました」 |
【ヴァン】 |
「それで、それで!?」 |
【エール】 |
「川上から双子の子供が流されてきました」 |
【ヴァン】 |
「おお、俺登場だな!!」 |
【エール】 |
「沈みました」 |
【ヴァン】 |
「沈むのかー!!!」 |
【エール】 |
「そこにブランセルという若者がやってきて」 |
【ヴァン】 |
「兄ちゃんだ!」 |
【エール】 |
「沈みました」 |
【ヴァン】 |
「沈ませるなよ!! 助けるんじゃないのかよっ!!」 |
【エール】 |
「白き翼の神は崖から転落してお星様になり、黒き翼の神はやっぱり海に沈みました」 |
【ヴァン】 |
「あーあ、神様死んじゃったよ。どうすんだよ」 |
【エール】 |
「みんないなくなったので、エールという少年の貞操は守られました。めでたし、めでたし」 |
【ヴァン】 |
「どんだけ俺たちと絡むのがイヤなんだよ。てか、ゲームにならんだろ」 |
【エール】 |
「だって、したくないもん」 |
【ヴァン】 |
「したくないって、なにするか知ってんのか? なぁに想像してんだよ。兄ちゃんに言ってみろ〜エールのエッチ、エールのエッチ!」 |
【エール】 |
「はぁ――子供だね、ヴァンは。お兄ちゃんやめて、弟になったら?」 |
【ヴァン】 |
「おぉ、俺が末っ子になるのか。それもいいな」 |
【エール】 |
「じゃあ、そのパターンでお話考えてみるね」 |
【ヴァン】 |
「いっちょエロエロなの頼むぜ!!」 |
【エール】 |
「昔、昔、あるところにヴァンヴェールという少年がいました」 |
【ヴァン】 |
「わくわく」 |
【エール】 |
「沈みました」 |
【ヴァン】 |
「ちょ!!!! いきなりすぎんだろ。なんでそこで沈むんだよ。てか、どこに沈んだんだよ、俺っ!」 |
【エール】 |
「底なし沼とかかな?」 |
【ヴァン】 |
「ダークすぎるんですけど、エールさん? 俺のこといじめてない?」 |
【エール】 |
「そんなことないよ」(にこっ) |
【ヴァン】 |
「よし、その先は俺が考える!!」 |
【エール】 |
「ヴァンが? 考えられるの?」 |
【ヴァン】 |
「任せろっ! えーっと、沈んだというのは冗談で、実は浮いていました。そう、ヴァンヴェール少年は魔法が使えたのだっ!!」 |
【エール】 |
「ちょっと面白そうだね」 |
【ヴァン】 |
「そこでヴァンヴェール少年は魔法を使い、生き別れになっている兄弟を探すことにしました」 |
【エール】 |
「ヴァンにしてはまともだ」 |
【ヴァン】 |
「旅の途中、兄のエールを見つけ――」 |
【エール】 |
「ふむふむ」 |
【ヴァン】 |
「合体しました」 |
【エール】 |
「い、いきなり!! しかも僕と勝手に合体しないでよ!!」 |
【ヴァン】 |
「いきなりすぎると怒られたので、とりあえずちゅーしました」 |
【エール】 |
「キスもいきなりすぎるよ……」 |
【ヴァン】 |
「そして、合体しました。ハァハァ」 |
【エール】 |
「いやぁぁぁっ!! 今、僕で変なこと想像したでしょ」 |
【ヴァン】 |
「そんなことするわけないだろ。ハァハァ――ぐへへ」 |
【エール】 |
「やっぱりだめっ!! 役交代しても、ヴァンが変態のままだと意味ないじゃないかっ!!」 |
【ヴァン】 |
「そこに双子の兄ゼフィールが現れ――」 |
【エール】 |
「どうせ、合体しましたって言うんでしょ」 |
【ヴァン】 |
「一緒にセックスしました」 |
【エール】 |
「卑猥だ……卑猥すぎる……なにこの人。本当に僕のお兄ちゃんなの……というか、むしろそれを嘘だと言って。信じたくない!!」 |
【ヴァン】 |
「なぁに照れてんだよ。ほぉら、もっとエッチな単語を聞かせてやろうか?」 |
【エール】 |
「耳元で変なこと囁くなぁぁっ!!」 |
【ゼフィ】 |
