2009年3月31日 (火)

本日も医療崩壊年度末進行継続中

先日からお伝えしている愛育病院と日赤医療センターへの労基署の是正勧告について、全国医師連盟からの声明が出ています。
医師連盟についてはネット世代が中心になって立ち上げた組織という背景がありますからこうした場合の動きの速さの意味を理解しているのかとも思うのですが、現場労働者の権利保護に対してきっちり発言していくことは業界団体としては基本的かつ大事なことだと思いますね。
一方の医師会はいまだはっきりしたコメントが出ていないようですが、このまま黙殺を決め込むのかといったあたりにも注目したいところです。

「総合周産期センター等の医療機関における労働環境」についての見解より抜粋

両医療機関においては、違法な労働環境が日常的に放置され、医療従事者の労働安全が損なわれていました。これは、妊産婦・新生児・患者に対しても大きなリスクになっており、看過することは出来ません。

医師の長時間労働が患者の安全を脅かすことは、江原朗の論文によって示されており(Ehara A. Are long physician working hours harmful to patient safety? Pediatr Int 2008;50:175-178)、労働法規上の規制だけでなく、医療安全上の観点からも許容されるものではありません。
厚生労働省労働基準局は、平成15年に医師の宿日直実態を問題視し、約600の医療機関に対して監督を実施しました。しかし、今なお多くの医療機関において、労働基準法および労働安全衛生法に違反する状態が続いており、今回の是正勧告も決して一部の病院だけのことではなく、氷山の一角にすぎないことを認識すべきだと思われます。
さらに、今回、総合周産期母子医療センターにおける夜間の勤務時間が、労働基準法第41条にいう「宿直勤務」(労働時間には算定されない)に該当せず、法律上は賃金支払い義務のある通常の「労働時間」に他ならないと指摘された事実は重要です。全国医師連盟執行部は、全国の医療機関管理者に対し、今回の是正勧告を真摯に受け止めて、労働法令を遵守した勤務体制を確立するよう、強く求めます。

現在、過酷な労働環境にある基幹病院において、医師の退職が相次いでいることは、各種報道により明らかになりつつあります。しかし、より重要な事実として、医療現場での違法な労働環境が長年放置されている事は、世間一般に報じられないことはもとより、医療界内部ですら問題として取り上げられてきませんでした。それ故に、医療機関における違法な労働環境の指摘と是正指導に着手した所轄労働基準監督署と、それを報道したメディアを強く支持します。

全国医師連盟執行部では、今回の出来事の背景には、地域での充実した周産期医療や救急医療を期待されても、それに対応出来る充分な助成補助や診療報酬の配分を受けられるしくみが整えられていないため、医療機関の採算性が悪化し、慢性的な赤字に追い込まれている現実があると認識しています。時間外診療やより安全な診療を提供するには、お金も人手もかかるものなのです。

そこで、違法かつ過重な労働時間を解消するために、次の2点が速やかに改善されるよう希望します。

・医療従事者の待遇改善と必要数の確保
・周産期、救急医療などに関わる医療機関に対する財政的支援の強化

また、法に定められた最低限の労働環境すら確保しようとしない医療機関に対しては、厚生労働省労働基準局ならびに地方労働局と所轄の労働基準監督署が、厳正な法令解釈で是正指導に臨むことを支持し、悪質事例については刑事立件化も含めて積極的に対処することにより、医療機関における労働環境が真に適正化されることを期待しています。

「医療現場での違法な労働環境が長年放置されている事は、世間一般に報じられないことはもとより、医療界内部ですら問題として取り上げられてきませんでした。」というのは重要な指摘で、何より当事者である現場が違法行為に対して黙認を決め込んできたという事実をしっかり認識しなければならないでしょうね。
世間的にも今や医療ネタというものはそれなりのニュースバリューがあるものとされてきているわけですから、舛添厚労相もかねて言っているように医療現場はもっと声を出していかなければならない時代ということなのでしょう。

さて、昨日も少しばかり書きました銚子市立総合病院に関連する話題ですが、市長がかわれば何か素晴らしい未来が約束されるといった話はあり得ません。
そしてそれ以前の問題として、現在進行形で地域医療が破綻の危機にさらされているのがこの件の難しいところです。

自治体病院 広がる危機 銚子市長リコール成立 他病院 患者殺到で『もう限界』/千葉(2009年3月30日東京新聞)

 二十九日に投開票された銚子市の岡野俊昭市長(63)に対するリコール(解職請求)の是非を問う住民投票は、市立総合病院休止への市民の怒りが原動力となった。リコール運動は全国の注目を集め、住民にとって自治体病院がいかに大きな存在であるかを再認識させた。しかし、自治体病院の経営難や診療科の休止は同市にとどまらず、県内各地で表面化し、一部の病院には患者が殺到。現場では「もう限界」との声が強まっている

 「どこを見ても“焼け野原”だ」。国保旭中央病院(九百五十六床)の伊良部徳次副院長(59)は周辺の医療状況をそう表現した。

 旭中央病院は、三次救急など県北東部で中心的な役割を担う。昨年九月末の銚子市立総合病院の休止後は、行き場を失った患者の受け入れ先の一つとなってきた。

 伊良部副院長によると、状況が目に見えて変わったのは医師不足の原因といわれる医師臨床研修制度が始まった二〇〇四年度から。周辺の病院の機能が低下し、旭中央病院に患者が殺到し始めた。

 病床利用率は95-98%と、常にベッドに空きがない状態。入院日数を平均十二日ほどに短縮して回転を早めているものの、限界がある。入院が必要と診断した救急患者を入院させられず、別の病院に移送するケースも増えているという。

 現状を打開しようと、周辺病院に常勤医や外来応援として延べ約四十人の医師も派遣。だが、根本的な解決にはならない。伊良部副院長は「病院の体力はさらに落ちて、もっと悪くなるだろう」と指摘し、国の早急な対策を切望している。

基幹病院というところは単に規模が大きいのみならず質的にも下位医療機関で扱いかねる症例に対処することが期待されていますから、一つがこければ単純に病床数激減という以上の影響があります。
千葉県では以前から黙々と病院崩壊の連鎖が進行中で、ドミノ倒しの大波はすでに崩壊した銚子市立病院や大量逃散が発生した成田赤十字病院すら押し流し最後の砦とも言える旭中央病院に押し寄せてきているというのが現状だそうです。
その旭中央病院でいよいよこうした声が上がってきているわけですから、これは完全崩壊間近しと見て間違いないところでしょうが、この後どういうことになるのかが非常に注目されるところではありますよね。

こうした医療崩壊の連鎖は別に千葉県のみに見られる現象でもなんでもなく、全国どこでも普遍的に見られることです。
はるか西国の広島からもこんなニュースを取り上げてみましょう。

「重症救急」崩壊の危機 広島市の一部診療科(2009年3月30日中国新聞)

 ▽当番病院数、来月から不足

 入院や手術が必要な重症患者を診る二次救急を休日や夜間に引き受ける広島市内の病院が減り、四月から一部の診療科で必要な病院数を確保できない日が生じることが二十九日、分かった。軽症の来院患者の増加などで疲弊した病院が輪番制の参加を敬遠し、踏みとどまった病院にさらに激務がのし掛かる悪循環が生まれている。

 ▽軽症での来院増 負担に

 広島市内で必要な二次救急の病院数は、市と市医師会でつくる広島地区病院群輪番制運営協議会が診療科ごとに決める。うち整形外科は一当番当たり「二病院」が受け持つルールだが、新年度は年間平均で「一・九病院」となり、一九九七年の輪番制開始以来初めて下限を割り込む。十日に一度は当番病院が一つになる計算だ。

 新年度の輪番制には、公立の広島市民病院(中区)と民間の計二十七病院が参加を計画。ピークだった一九九八年度の三十二病院から五減となり、参加頻度が月一、二回にとどまる病院も増えた

 病院が輪番制を敬遠するのは、軽症患者の来院が増え、診療件数の約九割を占める現状に大きな要因がある。本来受け持つはずの救急患者を断らざるを得なくなったり、当直医師が十分な休息を取れないまま三十時間を超える連続勤務を強いられたりするケースが頻発している。

 事態を重くみた市、市内や近郊の三医師会、広島大病院(南区)などは四月から、二次救急体制の在り方の見直しを始める。同運営協議会の種村一磨委員長は「二次救急は、医師や病院の使命感を支えに成り立っていたがもう限界。新たな手だてを考えなければ崩壊する」と危機感を強めている。

 ▽意識変革が不可欠

 症状を問わず可能な限り患者を受け入れる兵庫医科大救急救命センターの丸川征四郎主任教授の話 患者のニーズに応えるのが医療本来の姿。名乗り出た病院だけが二次救急を担う現制度は時代遅れだ。小規模な医療機関も救急に参加し、軽症者の診療を担うなど、地域すべての医療従事者で支え合うような意識変革が不可欠だ。国はその環境を整えるための制度改革を進めるべきだ。

最初は大勢で担いでいた御輿も担ぎ手が一人減り、二人減りして次第にその負担が過重になっていく。
それでも半ば惰性のようによろめきながら進む担ぎ手達の悲惨な表情を見て「よし俺が助けてやるぞ」と新たに加わる人間がいるかと言えば普通はいないわけで、それは非難されるべきことでも何でもない当たり前の人間心理の発露と言うべきでしょう。
マスコミの皆さん(と一部医療関係者)は心身ともに常人離れした超人的医師みたいなものが大好きらしいですが(苦笑)、気力体力充実し知識技能とも人並み外れ、誰劣るところのない熱意と高いモラル(志気)を有する特殊な人々でなければ務まらない職場ではなく、当たり前の人間が普通に業務を行えるような職場でなければ決して長続きはしないものです。
その意味では基本的には需要と供給のミスマッチが年々過大になってきていることが最大の要因であるわけですから、需要を(少なくとも需要の自由な発露を)何かしら制限しないことにはどうしようもない状況なんだと思いますね。

受け手である地域医療体制がこんな状態であるわけですから救急搬送も円滑に回っているはずもありませんが、実際にデータとしてもそうしたものが示されてきているようです。

救急搬送33分、10年間で最悪 07年県内平均 医師不足が影響 /山梨(2009年03月30日山梨日々新聞)

 山梨県内の消防本部(署)の救急車が、通報から医療機関に患者を収容するまでに掛かった2007年の平均時間は32・9分で、過去10年間で最も遅かったことが総務省消防庁の29日までのまとめで分かった。医師不足の影響で救急患者を受け入れる医療機関が減少、管轄外に搬送せざるを得ないことが背景にあるとみられ、搬送時間は10年前に比べ5・1分も延びた。通報から現場到着までの時間も全国ワースト4位の8分で、救急体制の拡充を求める声が強まりそうだ。
 通報を受け、医療機関に搬送した患者は3万1952人。通報から収容までに掛かった時間を見ると、30分未満が1万5897人、30分以上1時間未満が1万4527人で、9割超は1時間掛からずに収容した。
 一方で、通報から収容までに1時間以上掛かった患者は1528人で、このうち84人は2時間以上も経過していた。収容までの時間は全国平均より0・5分短いものの、06年より1・4分延びた。

