オバマ米大統領が、テロとの戦いの「主戦場」と位置付けるアフガニスタンへの包括戦略を発表し、経済危機と並ぶ政権最大の課題克服へ本腰を入れ始めた。軍事力に頼ったブッシュ前政権と異なり、国際社会と共に軍民両面から安定化を目指すことで、手詰まり状況からの脱却を図りたい考えだ。
パキスタン北西部の部族地域に潜伏する国際テロ組織アルカイダは隣国アフガンに越境し、勢いを盛り返すイスラム原理主義勢力のタリバンと合流するなど、アフガンの治安は悪化の一途をたどっている。
オバマ大統領はアフガンの現状について「ますます危険になっている」と警告。「アルカイダを撃破、解体、壊滅させることが究極の目的だ」と、新戦略の狙いを力説した。
軍事面のてこ入れでは、アフガン国軍・警察の自立に向け四千人規模の米訓練部隊の派遣を発表した。二月には一万七千人規模の米戦闘・支援部隊の増派を決定済みで、アフガン駐留米軍はこれで現在の三万八千人から六万人規模に膨らむ。
その一方で、オバマ大統領は「弾丸や爆弾だけでは過激派掃討作戦は成功しない」とも強調。外交官や経済開発専門家ら数百人規模の文民派遣の方針を打ち出した。軍事頼みからの転換といえよう。
また、ブッシュ前政権のイラク復興戦略が成功しなかった反省から、国連や当事国、日欧などの同盟国を巻き込み「国際テロの脅威に国際社会全体で取り組む」姿勢を明確にした。アフガンと、テロ組織の温床とされる隣国パキスタンを一体で立て直す新機軸も注目されよう。
同盟国や、中国、ロシア、イランなどアフガン周辺国と「アフガン・パキスタン連絡調整グループ」を立ち上げるとともに、パキスタンに今後五年間、年間十五億ドル(約千五百億円)の非軍事援助を供与する構想を示した。成果に期待したい。
米国は、三十一日にオランダで開かれるアフガン安定化に関する閣僚会議や、四月上旬の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議などを通して各国に貢献拡大を促す方針だ。日本も非軍事部門で一層の支援が求められるのは必至だ。資金援助だけでなく民生分野での開発援助など前向きに検討すべきだろう。
ただ、今後の戦況については明るい「出口」が見通せず、「アフガンのベトナム化」といった泥沼化を懸念する声も根強い。オバマ政権の「国際協調路線」が試されよう。
無罪判決を求めた元被告側の訴えは、再び退けられた。戦時下最大の言論弾圧とされる「横浜事件」の第四次請求の再審判決公判で、横浜地裁は有罪、無罪を判断せずに裁判を打ち切る「免訴」を言い渡した。
四次請求は、元被告の遺族が申し立て、横浜地裁が昨年十月に再審開始を決定した。決定理由では、拷問で虚偽の自白をしたとする元被告の口述書などを「無罪を言い渡すべき新証拠」と認定した。さらに、事件が虚構である可能性に踏み込み、司法の責任にも触れるなどして、事実上の「無罪」を示唆する内容だった。
しかし、判決は捜査・司法当局の責任には触れず、免訴が確定した第三次再審請求の最高裁判決とほぼ同じ内容だった。遺族でなくても割り切れない思いが募るのではないか。
ただ、判決は刑事補償の手続きの中で実体審理があり、一定の名誉回復ができることを示した。元被告側の弁護団は控訴せず、刑事補償請求を進める意向を明らかにした。元被告の名誉回復を図ることができれば、遺族の感情も少しは晴れよう。
横浜事件は、一九四二年から終戦直前にかけて、雑誌「改造」などの編集者ら約六十人が治安維持法違反容疑で逮捕された。三十人以上が起訴され、大半が終戦直後に有罪判決を受けた。今回の判決で、一連の再審裁判は終結する見通しだが、国家による言論弾圧の恐ろしさを物語る事件として、後世に語り継がねばなるまい。
密室での自白強要によるえん罪事件は、今も後を絶たない。選挙違反事件で起訴された被告全員が無罪となった鹿児島の志布志事件なども記憶に新しい。取り調べの可視化など、開かれた司法に向けて一段の改革を進めることが必要だ。
(2009年3月31日掲載)