「今日はエイプリルフールかぁ。よぉし、エールに嘘をついて驚かせよっと」 |
【エール】 |
(聞いてしまった……うーん、これは嘘だとわかってても、驚いてあげなくちゃ) |
【ゼフィ】 |
「あ、エール! ねぇ、ねぇ、聞いた?」 |
【エール】 |
「えっ、あ、なんの話?」 |
【ゼフィ】 |
「エールと僕、本当は血が繋がってないんだって!」 |
【エール】 |
「……えぇぇ!? お、おどろいたーっ!」 |
【ゼフィ】 |
「なーんてね、嘘だよ。驚いちゃって、かわいいね。僕とエールが兄弟じゃないわけないよ」 |
【エール】 |
「あはは……そ、そうだね。びっくりしちゃったよ」 |
【ゼフィ】 |
「あと、こんな話、聞いた?」 |
【エール】 |
「ん、なに?」 |
【ゼフィ】 |
「実はね、僕は女なんだよ!!」 |
【エール】 |
「――えぇぇ〜びっくり」 |
【ゼフィ】 |
「なーんてね、嘘」 |
【エール】 |
「……そ、そう、よかった」 |
【ゼフィ】 |
「あとね、あとね、実はベルノワール様は童貞なんだよ!」 |
【エール】 |
「へぇ〜そうなんだ……」 |
【ゼフィ】 |
「う・そ」 |
【エール】 |
「……びっくりした……」 |
【ゼフィ】 |
「アンフィニ様って、痔らしいよ。イボ痔の方」 |
【エール】 |
「それはすごい情報だね……」 |
【ゼフィ】 |
「これも嘘でしたーっ」 |
【エール】 |
(顔がひきつってきたよぉ。いつまで続くのーっ!!) |
【ゼフィ】 |
「ブランセル兄さんは子持ちで、しかも六つ子なんだって!」 |
【エール】 |
「子育て大変そうだね……」 |
【ゼフィ】 |
「ぶぶーっ! 兄さんは独身だよ〜」 |
【エール】 |
(お願いだから、もうちょっとマシな嘘ついてよ〜) |
【ゼフィ】 |
「これはとっておきの秘密だからね。誰にも言っちゃだめだよ」 |
【エール】 |
「な、なんだろ〜ワクワク」(棒読み) |
【ゼフィ】 |
「今すぐに僕とキスしないと、エールに耳としっぽが生えて、猫になっちゃうんだよ!」 |
【エール】 |
「……え」 |
【ゼフィ】 |
「だからね、キスしよう」 |
【エール】 |
「えーっと……」 |
【ゼフィ】 |
「早くキスしないと、猫になっちゃうよ?」 |
【エール】 |
(キスくらいいいか。僕のために嘘をついてくれているのに、嘘じゃないって指摘するのはかわいそうだよね) |
【ゼフィ】 |
「ほらほら、早く。ん〜」 |
【エール】 |
「う、うん。じゃあ……」 |
【ゼフィ】 |
「こぉら。騙されやすすぎだよ」 |
【エール】 |
「え!?」 |
【ゼフィ】 |
「もぉ、こんなわかりやすい嘘にも騙されるなんて、エールは世間知らずなんだから」 |
【エール】 |
(えぇぇ〜僕、わざと乗ってあげてたのにっ) |
【ゼフィ】 |
「心配だなぁ。僕の知らないところで悪い人に騙されていないか……」 |
【エール】 |
(うぅ、なんだかちょっと悔しいかも) |
【ゼフィ】 |
「僕だったからよかったものの、他の人の言葉は信用しちゃいけないよ。わかった?」 |
【エール】 |
「はぁい……」 |
【ゼフィ】 |
「うん、エールはいい子だ」 |
【エール】 |
「あ、そうだ。ゼフィール兄さんに言いたいことがあるんだけど」 |
【ゼフィ】 |
「ん、なぁに?」 |
【エール】 |
「僕、実は――長い髪って好きじゃないんだよね」 |
【ゼフィ】 |
「!?」 |
【エール】 |
「暑苦しいというか、邪魔というか――丸坊主とかいいよね。ツルツルしてて」 |
【ゼフィ】 |
「……わかったよ。僕、髪を切ってくる!!」(ダッ) |
【エール】 |
「ああ、待ってよゼフィール兄さんっ、嘘だよー!! って、行っちゃった!! どうしよう」 |
【ゼフィ】 |
「エール、エールっ!!」(ダダッ) |