近ごろではひと頃のように救急たらい回しだの診療拒否だのと大騒ぎすることも減ってきている印象ですが、あれもあまりに当たり前の現象となりすぎてニュースバリューが落ちているという現実もあるようですね。
そんな中でこの週末久しぶりに取り上げられていたのが、奈良県において毎日新聞社系列の新聞販売所で倒れた新聞販売員が亡くなったという事例です。
奈良と言えば毎日新聞社奈良支局の御活躍もあって産科医療崩壊の最先進地とも認識されている土地柄ですが、問題点の所在は産科のみならずということであれば是非とも同社の更なる内部検証記事を期待したいところではありますよね。

救急搬送:6施設に断られ1時間後に男性死亡 奈良・生駒(2009年3月28日毎日新聞)

 奈良県生駒市で21日、意識を失って倒れた新聞販売店従業員の男性(62)が、県内の6医療機関に受け入れを断られて救急搬送できず、通報から約1時間後に大阪府大東市の病院に搬送されたが死亡したことが分かった。

 生駒市消防本部によると、21日午後1時40分ごろ、新聞販売店から「男性が倒れた。意識がないが呼吸はある」と119番があった。救急隊が現場に到着後、心肺停止状態になったという。隊員は同市内の救命救急センターの指示で蘇生(そせい)措置をしながら、同センターや2次救急当番病院など生駒市や隣接する奈良市の5病院と救命救急センターに受け入れを要請したが、「満床」「処置困難」などの理由で断られた。

 通報から約1時間後に大東市の病院に搬送されたが、約30分後に死亡が確認された。同販売店によると男性の死因は心不全で、心筋梗塞(こうそく)の病歴があったことを救急隊員には伝えていたという。生駒市消防本部は「搬送に時間がかかったことと死亡との因果関係は不明」としている。

救急搬送6カ所で拒否、男性死亡  奈良・生駒市(2009年3月28日47ニュース)

 奈良県生駒市で21日に勤務先で意識を失った新聞販売所従業員の男性(62)が、県内の6医療機関に受け入れを断られ、大阪府内の病院に搬送されたが死亡したことが28日、分かった。

 生駒市消防本部によると、21日午後1時40分ごろ、同市内の新聞販売所から「従業員が倒れた」と119番があり、救急隊が出動。男性は呼吸と脈はあったが意識不明の状態だった。

 現場の救急車内で隊員が医師の指示を受けながら蘇生措置を施し、搬送先を探したが、打診した奈良市や生駒市の6医療機関から「ベッドが満床」「処置が困難」などの理由で断られた。

 午後2時40分ごろ、近接する大阪府大東市の病院に運び込んだが、約30分後に死亡が確認された。男性は倒れる以前から「最近心臓が痛い」と話していたという。

 生駒市消防本部は「通常でも出動から病院に運び込むまで約40分かかる。搬送が遅れたから死亡したとは直ちには言えない」と話している。

 受け入れを拒否した医療機関には、県立奈良病院の救命救急センターも含まれていた。

 奈良県では2006年8月、分娩中に意識不明になった女性が、約20の病院に転院を断られ死亡。07年8月には救急搬送された妊婦が10回以上受け入れを断られ、死産した。

6病院に搬送断られた男性、1時間後に病院に運ばれ死亡(2009年3月28日朝日新聞)

 奈良県生駒市で21日、勤め先で突然意識を失って倒れた新聞販売所従業員の男性(62)が、県内の6病院・医療施設に受け入れを断られ、通報から約1時間後に大阪府内の病院に搬送後、死亡していたことがわかった。

 生駒市消防本部などによると、21日午後1時40分ごろ、新聞販売所から「男性従業員が急に倒れた。意識がない」と119番通報があった。約5分後に救急隊が現場に着いたとき男性は呼吸も脈もあったが、救急車に乗せてから心肺停止状態になった。隊員は電話で救急専門医の指導を受けながら蘇生措置を続けると同時に搬送先を探したが、「ベッドが満床」「処置が難しい」などの理由で同市や隣の奈良市などの6施設に断られた。

 男性は午後2時40分ごろ、大阪府大東市の病院に運び込まれたが、約30分後に死亡が確認された。死因は不明という。受け入れを断った病院には、当日の2次救急の当番病院や救命救急センターを持つ病院もあったという。

 奈良県内では06年8月、入院中に意識不明になった妊婦が奈良、大阪の19病院に受け入れを断られて8日後に死亡。07年8月にも、かかりつけ医のいない妊婦が下腹部の痛みを訴えたが、11病院に断られて死産している。

 生駒市は、196床の総合病院が05年3月に廃院になったのを受け、救急医療に重点を置く新病院の建設計画を進めているが、地元医師会からは「計画は既存の医療機関の崩壊を招く」「現在の態勢を強化すれば対応できる」といった意見が出ている

心筋梗塞の既往があり最近胸痛を訴えていたという事ですから、もう少し早く受診していればあるいはとも思うところですが、新聞販売員と言えば色々と大変とも聞きますからなかなか受診も難しかったのかも知れません。
経過を見ても心筋梗塞の再発という可能性が極めて高いのではないかとも感じるのですが、例えば加古川心筋梗塞事件のような判例が確定している現代の日本においては、迅速に適切な処置が行えない施設において対応不能の重症患者を受け入れることは社会的要請に反する行為であるということになってしまっているわけです。
こうした事例においても(質的な面での)需要側の天井知らずな高騰がますます供給過少を招いているという側面が見え隠れしているように感じられるのですが、如何でしょうか。

ところで朝日新聞の記事において触れられている「地元医師会の反発で新病院建設計画が」云々という話ですが、これについては幾つかの情報が参考になりそうですのでご紹介のみ行っておきます。

病床数266で申請へ-奈良県生駒市新病院 (伊関友伸のブログ)

患者の立場にたってみて---(伊木まり子と生駒の未来をつくる会)

明日は定例会最終日(伊木まり子と生駒の未来をつくる会)

ざっと見てみますと、平成19年まではむしろ「患者の送り先がなくて皆困っているんだ!早く何とかしてくれ!」と早期の新病院建設を要望していた医師会側が、平成20年から突然言を左右し新病院建設反対などと言い始めているようにも見えます。
全くの独断と偏見ですが、やはりこの背景にあるのは新病院の運営母体としてかの団体の名前が挙がってきていることが最大の要因ではないかと推察されるのですが、これもまたずいぶんと濃そうな対立の構図ですよね。

新病院が出来れば必ず全ての患者が救命されるという訳でもないでしょうが、一方で近年ますます進行しているのが標準的な医療水準なるものの高騰問題であって、医者にやる気があろうが腕があろうが病院のシステムとして対応できなければ受け入れは無理という場合も多いように思います。
緊急帝王切開なら30分以内であるとか、脳梗塞であれば3時間以内であるとか言いますが、それは確かに医学的な面から考えていけばそうした水準が望ましいのは確かだとしても、同時に全国の地域医療機関においてそれが当然に求められる水準とされてしまうと非常に厳しいものがありますよね。
医療訴訟における鑑定医の問題なども含めての話ですが、そろそろ医療業界も浮世離れしたかくあるべし論を追求するばかりにとどまらず、足許をじっくり見据えて医療というものを改めて問い直していかなければ、最終的には自分自身のための墓穴を必死に掘り続けているという状況に陥りかねないのではないでしょうか。

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2009年3月30日 (月)

時節柄?色々と出てくるものが

年度末のせいなのかどうか、全国あちこちからこれでもかと医療関連ニュースが続いていますが、そのほとんど全てが暗い話題ばかりというあたりが何やらこの国の医療の現状を示しているようで興味深いところですね。

先週は愛育病院の「総合周産期母子医療センター」指定返上の話題がありましたが、他府県でも労基署が仕事をしているようです。
滋賀県では県立成人病センターでの残業代未払いはケシカランとお上の指導が入りましたが、こういう話題はどこの公立病院でも長年の慣行として行われている問題だけに今まで放置してきた責任も問われかねない話ではありますよね。
「残業代に関し公立病院が捜査を受けたのは異例」なんてことをさらっと書いていますが、佐賀県立病院のように県のHPでも公になり記事にもなっているほどに違法行為の実態はすでに明らかであるのに、刑事告訴をされるまで何の指導もなかったとすれば、そちらの方が大きな問題ではないでしょうか。

滋賀県病院事業庁を送検 残業代一部未払いの疑い/滋賀(2009年3月28日47ニュース)

 滋賀県立成人病センター(守山市)の医師の残業代を規定より少なく算定したとして、大津労働基準監督署が労働基準法違反の疑いで、同センターを運営する県病院事業庁と幹部らを書類送検していたことが28日、大津労基署への取材で分かった。

 厚生労働省によると、残業代に関し公立病院が捜査を受けたのは異例

 大津労基署によると、2008年4月、管理職とされながら権限がなく、残業代が支払われない同センターの医師が「名ばかり管理職」だとして、事業庁に是正勧告した。

 事業庁は同センターなど県立3病院の管理職約40人を含む医師約100人の残業代などを、06年4月にさかのぼって算出。今年1月までに総額2億4000万円を支払った。また各院長ら約10人をあらためて管理職にした。

 しかし、労基署が病院関係者から刑事告訴を受けて調べた結果、残業代の算定基礎から医師に毎月支払われる「初任給調整手当」を除外して計算していた疑いが強まった。不払い分は約3億5000万円に上るとみられる。

一方で愛育病院クラスがセンター返上を言い出すならと追随する動きがあるのかと言う点にも興味が集まるところですが、タイミング的には恐らく愛育の件とは無関係ながら他県でもやはりセンター指定返上の話はあるようです。
同じ関東圏にある栃木県では現在8施設ある周産期医療センターのうち、国立病院機構栃木病院佐野厚生総合病院の2施設が指定返上を言いだしているようですが、よく見てみれば2007年にも他の二施設が返上していると言います。
今回の二施設もどちらも500床前後の病床を有する基幹病院クラスだけに、名目的な施設返上よりも周産期医療の後退という点でそれなりのダメージがあるのではないかと予想されるところです。

周産期医療センター 国立栃木認定返上/栃木(2009年3月28日読売新聞)

佐野厚生総合、出産休止へ

 母体や胎児へのリスクが高い出産に対応する「地域周産期母子医療センター」が、現在の8病院から2減となる見通しであることが27日、わかった。国立病院機構栃木病院(宇都宮市中戸祭)が認定の返上を県に申し出たほか、佐野厚生総合病院(佐野市堀米町)が11月末で出産の扱いを休止する方針。いずれも医師不足を理由に挙げている。今後、緊急時や県南部の出産受け入れ体制に大きな影響が出る可能性がある。

