騒音おばさん、バスに現る　６５歳自称看護師を逮捕…長崎市

　長崎県警大浦署は３１日、路線バスの車内で偶然乗り合わせた知人女性（７７）に対して「この人の一家は大泥棒」などと大声でウソを言ったとして、長崎市の自称看護師・吉川セツ子容疑者（６５）を名誉棄損の疑いで逮捕した。「やったことは間違いありません」などと容疑を認めているという。これまでも執拗（よう）に暴言を繰り返してきたという同容疑者。昨年には被害者女性の夫に水をかけ、暴行の疑いで逮捕されたこともあった。

　騒音おばさんが、今度は路線バスの中に登場した。大浦署によると、吉川容疑者は２月２８日、長崎市内を走る路線バスの中で、たまたま乗り合わせた隣人女性と家族を指さして「この人の一家は大泥棒！」と絶叫。「夫が万引きをしたところを見た」「息子は勤務先の商品を盗んでいる」などと罵倒（ばとう）し続けた。

　バスの中にいた約４０人の乗客全員に聞こえるほどの大声。４年前に自宅ベランダから布団をたたきながら「引っ越し、さっさと引っ越し」と叫んで話題となった主婦をほうふつとさせる迷惑パフォーマンスだった。

　閑静な住宅街の中にある被害者宅だが、吉川容疑者の自宅は道路を挟んだ筋向かい。罵倒攻撃が始まったのは約３年前からだという。それまでは、お互いの顔を知っている程度で深いつきあいはなかった。

　３年前のある日、吉川容疑者は女性の姿を見るやいなや「泥棒！」「変態！」「お宅の飼い犬がうるさい」などと大声でののしるようになったという。昨年４月には女性の夫に対して、水を浴びせて暴行の疑いで逮捕されている。

　だが保釈されると、すぐに執拗な攻撃が再開された。精神的に追い込まれた被害女性は何度も大浦署に「顔を合わせるたびに暴言を浴びせられる」と被害を相談。同署では数度、吉川容疑者に対して警告をしていたが、騒音が鎮まることはなかった。そして２月２８日、バス内での罵詈雑言（ばりぞうごん）に対して、我慢の限界を超えた被害女性は３月１２日に告訴。大浦署は令状が出るのを待って３１日の早朝、逮捕した。

　同署によると吉川容疑者は夫、息子と３人暮らし。自らを看護師と称しているが、勤務先、勤務状況など詳細は不明。取り調べには素直に応じており「やったことは間違いありません」と素直に容疑を認めている。吉川容疑者の罵倒攻撃の対象は、被害者女性一家に限られており、同署では個人的な恨みがあるのかどうかを含めて詳しい動機について調べている。

　一方、被害女性は吉川容疑者の「泥棒」などの発言内容について事実関係を全面的に否定。「どうしてこんなことを言われるのか分からない」と困惑しているという。

　◇最近の主な近隣トラブル（年齢は当時）
▽元祖騒音オバサン　２００５年３月、奈良県平群町で、主婦（５８）がラジカセ、布団たたき、車のクラクション、怒声などによる騒音で、隣家の女性（６４）に嫌がらせを続けた事件。同町は後に騒音条例を制定した。主婦は０７年７月に、懲役１年８月の刑期を終えた。
▽張り紙攻撃　０７年５月、奈良県壬生町の主婦（６７）が、同アパート男性（６５）に対し「逮捕歴がある」などと事実に反した内容の張り紙をしたり、早朝からの音楽を大音量で流すなどして、嫌がらせ。
　▽呪（のろ）いと洗剤　０７年６月、千葉県船橋市の主婦（６３）が、隣に住む男性（５０）宅の前で「呪い殺すぞ」「出て行け」などとどなりつけた事件。ラジオを大音量で流したり、洗剤をまき散らすなどもしていた。
▽恥を知れ　０９年２月、茨城県土浦市で、無職の女（６５）が隣人夫妻を１０年間「ウソつき！」「恥を知れ！」などとどなりつけ、名誉棄損の疑いで逮捕された事件。前年に訴訟和解が成立した後も嫌がらせを続けていた。