【エール】 |
「あっ、戻ってきた。よかった。さっきのは――」 |
【ゼフィ】 |
「なぁんてね。騙されないよ。僕はエールと違って大人だから、嘘はバレバレだよ」 |
【エール】 |
「……本当だもん。特に、下はツルツルが好き。じゃないと絶対、付き合わない」 |
【ゼフィ】 |
「そ、剃ってくるっ!!」(ダダダダッ) |
【エール】 |
「本当に行っちゃった。まぁ、いっか」 |
【ベ ル】 |
「エイプリルフールか……人間が考えたくだらない行事に、たまには付き合ってやるのもいいか」 |
【ベ ル】 |
「となると、騙す相手は――ゼフィールは怒られそうだから、騙しやすそうなあのチビがいいな」 |
【エール】 |
「騙しやすそうなチビって、僕のことですか?」 |
【ベ ル】 |
「なんだ、そこにいやがったのか。丁度いい、俺に騙されろ」 |
【エール】 |
「……よくわかりませんが、とりあえず聞きます」 |
【ベ ル】 |
「明日、パラディアームは消滅する」 |
【エール】 |
「あの、言っていい嘘と悪い嘘があってですね。神様がそんなこと言うと大混乱ですよ」 |
【ベ ル】 |
「この俺に意見する気か。だったら、こういうのはどうだ」 |
【ベ ル】 |
「実は俺は神じゃねぇ。ただの人間だ」 |
【エール】 |
(その方がしっくりくるのはなぜだろう) |
【ベ ル】 |
「なんだ、無反応だな。ちっ、面白くない」 |
【エール】 |
「そんなことより、さっきゼフィール兄さんが――うっ……」 |
【ベ ル】 |
「どうした、急にうずくまって」 |
【エール】 |
「お、お腹が痛い――」 |
【ベ ル】 |
「変な物食べたんじゃねぇのか? クソでもしてこい」 |
【エール】 |
「いっ――いたぃっ……うぅぅっ」 |
【ベ ル】 |
「だ、大丈夫か!? 医者を呼ぶかっ!? 医務室まで歩けるか?」 |
【エール】 |
「歩けない――いっ――痛いよぉ」 |
【ベ ル】 |
「ど、どうすりゃいい。と、とにかく横になるか」 |
【エール】 |
「痛いっ!! 触らないでっ!!」 |
【ベ ル】 |
「お、おぅ、悪かったな。とりあえず医者を呼んでくる!!」 |
【エール】 |
「……ぷっ」 |
【エール】 |
「ベルノワール様、嘘っていうのはこういう風につくんですよ?」 |
【ベ ル】 |
「なっ――てめぇ、俺を騙しやがったな! 神であるこの俺を欺くとはいい度胸だ」 |
【エール】 |
「ベルノワール様が下手だから見てられなくて」 |
【ベ ル】 |
「てめぇ、言いやがったな。その生意気な口、二度と利けなくしてやる!!」 |
【エール】 |
「うわっ」 |
【ベ ル】 |
「お前に屈辱を味あわせてやろう。そぉら泣き叫べ。屈服しろ」 |
【エール】 |
「や、やめて下さいっ!! ゃ……あっ――」 |
【ベ ル】 |
「人間の分際で俺に生意気な口を利くことは許さん。人間は俺に従っていればいい。従わないやつは殺す!!」 |
【エール】 |
「んっ……あぁっ! やめ――っ!! んはぁっンッ」 |
【ベ ル】 |
「どうだ、降参するか? 俺に服従すると誓うか?」 |
【エール】 |
「――んっ……い、痛い――」 |
【ベ ル】 |
「まぁたその嘘か。今度は騙されねぇ」 |
【エール】 |
「くっ――手を離してください。本当に、お腹が――」 |
【ベ ル】 |
「腹がどうしたってぇ? 演技するならもっと上手くやりやがれ」 |
【エール】 |
「ほ、本当に――ぃっ――痛い……お腹が、痛いんですっ」 |
【ベ ル】 |
「誰が騙され――お、おい、泣いてんのか。本当に痛いのか?」 |
【エール】 |
「……い、痛い――痛い……」 |
【ベ ル】 |
「よ、よし、ここで待ってろ。医者を呼んできてやる!!」(ダダッ) |
【エール】 |
(――行ったかな。単純で助かるよ) |