 県によると、国立栃木病院は現在2人いる産科常勤医が4月から1人となる見込みで、「医師不足のためハイリスク分娩に対応できない」と2月に返上の申し入れがあった。

認定返上は2007年11月の佐野市民病院、宇都宮社会保険病院に続いて3件目

 佐野厚生総合病院は、現在入っている11月までの予約には対応するが、新規の出産受け入れは休止する。同病院によると、2007年度に5人いた産科常勤医が08年度に3人に減少。3月末にはさらに1人が退職することになり、休止を決断したという。今後、新たな医師を確保できない場合は「センター認定を返上するしかない」と話している。

 それぞれの病院の認定返上、出産休止は、27日に開かれた県周産期医療協議会で報告された。

 国立栃木病院は、07年度から出産受け入れを縮小している。

 一方、佐野厚生総合病院は年間約400件の出産を扱っており、佐野市内で出産を扱う医療機関3か所のうち救急搬送に対応できるのは同病院だけ。周辺の病院が受け入れを大幅に拡大しなければ、地元で出産施設が見つからない「お産難民」が発生する可能性もある。

 協議会では、「小児救急や高度な周産期医療を担う足利赤十字病院の負担増は避けられないのではないか」と懸念する声が上がった。

佐野厚生、産科休止へ 常勤医減で12月から 地域の拠点、体制弱体化/栃木(2009年3月28日下野新聞)

 合併症などリスクの高い妊婦を受け入れる地域周産期医療機関に認定された佐野厚生総合病院(佐野市)が十二月から産科を休止する方針であることが二十七日、分かった。現在三人の産科常勤医が四月から二人に減るためで、十一月までのお産と産科救急も当面対応する予定という。出産前後の周産期医療体制を支える地域拠点病院がこのまま離脱すれば、弱体化は必至だ。

 同日の県周産期医療協議会で病院関係者が報告した。

 下野新聞社の取材に対し、現在診療している妊婦は責任を持ってお産まで担当するが、四月以降に常勤医が三人に戻らなければ、十一月いっぱいでお産を休止せざるを得ないという。

佐野厚生のお産件数は、年間四百件近くに上る。産科救急は四月から対応できる範囲が縮小する見通し。また地域周産期医療機関の認定も産科が休止すれば、返上するという。

 県保健福祉部によると、県内でお産に対応する医療機関は減少する一方。三年前には五十カ所だったが、昨年四月には下都賀総合病院(栃木市)のお産休止などで四十四カ所に減った。

 地域拠点病院も今年二月に国立病院機構栃木病院(宇都宮市)が地域周産期医療機関の認定返上を申し出たばかりだった。

 県保健福祉部の担当者は「きょう初めて聞き、えっと思った。救急の対応など今後の状況を、きちんと確認したい」と、驚きを隠さなかった。

しかしこういう記事を見ると最近の産科では「無理はしない、させない」という姿勢が滲透してきているようで、ようやく現場スタッフはきちんと保護していかなければならないという認識が広まっているのかなとも感じますが、上で取り上げたように産科のみならず医療全体にこれを広げていくにはまだまだというところでしょうか。

ところで産科取り扱い施設が減少する一方と言う現状では、特に元々選択肢の少ない地方圏では一つの施設の閉鎖が地域に大きな影響を与えるという事態になるだろうことは容易に想像できると思います。
先頃から県立病院再編計画で取り上げさせていただいている岩手県は花巻市は10万人規模の医療圏ですが、こちらからも年度末に産科休診の話題が飛び込んできました。

4月から産婦人科休診 総合花巻病院常勤医退職で/岩手(2009年3月29日岩手日報)

 花巻市花城町の財団法人総合花巻病院(大島俊克院長)は4月から産婦人科を休診する。男性常勤医1人が3月末で退職するため。人口10万人の同市は4月以降、お産を取り扱うのが開業医2人だけで総合病院には不在となる。住民の出産をめぐる環境が厳しさを増すと懸念される。

 花巻病院の産婦人科は男性常勤医の1人体制。2006年4月から3年間勤務し、年間で約200件の出産を取り扱ってきた。

 大島院長によると、1人体制では365日の拘束や非常時の対応に不安があり、医師の負担が重い状態が続いていたという。男性医師の退職意向を受け、同院は今年2月までにお産の取り扱いを中止。院内に休診の張り紙を出すなどし、周知を図ってきた。男性医師は4月から、市外の産科医が複数いる病院に移る。

 地域では4月に北上市村崎野に花巻厚生、北上両病院が統合した県立中部病院が開院する。ただ、産婦人科の常勤医は2人にとどまりマンパワー不足は否めない。花巻病院の休診で、地元の妊産婦の盛岡市などへの通院負担は増すとみられる。

 花巻病院では6月から婦人科に限り、診療を再開予定。大島院長は「多い時は病院全体で常勤医が22人いたが今は14人。産科医確保の見通しは立たない」と厳しい表情だ。

そもそも医師一人で年200件のお産という時点でキャパシティーオーバーだと思いますから体制に無理があったのではないかとも想像されるところですが、こと花巻市に関して言えば記事中にも触れられているように元々産科医療資源が極めて乏しいという現実があります。
例えば39歳で息子さんが亡くなり、後を追うように父君の院長先生も亡くなって閉院に追い込まれた伝説の工藤産婦人科医院も花巻市の産科取り扱い施設の一つですが、何でも産科崩壊真っ盛りという状況のようでかなり問題になっているようですね(工藤医院は新院長を招いて先年ようやく再開されたようですが)。
10万人と言えば出生率9前後として年間900程度のお産が見込まれる計算になりますが、取り扱い施設が開業医2人だけとなれば早晩更なる破綻が予想されるわけで、これも今後の経過に要注目というところでしょうか。

ここからは少し医療行政絡みの話題になってきますが、まずは大規模自治体病院閉鎖の先駆けということで全国的にも大きな話題になった銚子市立総合病院問題に関して、病院存続を訴えながら閉鎖を決めた市長に対するリコール請求が通った結果、さる3月29日に市長解任の是非を問う投票が行われました。
結果はすでに御存知の方も多いと思いますが、予想通りの圧倒的多数の支持を得て市長の失職が確定し、市立病院は存続させるべしという民意が改めて示された結果となりました。

千葉・銚子市長リコール成立、市立病院休止めぐる住民投票/千葉(2009年3月30日読売新聞)

 千葉県銚子市の市立総合病院休止を決めた岡野俊昭市長(63)の解職請求(リコール)に基づく住民投票が29日行われ、開票の結果、解職賛成が有効投票の過半数を上回り、岡野市長は即日失職した。

 地域医療の中核となる同病院への財政支援を断念した市長に、市民はノーを突きつけた。総務省によると、公立病院経営を巡って首長のリコールが成立するのは異例。50日以内に出直し選挙が行われる。

賛成は2万0958票、反対は1万1590票。投票率は56・32%だった。

 岡野市長は2006年7月、同病院の存続を訴えて初当選したが、医師不足などで経営難に陥った病院への追加支援は不可能として、昨年7月、休止を表明。公設民営による再開を目指している。

 これに対し、「『何とかしよう銚子市政』市民の会」が、「公約を破り、病院休止を短期間に強行した」として解職請求した。茂木薫代表は午後9時半すぎ、記者会見し、「市民が病院再開を望んでいることが明らかになった」と話した。岡野市長は読売新聞の取材に、「説明が十分に伝わらず残念。市民の判断は重い。出直し市長選出馬は支持者と相談して決めたい」と述べた。

千葉県銚子市長のリコール成立 市立総合病院診療休止問題/千葉(2009年3月30日産経ニュース)

 千葉県銚子市の市立総合病院の診療休止をめぐり、住民らが起こした岡野俊昭市長(63)のリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票が29日、投開票された。市長の解職に賛成する票が2万958票、解職に反対する票は1万1590票と、賛成票が過半数に達し、岡野市長の失職が決まった。50日以内に出直し市長選が行われる。当日有権者数は5万9804人、投票率は56・32%だった。

 失職が決まった岡野氏は「一刻も早く病院を再開し、市民に医療を提供したい」とし、出直し市長選への出馬を支援者らと検討することを表明した。

 リコール運動を起こした住民団体「『何とかしよう銚子市政』市民の会」(茂木薫代表)も「市民の声を聞かずに病院休止を強行した岡野氏の下では地域医療の再生は不可能」と訴え、組織内からの候補擁立を模索している。

 市民の会は、市立総合病院の充実などを訴えて平成18年に当選した岡野市長が病院を休止したことが公約違反だとして、有権者2万3405人分の署名を集め、2月に市選挙管理委員会に解職請求していた。

 同病院事業の再開に向けては、有識者らでつくる指定管理者選定委員会(伊藤恒敏委員長、委員10人)が、公募に名乗りを上げた千葉市美浜区の医療法人社団「郁栄会」(川島孝治理事長)の事業内容を審査中だという。

ちなみにこの病院再開に名乗りを上げた医療法人「郁栄会」というところは歯科クリニックを10余り運営しているところのようですが、正直市民病院運営に適任かどうかは…まあそのあたりも含めての審査中ということでしょうかね。

しかし医療問題が行政当局者の首をも左右するという時代になったということでは非常に印象深い事例ではあるのかなと思うところですが、一方で市長を首にしようが病院の問題が何ら解消されるわけでもありません。
巨額の赤字に関してはこれだけ市民の病院存続への意思があるわけですから市税なり市債なりの方向で対応するとしても、一番の問題は「銚子に行きたい人が見つからなかった」「将来展望がない、との評判が立てば誰も希望しなくなる」(片山容一・日大医学部長)とまで言わしめた医師不足問題に対する展望の欠如ではないでしょうか。
前市長が再選するとも考えがたい状況でどのような市長が登板することになるのかは未だ予断を許しませんが、魅力ある市民病院再建がかなうかどうかも市民の選択に委ねられているとは言えそうです。

展望の欠如と言えば、昨今マスコミに登場機会の多い大阪府政においても医療行政絡みでこういった話が持ち上がっています。

橋下改革余波、医師職11人退職…予算減で「思う仕事無理」/大阪(2009年3月29日読売新聞)

 医師の資格をもって公衆衛生政策を担当する大阪府の医師職の職員45人のうち、4分の1にあたる11人が3月末に中途退職することがわかった。

橋下徹知事の財政再建策に伴う給与カットや担当分野の予算削減に対する不満などを退職理由に挙げ、「橋下府政では思うような仕事ができない」と明かす退職予定者もいる。橋下改革への不満が府庁内部から噴き出した形で、府は「職員の士気が落ちている証し」と危機感を募らせている。

 府によると、医師職は医師免許を持ち、府健康福祉部で医療行政を所管するほか、14か所ある府保健所で衛生や保健業務を担っている。例年、医師職の中途退職者は2~3人だが、今春は11人が退職を希望。行政事務を担う3人と保健所長ら出先機関の8人で、部次長級の幹部職員も含まれている。退職後は、民間病院で医師として働いたり、他の自治体に転職したりするという。

府は昨年8月から医師職を含めた一般職員の基本給を最大16%カット。また、生活習慣病の研究や循環器疾患の予防などに取り組む府立健康科学センター(大阪市)の新年度運営事業費を前年比約4000万円減の6億7000万円にカットするなど、医療対策費の削減も進めてきた

 退職予定者はこうした財政再建策に不満を漏らしているといい、退職する課長級職員は「すぐに結果を求める橋下知事の下では、成果が見えにくい研究や、予防業務に、十分な予算措置を期待できない」と話す。

府は大量退職を受けて、府内の自治体に派遣している医師職を引き揚げる一方、医師職採用の年齢制限を従来の「40歳」から「64歳」に引き上げ、随時採用する方針。府幹部の一人は「予算のカットで、仕事へのやる気を失わせてしまったといえる。当面は、残されたぎりぎりの人数の医師職でやっていくしかないが、これ以上辞められると、組織がもたない」と話した。

 府職員の人件費削減を巡っては、退職金の5%カットを実施する直前の昨年7月、カット前の金額を受け取るための「駆け込み退職」が続出。前年の3倍を上回る33人が府庁を去った。入庁希望者も減り、高校卒業者を対象にした今春の募集では志願者が前年度比36%ダウン。府立5病院の看護師採用でも応募数が定員割れした。

しかし医療行政職から民間病院医師に転職ですか…まあそういう需要も非常に多いわけですから、これはこれで医療現場の医師不足解消の一助となるのではないかと期待しておくべきなんでしょうかね。

大阪府のような状況では求められるものに対して府政の規模が大きすぎるという事も確かにあるようですから、こうした強引な追い出しによって縮小均衡を図るというやり方もあるいはありかなとも思いますし、その結果何がどうなるかは地方行政改革における一つのテストケースとして後々に大きなものを残してくれるのではないかとも考えています。
本当に一度でもどうにかなるとヤバいような田舎自治体と違って大阪あたりになりますと何しろ民間の活力も十分にあるわけですから、多少あちらが行き詰まったりこちらが崩壊したりと行政がコケても何とか立て直してくれるだろうと期待しつつ、引き続き生暖かく見守っていくべきなのでしょう。

最後に取り上げるのは一見すると良いニュース?とも受け取りかねない話なんですが、よく読んでみますと香ばしいものがぷんぷんしてくるという話題です。

地域医療再生に補助金、与党、1兆円の基金検討(2009年3月28日朝日新聞)

 医師不足対策や救急医療体制の強化を目指し、与党は27日、追加経済対策に「地域医療再生基金」(仮称)の創設を盛り込む方向で検討に入った。都道府県ごとに地域医療再生計画をつくり、計画実施に必要な費用を基金から補助する。09年度補正予算を念頭に税負担で基金を設置し、少なくとも3年間で1兆円規模とする案が浮上している。

 与党が厚生労働省と調整中の案によると、都道府県が医師確保や救急医療体制の整備などを盛り込んだ地域医療再生計画を策定。実施に必要な費用を国が補助する。地方の実情に応じ、幅広い使途を認める方針だ。

現時点では、大学病院などと連携した医師派遣システムの強化▽産科を強化した病院への支援▽病院内・病院間をネットワークでつなぐIT(情報技術)基盤の整備▽医学生の地元定着を促すための奨学金や寄付講座の支援――などが想定されている。

 国は医療機関などを対象にした施設整備や人件費などの補助について、都道府県にも負担を求めてきた。しかし、財政難で自治体が支出できず、結果として国の補助制度そのものが使えないケースがあった。基金は、こうした「地方負担分」の軽減にも活用する方針だ。

地域の拠点病院を強化することで、周辺に予防医療につながる薬・医療機器メーカー、介護事業所などを集積させ、「健康長寿産業」が地域の雇用の受け皿となることも狙う

 このほか、災害時に地域医療の中核となる災害拠点病院の耐震化費用の補助率の拡大も検討している。厚労省によると、国の耐震基準を満たしているのは6割弱。国は4月から耐震化工事の補助率を従来の3分の1から2分の1に引き上げるが、追加対策で補助をさらに手厚くする。

先日はとうとう政府も社会保障費削減政策撤回か?!なんて話題があって、これもその流れでようやく医療に金を出すようにしようという話かとも読める記事です。
しかしよく見てみれば内容はせっかく崩壊に追い込んだ医局派遣システムの再生まがいな話であったり、さんざん言われているIT技術の活用であったり、例によってハコモノ支援ばかりであったりと、要するにまたぞろ新たな利権絡みの話題ばかりじゃないかと容易に看過されてしまうのは悲しむべきなんでしょうかね。

一兆円と言えば決して小さくない額のはずなんですが、これだけのお金を出すことにしても一番苦労しているスタッフの待遇改善をと言う話が出てこないあたりに何を感じ取るのかですが、何より気になるのは結局地域医療を潰すのか維持させるのかはっきりさせろという点です。
このあたりは従来から厚労省と総務省のスタンスの違いが垣間見られてきたところですが、「地域の拠点病院を強化することで、周辺に予防医療につながる薬・医療機器メーカー、介護事業所などを集積させ」云々といったあたりに病院集約化・統廃合を主張してきた厚労省の本音が現れているということなのでしょうか。

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2009年3月29日 (日)

今日のぐり「梶屋」

このところ飛行機関連の話題が幾つか出ていたのですが、こうして見るとお国柄というものはあるんだろうなあとつくづく思いますね。
しかし行き詰まったとき取りあえず「祈る」ってそれゲームのやり過ぎ?と思うのは日本的感覚ということなんでしょうか…

機長自殺:辞職したくてもできないパイロットたち-中国(2009年3月16日Searchinaニュース)

  3月2日、2週間ほど姿をくらました厦門航空公司(アモイ航空)で機長を務める馮さん(36)の遺体が自宅の中で発見された。警察側は自殺と判断、死亡日時は2月の中旬という。馮さんは「人生はあまりにも抑えつけられている……」という短い遺書を残して死を選んだという。

  良好な心理的素質をもつパイロットは、普通の人には遙かに及ばない論理的思考の能力や心理的圧力に耐えうる能力を持っているのが通常だろう。一体、どんな原因で優秀な機長が生きていく勇気を失ってしまったか?

  最近、辞職願を出したため、厦門航空に告訴されている陳建国氏(厦門航空の機長を務めていた)はマスコミの取材に対し、「以前、馮機長と雑談したことがある。彼はずっと前から厦門航空を離れようとしていた。しかし、こうなに悲壮な“辞職”という結末になるとは思いもよらなかった」と話していた。

  しかし、こんなに重苦しい仕事の環境から脱却するのに、なぜ辞職という正常な方式を選ばないのか? これに対して、陳氏は「パイロットの辞職は困難を極める。航空会社は例がなく法外な値段でパイロットに損害賠償を求める。例えば、私が会社を辞める場合、厦門航空は私に900万元(約1億3000万円)もの賠償を求めた。900万元というのは私が厦門航空にパイロットを務めた12年間の収入総額の5倍を超える金額だ。こんなに巨額な賠償金を、パイロットはどのように払うというのか?」と悩みを吐露した。こうみると、馮機長の自殺は、パイロットにおける現行雇用体制に係ることだと思わざるをえなくなる。

  「金領(ゴールドカラー)」とみなされるパイロットがなぜ辞職を願うのか? 具体的にはもちろん、人によって辞職の理由が違っている。報道によれば、おおむね以下の三点に絞られている。1.ほかの航空会社または同社内部のほかの関連職位に比べ、給与レベルの面で不公平を感じる。2.長時間の時間外労働とサービス残業が発生するため、仕事上の重いストレスに耐えられなくなる。3.合理性に欠ける航空会社内部の管理制度が積極性を削ぎ、徐々にやる気がなくる。

  中国で一般の「白領(ホワイトカラー)」よりエリートだとされ、「金領(ゴールドカラー)」という造語の代名詞ともされるパイロット、その年俸は日本円にして中国では破格の1000万円以上にもなる場合がある。羨望の対象であり、多くの若者が目指すべき職業とされている。その上、中国ではパイロット不足のため、多くの航空会社は高給を含むいかなる手段を駆使してでもパイロットの定着率を維持しようとする。だから、パイロットは「引っ張りだこ」なのだ。

  「引っ張りだこ」の機長の自殺は一般の人を不思議がらせた。パイロットとしての辛さが一般の人にはよく見えないためだ。現在、金融危機の影響により深刻な経営難に直面している航空会社のパイロットへの需要はある程度減ってはいる。多くのパイロットは「跳槽(辞職してほかの会社へいく)」をやめ、「不満があっても我慢するしかない」という現在の仕事をキープすることを選択しがちだ。

  こうした状況を受けて一部の人はパイロットがすでに「引っ張りだこ」から安い「ハクサイ」になってしまったとも指摘する。だが、筆者はこういう言論には首をかしげる。昨年熱く議論された東方航空のパイロットによる集団的帰航事件や巨額な賠償金額が絡むパイロット辞職事件などは、パイロットという特殊な職業の社会的イメージに影を落とした。現時点では、帰航事件が引き起こした騒動も沈静化してきたが、不景気によりパイロットの辞職も減ってきた。しかし、この一時的に安定しそうな状態は決して「天下太平」を示すものではない。

  上述の事件の再発を防止するにはパイロットによる辞職・移籍に合法的な保障とルートを提供しなければならないと思う。労働契約法を厳格に守るべき航空各社はこの不景気な時期に、パイロットが安定した仕事を持ちたいという心理を利用して、火事場泥棒的に思う存分パイロットの合法的権益を侵犯しようとも見受けられるが、法的な縛りが必要になっている。

  憲法はすべての国民に平等な権利を与え、いかなる公民の合法的権利も剥奪されてはならない。特殊な職業と称されるパイロットも、労働者には違いない。彼らは労働契約法が規定するすべての権利を享有する。各方面で優位に立つ航空会社がパイロットの権利を侵害することも一種の違法行為だろう。しかし、パイロットが法律という武器で自分の権利を主張する時、航空会社は往々にしてあらゆる手段で裁判の公正を妨げ、辞職しようとするパイロットを死地に置くようにする。

  パイロットが辞職することで航空会社から巨額な賠償金が請求されるため、何年間にわたり航空会社と対峙するという不利な局面に陥るケースは思いのほか多い。多くのパイロットが会社に辞職願を出した後に、種々の仕返しを受ける。辞職しようとする、辞職に成功したパイロットに対する誹謗中傷も時に発生する。堂々としたパイロットが、長期間にわたり辞職で航空会社と戦わざるをえないため、新しい仕事に就けず、結局毎月の生活を最低生活保障金に頼らなければならないという悲惨な状況さえある。

  それだけではなく、時には家族がこのために巻き添えを受ける場合もある。家庭の幸福は彼らが正当な辞職権利を行使することですっかりなくなる。甚だしきに至ってはこのために一家が四散することさえある。

  確かに、乗客の命に関わるパイロットは特殊な職業とされているため、パイロットの辞職・移籍に関する特殊な規定があってもおかしくはない。しかし、中国で実施されているパイロットの辞職・移籍に関する特殊な規定の中にある新労働契約法と労動法と矛盾する部分は、まだ廃止されていない。これも近年パイロットが辞職するのが困難になってきた原因となっている。主管部門はこれに対してひたすら回避することではなく、積極的な態度で問題を分析・解決すべきだと筆者は思う。

緊急措置の代わりに「祈って」墜落 パイロットに有罪判決(2009年3月26日産経ニュース)

イタリアの裁判所は23日、緊急措置をとる代わりに祈りを捧げて、操縦する飛行機の墜落を招いたチュニジア人パイロットに対し、禁固10年の有罪判決を言い渡した。

 同事故は2005年、チュニスエアーの子会社チュニインター機がイタリアのシチリア島沖で墜落したもので、16人が死亡した。

 検察当局は、事故の原因は燃料計の不具合だけでなく、パニックに陥ったパイロットが非常時の措置として付近の空港に緊急着陸する努力をする代わりに、大声で祈りを捧げたことに責任があると主張していた。

今日のぐり「梶屋」

市街地を遠く離れた何もない田んぼの真ん中に何気なく立つ定食屋、しかしその実態は平日昼でも結構立ち待ちが出るくらいの人気店です。
しかし、いつの間にか「梶屋ファンクラブ」なんてものまで出来ていたとは知りませんでした。

ここはとにかく量が多いということでも有名なんですが、その中心となるのが汁代わりにセットメニューにつくラーメンです。
さほど目立ったところのない豚骨醤油ラーメンなんですが、この手の食堂にしては結構まともな味と評価が高いんですね。
また幾つかのメニューにつくチャーハンもハーフサイズと言いながら世間のフルサイズくらいは十分あって、特にラーメンと半チャーハンのセットは大抵の人が残すという噂の一品です。
そして梶屋を梶屋たらしめているのが当店の看板とも言うべきオリジナルメニューのエビ丼なんですが、そういうわけでこの日もエビ丼をオーダーしてみました。

しかしこのエビ丼、見るからに怪しいですよねえ…
確かにタルタルをかけた揚げ物と言えば洋食系おかずの定番メニューですが、だからと言って飯の上にエビフライとタルタルソースって誰が考えたんでしょうか?
またこのエビの上にちょこんと乗っかっている蓋も意味があるんだかないんだかよく判らないんですが(本来丼物の蓋は密閉することで蒸らす効果があるなんて言われますが、この場合全く密閉されてなどいませんし)。
まあしかし、ざっと見たところでは三人に一人くらいの割合でエビ丼のオーダーが入っているようにも見えますから、これはこれで店の看板メニューなのは間違いないでしょう。

味の方は見た目通りでもうこれがエビ丼の味だと思って食べるしかないんですが、はっきり言ってマヨネーズべったりの単調な味が続くのは途中から舌が飽きて結構苦痛です。
梶屋メニューにしては量が多いわけでもないのに半分も食べた頃にはもう結構という感じになってくるのは、油気のせいもあるのかも知れませんがこの味に秘密がありそうですね。
自分の場合普段は香の物の類にはほとんど手を付けないんですが、この日は付け合わせの漬け物類は完食したほどで、特に味の変化をつける作用が強い昆布佃煮が光り輝いて見えましたね。
この味からすると味噌汁よりももっと濃いものを合わせたくなるところですから、いっそミニエビ丼とラーメンのセットなんて作ったら馬鹿売れするんじゃないでしょうか。

話は変わりますが、以前来たときに少し気になったフロア係はそれなりに効率よくオペレーションをこなしているのであまり悪いことを言うのも気が引けるんですが、やはり接客はそっけないと言いますか時に刺々しいものを感じます。
客が殺到している時間帯はどうしても殺気立ってくるのはある程度仕方がないんですが、常連ばかりでなく一見さんや親子連れも多い店だけにスマイル0円の精神で頑張ってもらいたいところですね。
利益率はさほど高くないのかも知れませんがこれだけの繁盛店なのですから、バイトなどででももう少し人手を手配してみてもいいかなとも思うのですが。

この店の場合量が多いとは言っても定食の中心となるべき飯と汁がどうもパッとしない、かといってチャーハンもさほど絶讚する味でもない上にチャーハン系セットメニューはどれもボリューム過剰でおいそれと頼めません。
ラーメンはまあ食えるのですが、ここまで来て単品でラーメンを食べるくらいの客なら他の店に行くべきでしょうし、看板のエビ丼もこんな感じですから味だけを見ればさして見るべきところはないかなと正直思います。
それでもこういうオリジナルのメニューをこしらえてこれだけ人気を維持しているわけですから、やはり料理はアイデアなんだろうなと思いますね(あとボリュームも、でしょうか)。

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2009年3月28日 (土)

医療行政におけるアメとムチ?

年度末ということもあってか、医療行政絡みの話題が幾つも出てきています。
今の時代にあってはひと頃のような医療バッシング全盛期とは世間の空気も異なってきているようにも言いますが、そうは言っても高邁な医療の将来像を掲げる政府・厚労省のことですからアメばかりしゃぶらせてもらえるはずもありません。
未だに医者など生かさず殺さず、ムチをふるってでも働かせればよいと考えているなら、そろそろ医者も耐性が身についてきていることを学んでもいい時期だとは思うんですけどね。

医師偏在問題 国研究班が提言(2009念3月25日NHKニュース)

医師が特定の診療科や一部の病院に偏るなどして医師不足の問題が深刻になっていることから、厚生労働省の研究班は、医師が専門の診療科を自由に選べる現状を見直し、診療科ごとに必要な医師の数を割り出して計画的に育てていくべきだとする提言をまとめました。

この提言は、国民が安心して医療を受けられる体制を作ろうと、厚生労働省が設置した研究班が25日に開いた会合でまとめたものです。医療現場では、一部の診療科や病院に医師が偏る「偏在」が問題となっていて、産科や小児科、救急などの診療科や、地方の病院などで必要な数の医師を確保できない深刻な医師不足の状態が続いています。研究班では、医師の数を増やすだけではこうした問題は解決しないとして、専門の診療科を自由に選べる現状を見直し、国民のニーズにあった新たな仕組み作りを検討していました。
25日にまとまった提言では、患者の数や手術件数といった医療のニーズを基に、診療科ごとに必要な医師の数を割り出し、新たに育てる医師の数を決める第三者機関を設置するよう求めています。
また、日ごろの健康を管理したり、軽い症状の病気を幅広く診たりする医師を新たに「家庭医」として認証し、高度な医療を提供する「専門医」と役割分担して、地域医療の体制を充実させるとしています。
研究班の班長で国立がんセンター中央病院の土屋了介院長は「国民の安心につながるよう、計画的に医師を育てる仕組みを早急に実現する必要がある」と話しています。
一方、診療科ごとに医師の数を決める方法については、医師の意欲をそぎ、逆に医療の質の低下を招くおそれがあるとして反対の意見もあり、厚生労働省は、提言をどう具体化するか慎重に検討することにしています。

いや、「医療現場では、一部の診療科や病院に医師が偏る「偏在」が問題となっていて」なんてさらっと書いてますけど、どこも等しく人手不足な状況で現場では偏在なんてちっとも問題になってはいないんですけれども…
そもそもこういう医療の現状で必要な医師数を積み上げて行くととんでもない総数になりかねないという危惧があるわけですが、現有医師数+養成医師数の総数との乖離をどう対処するのかという疑問が残りますね。
現状で不足している診療科を当面手厚くと言うことになれば、新卒医師は片っ端からラーゲリ送りなんて惨状も予想できてしまうところではあるのですが、一方で平等に薄く広く分散配置したところで何も解決するようにも思えませんしね。
ちなみに同じ話ですが、別ソースではこんな感じの報道になっています。

卒後医学教育の独立機関設立目指す-厚労省研究班(2009念3月25日キャリアブレイン)

 「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」(班長=土屋了介・国立がんセンター中央病院長)は3月25日、東京都中央区で第11回班会議を開催した。この日は最終回で、厚生労働省に提出される報告書の骨子案が示された。骨子案には、卒後医学教育の独立機関「卒後医学教育認定機構(仮称)」の構想が盛り込まれている。

 骨子案によると、欧米には、専門医認定基準の認定や医療需要の見極め、資源の分配、研修医・医療の配分のコントロールなどを行う独立機関が存在するが、日本には該当する組織がないとしている。土屋班長は、「卒後医学教育認定機構(仮称)」のような独立機関がコントロールを行う必要があると述べた。
 また、独立機関の役割として、卒後教育の評価、評価認定者(サーベイヤー)の養成、調査・研究開発、卒後教育プログラムの適正運営などを挙げている。

 土屋班長は、これまでも認定機関についての提案はあったが、話し合いは医療関係者のみに限られたと説明。新たな独立機関では、国民の視点に立った研修を目指すほか、設備や教育担当者の確保などにも費用が必要なことから、医療機関や医師会、勤務医、医学生といった関係者の枠を超え、厚生労働省や文部科学省のほか、内閣府や財務省などの官公庁や地方公共団体などとも話し合いたいとしている。
 また、機関が軌道に乗るには5年は必要とみており、「卒業後もしっかりと医師の面倒を見ることができるシステムをつくりたい」と述べた。

 研究班は年度内に報告書をまとめ、4月上旬には厚生労働省厚生科学課長に提出する予定。研究班は一応解散となるが、土屋班長は報告書の作成だけでは終わらせないとし、「4月以降は卒後教育の独立機関の設立に突き進みたい」と意欲を示し、引き続き班員に協力を求めた。

なにかこう見てみますと、医師派遣を担ってきた大学が管轄の文科省と大学から医師派遣を受けてきた自治体病院が管轄の総務省、そしてその間に割って入り大学に代わって医師配分に関与しようとしている厚労省との勢力争い勃発という気もしないでもないんですが。
しかしそれら各省庁のいずれにおいても最大の当事者たる医師の立場というものは単に数字合わせの対象でしかないということなのでしょうかね。
いずれにしても新たなセレクションが発生するわけですから、これからの時代卒業試験の成績が悪い順に一番負けは産科、二番負けは救急なんて割り振られていって、金時計組になると基礎研究一直線とか言った話になるんでしょうか。

医者の側もただ黙って好き放題されているお人好しばかりというわけではありません。
先日も少しばかり書きました臨床研修制度見直し問題と絡めて、厚労省は研修医に対してもこれまで以上の強力な縛りをかけようとしてきています。

ごく大雑把に言えば研修医募集枠を大幅に制限することで研修医を高く売りつけて恩を売り、その代償として研修病院から中堅スタッフを地域医療などに供出させようという話のようで、既に例によってアリバイ作りのためのパブコメ募集(苦笑)などもひっそりと行われていたりします。
ひと頃叫ばれた「研修医を強制的に僻地送りに」なんて話と比べると「研修医は安価な労働力ではない」という新臨床研修制度発足当初のタテマエは守っているかに見える話ですが、研修医は病院というハコではなく先輩医師によって学ぶわけですから、こんなことを実行すればずいぶんとおかしな話になるだろうことは誰にでも判ることですよね。

676 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/03/04(水) 12:54:51 ID:q6tTUY4t0
>>668
> 指導医もいないところに、指導を受けに行けとは、
> 糞役人は、やはり思考が狂っている。
「患者様が教科書だ」と主張する役人か医師がでてこないかな?
そして、プロ市民が「研修医の人体実験にするつもりか?」といってくれると
観戦しているものにとっては楽しいのだが。

そんな危惧を抱くのは当の研修医となるべき学生達にとっても同じ事のようで、早速学生団体からは反対声明が出ています。

「募集定員設定の撤回を」―医学生の会が声明(2009年3月3日CBニュース)

 医学生ら214人でつくる「医師のキャリアパスを考える医学生の会」はこのほど、都道府県別募集定員の上限と病院別募集定員の設定撤回を求める声明文を発表した。

 声明文は2月27日付。都道府県別募集定員の上限と、病院別募集定員の設定は、「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」が2月18日にまとめた最終報告の中で打ち出した。同会は、これに対し、教育体制の整わない病院にも未熟な医師を強制配置することで、医療の質の低下を招くと指摘した上で、「絶対に容認できない」と主張。卒後数年間に充実した教育を受け経験を積むことが、将来優秀な医師となるためには重要だと訴え、「医師不足問題」と「医師の教育」は切り離して扱うべきと指摘している。
 また、研修病院間の研修医の偏在については、「現在の制度下で公開されている情報を基に医学生が教育環境の整っていると考える病院を選んだ結果、都会・地方にかかわらず教育に力を入れている病院に研修医が集まった」として、国の介入は研修医から良い教育を受ける機会を奪うものだと批判。その上で、都道府県別募集定員の上限と病院別募集定員の設定の撤回を要望している。

 3月2日には、厚生労働省の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会で、設定のための計算式などが盛り込まれた厚労省案が大筋で了承された。同省は3月中旬にも国民に意見を求め、その結果を次回の部会で報告した後、2010年度の制度導入に向けた省令改正などの手続きに入る予定。

 同会は、声明文を既に国会議員などに送付しており、今後は、国が目指す医師の計画配置に反対する署名活動を行う方針だ。

こういった学生の声明というものをどう考えるべきなんでしょうか?
今の時代の学生というのは情報収集能力に長けていますし、現役医師以上に物事を考える暇もあり、何より昔のような妙な洗脳を受けていない分視野が広がっています。
特にこういう独自団体を作り上げちゃうような連中は決して世間知らずのお馬鹿ではなくて、むしろ必要以上に(笑)世間ズレしちゃってるようなタイプが多いものです。
そうした視点から見つめ直してみますと、「国の介入は研修医から良い教育を受ける機会を奪うもの」なんていかにも正論的発言は、国の思惑や世論の動向も見極めた上でのそれなりに計算高い発言なんじゃないかなという深読みも出来そうに思いますね。

優秀な医師になるために必要なのは制度がどうとか言う問題ではないし、どんな制度であれモノになる医師とは自ら考え学ぶという態度を身につけていなければならないのは当然、であるからこそ制度論にかまけている暇があるならさっさと手を動かし汗を流して本質を学べ…なんてあたりが、恐らく少し以前までの「まともな指導医」の考え方でしょうか。
確かに医療現場における有能な専門職を養成する上でそうした考え方は今でも有力ではあるのですが、現代における医師という職業は既に汗水垂らして働けばよいという兵隊であるのみならず、言ってみれば専門職を指揮管理する将校であり、医療全般を統括する司令塔ですからね。
そうした意味では目の前の仕事を的確にクリアしていけるスキルがあればよしとする態度は今の時代にあっては少し視野が狭いし、某総理の言うように医者というものももう少し世間並みに常識を学んでいかなければならないというのが社会的要求とされる時代になってきたと言うことです。

いささか脱線しましたが、こうしたムチに対してアメにも相当するのがこちらの話題ということになるのでしょうが、しかしよく見てみれば必ずしもアメとばかりも言い切れないような話でもあるようです。

財政再建、新目標が課題に=社会保障費抑制を転換-与謝野財務相(2009年3月26日時事通信)

 与謝野馨財務・金融・経済財政相は26日、2006年の「骨太の方針」が定めた社会保障費抑制の転換を明言した。この方針は11年度までにプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化する政府の財政再建目標の大前提だった。今夏の骨太方針策定や10年度以降の予算編成に当たっては、社会保障制度のほころびや経済情勢の悪化を踏まえた新目標の設定が大きな課題となりそうだ。
 「骨太06」は基礎収支黒字化に必要な財源を捻出(ねんしゅつ)するため、07-11年の5年間で国の社会保障費を自然増分から計1.1兆円(年当たり 2200億円)抑制すると定めた。これに対し、社会保障費抑制が医療現場の崩壊につながっているとの批判が与野党を問わず噴出。与謝野氏は同日午前の参院予算委員会で、方針撤回を求めた民主党の蓮紡氏に「おのずとそういう方向になる」と路線転換を初めて認めた。 

国民全てが等しく関わる業界で多大な需要があり、さらにこれだけ人手不足も顕著とくれば医療・介護業界こそこの不景気の時期に何より望まれる超成長産業だと思うんですけどね。
そうした点で医療費抑制政策転換とはそれなりのニュースではあるのですが、ここでは医療現場の崩壊なるものと現場スタッフの志気喪失というものとは明確に分けて考えるべきでしょうね。

ひと頃から医師の逃散相次ぐ産科・小児科に対して診療報酬を手厚くしようなんて事が言われ始めましたが、診療報酬と言うものはあくまで医療機関に対して支払われるものであって、過酷な勤務状況にあえぐ勤務医の手に渡る保証などどこにもないわけです。
医療機関の整理、統廃合を画策する厚労省によって医師の集約化が進み、結果として医師の勤務状況に変化が生じるかも知れませんが、それと医療機関の赤字問題とはまた別問題ですよね。
そして医療機関が救われようが現場を支える医師らスタッフの心が折れてしまったという状況が改善できなければ、いくら診療報酬を増やしたところで意味がない話です。

実際問題として医療現場がどういうところなのかと言えば、先日も取り上げましたように県立病院で金がなくなったと言っては医師の当直費を支払わないなんて話が出たりする。
幸いにも何とか支払いの目処は立ったようですが、今の時代の医療機関が生き残れるかどうかの当落線はモチベーションの高い医師を確保できるかどうかで決まるという当たり前の常識があればこういう話はそうそう出てくるはずもないわけです。
「いくら医者を増やしたところで使い方が間違っていれば意味がない」とは厚労省の言い分ですが、同様に幾らお金を出したところで使い方が間違っていれば意味がない、そして何故か巨額医療費投入のツケだけは「この不景気であえぐ世相を他所に医者はこんなにも暴利を!」なんてことを言われてきっちり取り立てられそうな悪寒というのは考えすぎでしょうか(苦笑)。

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2009年3月27日 (金)

愛育病院続報、そして日赤にも是正勧告が

昨日は周産期総合センター指定病院である東京都は愛育病院に労基署の是正勧告、そしてセンター指定返上というニュースをお伝えしました。
本日もその続報を幾つか取り上げてみたいと思いますが、まずはこちらの院長会見から。

愛育病院:「行政が対策を」指定返上で院長会見(2009年3月26日毎日新聞)

 東京都の総合周産期母子医療センターの指定を受けている愛育病院(東京都港区)が指定返上を都に打診した問題で、中林正雄病院長が26日、記者会見し、「人を増やして過重労働をなくすような対策のロードマップ(道筋)を行政がつくってほしい」と訴えた。

 愛育病院は夜間、常勤医と非常勤医の2人体制で対応している。だが、勤務実態の改善を求めた三田労働基準監督署の是正勧告に基づく対応を取ると、常勤医が足らないケースが生じる。同病院には救命救急センターがなく、総合周産期母子医療センターの継続は難しいと判断した。同病院は、都や都周産期医療協議会の回答を待って、今後の対応を検討するという。

 中林院長は「産婦人科医療が赤字の中、国の援助がないと病院も産科医の待遇を改善できないし、過酷な条件では産科医も集まらない。悪条件が改善されないのに、労働基準法だけを守れと言うのは現実的でない」と説明した。

いや、あの、世間で法律違反を指摘されて責任者がこういう会見を開こうものなら、一般常識的には「開き直り」と非難されてしかるべき事態だと思うんですけどね。
人が集まらず過酷な勤務条件となっているならスタッフの能力に併せて適正な規模に業務を縮小していくのも病院長の重要な決断だと思うんですけれども、どうもそうした考えは微塵も存在してなさどうですね。

センターと言う名目があろうがなかろうが救急などと言うものは受ける施設は受けるし、受けない施設は受けないという現実がある以上、視線はセンター返上の是非ではなく労働環境の方に向けられていなければならないのは当然です(ちなみに愛育は何が何でも受けるという類の病院ではありません)。
いずれにしても雇用している労働者の労働環境を守るのは職場責任者の仕事なんですから、他人が悪い何とかしろではなく自分が悪い何とかしなければという気持ちがないのでは当事者意識の欠如を問われても仕方がないところでしょう。
こういう人任せな態度を見る限りどうもこの中林院長さんもかなり主体性のない方なのかなと疑っておりましたら、早速その偏見を強化するようなニュースですよ。

総合周産期センター指定、愛育病院が返上の打診を撤回(2009年3月26日日経ネット)

 東京都港区の愛育病院が「総合周産期母子医療センター」の指定返上を都に打診した問題で、同病院の中林正雄院長は26日、報道陣に「都から返上の必要はないと言われた。その判断に従う」などと話し、センターとして指定を受け続ける考えを示した。事実上、返上の打診を撤回したことになる。

 中林院長の説明によると、労働基準法に基づく労使協定(三六協定)を結ばず、医師に長時間労働をさせていたとして、労働基準監督署から是正を勧告された。

 病院は労使協定を結ぶことや、非常勤の医師を新たに4人確保する改善策を4月20日までに労基署に報告する予定だが、それでも常勤医師だけでは国が総合センターの指針として示している「24時間、複数の産科医が勤務」という条件が満たせないことから、都に返上を打診したという。

さっそく返上を撤回、しかもその理由が「東京都に言われたから」って、判断まで他人任せかい!大丈夫かこの院長は?と他人事ながら心配になってくるような話です。
この記事だけ見ますと東京都も違法行為を指摘されているのにこんなこと言ったんなら後でトラブるんじゃないかなとも感じるところがあるわけですが、別ソースで見ますと少し異なった印象を受けます。

愛育病院、一転して総合周産期センター継続を検討へ(2009年3月26日朝日新聞)

 リスクの高いお産を診る「総合周産期母子医療センター」の指定返上を東京都に申し出た愛育病院(港区)は26日、再考を求める都の意向を受け入れ、総合センターの継続を検討することを決めた。

 同病院は、医師の勤務条件に関する労働基準監督署の是正勧告を受け、総合センターとして望ましいとされる産科医の当直2人以上の態勢を常勤医だけでは維持できないと判断し、返上を申し出た。

 同病院によると、26日に病院を訪れた都の担当者から、周産期医療の提供体制を守るために必要だとして継続を要請された。都側は非常勤の医師だけの当直を認める姿勢を示したという。

 一方、厚生労働省の担当者からは25日、労働基準法に関する告示で時間外勤務時間の上限と定められた年360時間について、「労使協定に特別条項を作れば、基準を超えて勤務させることができる」と説明されたという。

 中林正雄院長は26日の記者会見で、「非常勤医2人の当直という日があってもいいのか。特別条項で基準を超える時間外労働をさせても法違反にならないのか。都や厚労省に文書で保証してもらいたい」と話した。

 中林院長は、非常勤医だけで当直をすることの是非について、周産期医療の関係機関でつくる協議会に検討を求めたことも明らかにした。

いや、お上に文書で保証を求める、ですか…今どき珍しいくらいの天然かと思っていましたが、とことん他人任せの姿勢と見せておいて、実は意外としたたかなんですかね?>中林院長。
しかし厚労省担当者が「労使協定に特別条項を作れば、基準を超えて勤務させることができる」と説明したと言いますが、そもそも普通の産科勤務医であれば時間外が年間360時間(月30時間)なんてレベルにとどまるとも思えないところですけれども。
ちなみに36協定における特別条項とは決算期や大規模トラブルなどでたまたま上限時間を超えてしまった場合の一時的な措置であって、こうした勤務医の過重労働のように日常的な超過勤務状態に対応したものではないと思いますが、当の所轄官庁である厚労省の担当者が事実こんな発言をしたのであれば問題になりそうですね。

いずれにしても厚労省にしても都にしても病院側にしても法律本来の趣旨である現場スタッフの過重労働防止、権利保護という観点は全く存在しなさそうですし、そもそも現場医師の労働環境を改善しようなどという姿勢は全く見られないところが何とも素敵ではあります。
そしてもう一つ、そもそも愛育病院のような(比較的)労働環境の良い病院ですら労基署から突っ込まれるのであれば、他のほとんどの病院が指摘されてしかるべきだろうとは容易に想像できるところではあるし、実際他の施設も調査中であるという話がありましたが、早速にもこんなニュースが来ているようです。

(速報)日赤医療センターにも是正勧告(2009年3月26日ロハスメディカル)

 東京都渋谷区の日赤医療センター(幕内雅敏院長)が、渋谷労働基準監督署から、36協定を締結していないことなどを理由に、労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが分かった。同センターは、心臓病など緊急の救命処置が必要な妊婦を必ず受け入れることを目的に、東京都から指定を受けた3つの「スーパー総合周産期センター」の1つで、今月25日から稼働が始まったところだ。愛育病院が是正勧告を受けたことに続き、全国的にも注目を集めている「スーパーセンター」にも同様の指摘が入ったことで、都の周産期医療体制の維持を危ぶむ声も上がっている。

 同センターは今月13日、36協定を締結していなかったことや職員の休憩時間が短かったこと、昨年10月に研修医の宿直業務について時間外労働時間に対する割増賃金を払っていなかったことの3点について労基署から指摘を受けており、改善を求められていた。同センターはこの指摘について、36協定については職員代表と既に合意できているとして4月中に締結し、休憩時間についても就業規則を改定して対応するとしている。また、研修医の時間外労働時間の割増賃金については4月の給料日に振込みを予定しているという。労基署への改善報告の期日は特に指定されていないが、病院側の対応が整い次第順次報告し、4月半ばには対応を終えるとしている。
 今回の是正勧告については、「『スーパー総合』が始まるのに、労基法を遵守できるような体制が取れるのか」と危惧を示す病院関係者もいるものの、同センターの竹下修管理局長は、「今回の勧告についてはすべて対応できる。(同センターに)医師が多過ぎるということはないが、潤沢に働いていただいていると思うので、『スーパー総合周産期センター』としてやっていくことに、今回の件が影響するとは思わない」と話している。同院の産科医は研修医を含めて24人

昨日も書きました通りこの25日から運用が始まったばかりの東京都ご自慢の「スーパー総合」ですが、早速指定病院の一つがこういう指摘を受けるようではずいぶんとケチがついたなというところでしょうか。
さすがに指定を受ける日赤医療センターだけに産科医24人と絶大なマンパワーを誇ることから今回の指摘にも対応可能ということですが、他の同種施設でこのレベルのスタッフを擁しているところがどれくらいあるのかと言うことですよね。
そして産科に限らずこうして一定の基準が今回大々的に公になってしまった以上、東京だけに限らず全国的な問題として対応を迫られるということになりそうです。

マスコミは未だにセンター返上センター返上と何とかの一つ覚えのように連呼しているばかりですが、単にセンター施設認定の話にとどまらないこうした問題の本質というものを見誤ってはならないと思いますね。
労基署と厚労省、都の見解がそれぞれ異なっているのは興味深いところですが、労基署にはこの際ですから妙に社会的背景などに遠慮したりせず、労働者の保護に関する監督をしっかりと行っていっていただきたいところです。

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2009年3月26日 (木)

【速報】愛育病院に労基署が是正勧告!産科崩壊一直線か?!

昨日3月25日から、東京都では例の「スーパー総合」なるシステムが立ち上げられました。
これも実態は何も変わることがなく単に名前だけ変わったんじゃないかとか色々と言われているようですが、搬送先を探す救急隊にすればこういうものが指定されることでずいぶんと肩の荷もおりるのだろうなということは想像できます。

都が「スーパー総合周産期センター」(2009年3月25日TBSニュース)

 救急搬送された妊婦が受け入れを断られた問題を受け、東京都は、重い病気を併発した妊婦の緊急搬送を必ず受け入れる「スーパー総合周産期センター」の運用を25日から始めました。

 「スーパー総合周産期センター」としての運用が始まったのは、品川区の昭和大学病院、港区の日赤医療センター、板橋区の日大板橋病院の3か所です。

 去年、脳出血を起こした妊婦が緊急搬送を断られる問題が相次いだことを受け、これらの病院では、脳外科や麻酔科など産科以外の医師の当直体制を整備したり、集中治療室のベッドをあけて置くなどして、重症の妊婦の緊急搬送を必ず受け入れるとしています。

 一方で、東京都では「最終的な受け入れ施設であり、軽症の患者でも受け入れるわけではないことは理解して欲しい」としています。

ま、「軽症の患者でも受け入れるわけではないことは理解して」くれるようなら今のような産科救急の惨状はあるいはなかったかもですけれどもね…

しかしこれで東京都の産科救急も前途洋々…などと考えている関係者はまさかおるまいとは思いますが、何と昨日の立ち上げにタイミングを合わせたかのようにいきなり冷水を浴びせられるような大きなニュースが飛び込んで来ました。
昨日の今日ながらもう既に御存知の方も大勢いらっしゃるかとも思いますが、あの皇族お世継ぎの悠仁親王御出産でおなじみの愛育病院が大変なことになってしまっています。

(速報)愛育病院に労基署が是正勧告(2009年3月25日ロハス・メディカル)

 東京都港区の恩師財団母子愛育会・愛育病院(中林正雄院長)が今月、所管の三田労働基準監督署から、医師など職員の労働条件に関して、36協定を締結していないことなどを理由に、労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが分かった。最悪の場合、業務停止命令が出されるという。同病院は、秋篠宮紀子様が悠仁親王を出産されるなど、条件の恵まれたセレブ病院として知られている。また、1999年には東京都から総合周産期母子医療センターの指定も受けている。他病院に比べて労働条件に恵まれた同病院さえ是正勧告を受けたことで、周産期医療界に激震が走っている。

 同病院に勤務する医師はこの問題について、次のように話している。「先週、労基署から呼び出されて是正勧告を受けたが、もとより労働基準法に準拠した働き方になっていない事は明らかで、36協定を結べばいいという話ではない。産科も新生児科も大幅に増員の必要があるが、それが簡単にできるならとっくの昔にそうしている。愛育病院はまだ恵まれている方だから、ほかの病院にはもっと厳しいはずだ。業務停止になれば、病棟閉鎖になる。厚生労働省は自分たちが何をやろうとしているのか、全く理解していない」
 同病院は、1999年に東京都から総合周産期母子医療センターの指定を受けている。新生児集中治療管理室(NICU)や母体・胎児集中治療室(MFICU)を含む118床を有し、2007年度の分娩件数は約1750件。
 なお、この他にもいくつかの病院が同様の勧告を受けたとの情報がある。新たな情報が入り次第、順次お伝えしていく。

いやあ、いきなりキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!と言いますか、ついにパンドラの箱を開けちゃいましたかねえ…
ちなみに36協定というのは労働基準法36条によって規定される労使協定のことで、法定労働時間を超えて職員を働かせる場合には必ず事前に労使間でこうした協定を結び労基署に届けておかなければなりません。
民間に対して範を垂れるべき公立病院においてさえ週100時間労働をこなしていても書類上きっちり週40時間労働なんてデタラメがまかり通っている医療業界ですから、「36協定?なにそれ食べられるの?」なレベルの認識が労使間双方に未だ蔓延しているのが現状で、辛うじて協定が存在している病院でも当たり前のように有名無実化していたりします。
当然ながらこういうものは労基署に見つかれば本来なら是正勧告ものなんですが、(あくまで噂によれば)労基署側も良くしたもので今までは医療業界に関しては見て見ぬふりを決め込むという伝統があったなんて話もあります。

しかし「この他にもいくつかの病院が同様の勧告を受けたとの情報がある。」なんてことをさらっと書いてありますが、愛育と言えばどちらかと言えばセレブ系と言われる病院で、そこいらの野戦病院と違って労働環境がそうまで悪化していたという噂は聞いていませんでしたがね。
このクラスですら見過ごしに出来ないとお上の手入れが入ったとなれば事実上産科救急をやっている総合周産期センタークラスではほとんどの病院が引っかかるだろうと思われますから、これはまさかまさかの東京都産科崩壊一直線ともなりかねないような大ニュースですよ。
こうなると当然の結末と言いますか、ある意味仕方がないのかなと思うのですが、同時にこういうニュースも出ているんですね。

(速報)愛育病院が総合周産期センターの指定返上を通知(2009年3月25日ロハス・メディカル)

 東京都港区の恩師財団母子愛育会・愛育病院(中林正雄院長)が3月24日、都に対し、総合周産期母子医療センターの指定を返上すると通知していたことが分かった。
 同院は今月17日に所管の三田労働基準監督署から、医師など職員の労働条件に関して労働基準法違反で是正勧告を受けていたが、現状での法令遵守は通常の医療サービス提供に支障をきたすと判断したとみられる。同院は、1999年に東京都から総合周産期母子医療センターの指定を受けていた。

 東京都福祉保健局医療政策部の室井豊救急災害医療課長は、「愛育病院側の勧告についての解釈に誤解があるかもしれないので、今事実確認をしている」と述べており、同院で勤務する医師は、「もとから労働基準法に準拠した働き方になっていないのだから、総合を返上するぐらいではだめだと思う。労基署と36協定に関して事務担当者が協議しているが、結局の所増員なしにはクリアできない事に変わりはないだろう」と話している。

いやあ、他の標的に挙げられた病院も同様な対応をと言う話にでもなれば、これはいきなりスーパー総合フル稼働状態が期待できそうなんですが、それ以前にスーパー総合の三病院自体がヤバイんじゃありませんか?!
下手をすると東京の産科救急が潰れるくらいじゃ済まないトンでもない大騒ぎに発展しかねない話なんですが、このタイミングでこうした行動に出た労基署の意図も含めて今後の続報が待たれるところです。

続報ですが、各主要紙の記事が出そろってきました。
周産期センター返上は確定的といった感じの報道もありましたが、返上の意向を受けて現在調整中ということですから、平たく言えばやめないように丸め込んでいる真っ最中ということでしょうか。
しかし各紙とも労基署からの是正勧告という医療界を激震させるビッグニュースよりも、周産期センターの返上というどうでもいい枝葉のニュースばかり熱心に取り上げているのが興味深いですね。

「愛育病院は厚労省と調整へ」-東京都が見解(2009年3月25日ロハスメディカル)

 恩賜財団母子愛育会・愛育病院(中林正雄院長)が総合周産期母子医療センターの指定を返上するとの意向を東京都に伝えていた問題で、東京都福祉保健局医療政策部の室井豊救急災害医療課長は25日夜に取材に対応し、愛育病院側と協議の場を持ったとした上で、「病院側は法律の解釈について厚生労働省と相談し、調整していくということになった」と話し、病院側が総合センターの継続に前向きな意向を示しているとの見方を示した。

 愛育病院は、医師の労働環境などについて労働基準法を遵守した場合、通常の医療提供体制を維持できなくなるとして、総合周産期母子医療センターの指定を返上するとの意向を都に伝えていた。これを受けて同院と都が今日午後に会談。室井課長は「病院側も法律の解釈にいろいろあるということが分かったという。限られた周産期医療の資源だから、総合センターとして引き続き医療を提供してもらえれば」と期待感を示した。
 なお、愛育病院と厚生労働省はそれぞれ、担当者が不在で取材に応じられないとしている。

愛育病院、周産期センターの指定返上の意向(2009年3月25日日テレニュース)

 秋篠宮妃紀子さまが悠仁さまを出産されたことで知られる東京・港区の愛育病院が、総合周産期母子医療センターの指定を返上する意向を東京都に伝えたことがわかった。

 東京都などによると、24日に愛育病院から総合周産期母子医療センターの指定を返上したいとの申し入れがあったという。愛育病院は、労働基準監督署から医師の勤務状況について是正勧告を受け、十分な当直体制を維持できなくなったことなどを理由に返上を申し入れ、院長が25日午後、東京都の担当者に状況を説明した。

 愛育病院は、厚労省に対し、「指定を返上しても、周産期医療には引き続き協力したい」などと話しているという。

 東京都は25日からスーパー総合周産期母子医療センターの運用を開始し、周産期医療の強化に乗り出したばかりで、愛育病院についても指定を維持できるよう対策を講じる方針

 愛育病院は1938年に設立され、2006年には紀子さまが悠仁さまを出産された周産期医療の専門病院。

愛育病院、「総合周産期」解除を打診(2009年3月26日TBSニュース)

 ハイリスクの妊婦に対応する「総合周産期母子医療センター」に指定されている東京・港区の愛育病院が、「当直体制が維持できない」として、東京都に指定の解除を打診していたことがわかりました。

 愛育病院は、都内に9か所あるハイリスクの妊婦を24時間体制で受け入れる「総合周産期母子医療センター」に10年前から指定されています。

 東京都によりますと、25日、愛育病院の院長が都を訪れ、「『総合周産期母子医療センター』の指定を解除してほしい」と打診したということです。愛育病院は理由として、「労働基準監督署から医師の勤務状況について是正を勧告され、当直体制が維持できなくなった」と説明したということです。

 都の担当者は、「他の病院に比べて医師が足りないというわけではないので、もう一度精査してほしい」と話しています。

 愛育病院は、2006年に秋篠宮妃紀子さまが悠仁さまを出産したことでも知られています。

「総合周産期」返上を打診 医師確保困難で愛育病院(2009年3月25日中日新聞)

 東京都から早産などハイリスクの妊産婦を24時間体制で受け入れる「総合周産期母子医療センター」に指定されている愛育病院(中林正雄院長)が、複数の医師による当直が困難なことなどから、都に指定の解除を打診したことが25日、都や病院への取材で分かった。

 愛育病院は必要な医師数が少なくて済む「地域周産期母子医療センター」への指定見直しを希望し24日、都に意向を伝えた。都は医療体制に大きな影響が出るため、病院側と協議している。

 愛育病院によると、15人の産科医のうち3人が子育てなどのため夜間勤務ができないという。

 今月中旬、三田労働基準監督署は労働基準法に基づく労使協定(三六協定)を結ばず、医師に長時間労働をさせていたとして、是正を勧告。これを受け病院側は「各医師に法定の労働時間を守らせると、医師2人による当直は難しい」(中林院長)と判断した。

愛育病院が総合周産期センター返上申し出 当直維持困難(2009年3月26日朝日新聞)

 危険の大きい出産に24時間態勢で対応する総合周産期母子医療センターに東京都から指定されている愛育病院(港区)が、都に指定の返上を申し出たことがわかった。今月中旬、三田労働基準監督署から受けた医師の勤務条件についての是正勧告に応じるためには、医師の勤務時間を減らす必要があり、総合センターに求められる態勢が確保できないと判断した。

 総合センターでなくなると、救急の妊婦の受け入れが制約されたり、近隣の医療機関の負担が増したりするおそれがある。都は愛育病院に再検討を求めている。厚生労働省によると、総合センターの指定辞退を申し出るケースは初めてという。医師の過重労働で支えられている周産期医療の実情が露呈した形だ。

 病院関係者によると、三田労基署から、医師の勤務実態が労働基準法違反に当たるとする是正勧告書を受け取った。勧告書は、時間外労働に関する労使協定を結ばずに医師に時間外労働をさせ、必要な休息時間や休日、割増賃金を与えていないと指摘。4月20日までに改善するよう求めている。

 愛育病院は、同法などに沿って時間外勤務の上限を守るには、現在の人員では総合センターに求められる産科医2人と新生児科医1人の当直を維持できないため、指定を返上することにした。

 同病院は周産期医療が中心。99年4月に総合センターに指定された。常勤の産科医は昨年10月現在で研修医も含め14人、新生児科医7人。年間千数百件の出産を扱う。「自然出産」がモットーで、皇室との関係が深く、皇族や有名人の出産も多い。

 病院関係者は「勧告に沿うには医師を増やすしかないが、月末までに新たに医師を探すのは不可能。外来だけしかできなくなる恐れもある」と話す。

 都は25日、「労基署の勧告について誤解があるのではないか。当直中の睡眠時間などは時間外勤務に入れる必要はないはず。勧告の解釈を再検討すれば産科当直2人は可能」と病院に再考を求めた。

 東京都では昨年10月、脳出血の妊婦が8病院に受け入れを断られ、死亡した問題があった。都は「ぎりぎりの態勢で保っている周産期医療のネットワークが揺らぎかねない」と衝撃を受けている。

 一方、同様に総合センターに指定されている日赤医療センター(渋谷区)も渋谷労基署の是正勧告を受け、労使協定などの準備を急いでいる

<愛育病院>「総合周産期指定を返上」 東京都に申し入れ(2009年3月26日毎日新聞)

 東京都港区の愛育病院(中林正雄院長)が、都の総合周産期母子医療センターの指定を返上すると都に申し入れたことが25日分かった。労働基準監督署が、医師らの夜間の勤務体制について是正勧告したのを受け、「改善は難しく、センター機能を継続することは困難」と判断した。危険性の高い妊産婦に対応する医師不足が背景にあり、実際に指定が返上されれば、全国初の事例となる。

 愛育病院によると、三田労働基準監督署が1月、同病院の勤務実態を調査。今月17日、労働基準法に基づく是正勧告を出した。勧告は、医師が労基法上の労働時間(週最大44時間)を大幅に超えて働く実態や、夜間勤務中の睡眠時間を確保していないなど適切な勤務体制を取っていないことに改善を求めた。

 同センターは、危険度の高い出産の「最後のとりで」で、未熟児や新生児、母体の救命を目的に設置された。母体・胎児集中治療管理室や新生児集中治療管理室を備え、複数の医師が24時間体制で患者を受け入れる。昨年8月現在、全国に75施設あり、愛育病院は99年に指定を受けた。

 愛育病院は受け入れに対応するため、夜間は2人体制で対応してきた。労基署は「夜間も昼間同様の勤務実態がある」として、要員増の必要性を指摘。しかし愛育病院は「夜間勤務が可能な常勤医師は5人しかおらず、労基署が求める体制は難しい。現在と同水準での夜間受け入れが継続できないので、センター指定の返上を決めた」と話している。

 都は「労基署は『こうしたらいい』と求めているのであって、センターの看板を下ろすほどではない。今後も協議を続けたい」と話している。愛育病院は恩賜財団母子愛育会が運営し、1938年開業。

<周産期医療>現場負担、放置のツケ 愛育病院が指定返上へ(2009年3月26日毎日新聞)

 愛育病院が、妊産婦や新生児にとって「最後のとりで」である総合周産期母子医療センター指定の返上を東京都に申し入れた問題は、安心な医療体制を維持しようとすれば労働基準法を守れない過酷な医師の勤務実態を浮き彫りにした。

多くの産科施設では医師の夜間勤務を、労基法上は労働時間とみなさない「宿直」としている。宿直とは巡回などの軽い業務で、睡眠も取れる。だが実際の夜間勤務は、緊急の帝王切開手術をするなど日中の勤務と変わらない。厚生労働省は02年3月、こうした実態の改善を求める局長通達を出していた。

 しかし、全国周産期医療連絡協議会が08年、全国の同センターを対象に実施した調査では、97%が「宿直制」をとっていた。77%は夜間勤務明けの医師が翌日夜まで勤務し、翌日を「原則休日」としているのはわずか7%しかなかった。

 労基法を守ろうとすれば、医師を増やし、日勤-夜勤で交代する体制を実現するしかないが、産科医は減り続けている。06年末の厚労省の調査では、産婦人科医は1万1783人で、96年から約12%減っている。全国の同センターも、少ない医師でやりくりせざるをえないのが実情だ。愛育病院のような動きが広がれば、日本の周産期医療は崩壊の危機に直面する。

 産科の医療体制整備に詳しい海野信也・北里大教授は「医療現場は患者に迷惑をかけないように無理してきたが、労基署の勧告は『医療現場に過度の負担をかけるべきではない』との指摘だ。こうなるまで事態を放置してきた国の責任は重い」と批判する。

しかし東京都の「労基署は『こうしたらいい』と求めているのであって、センターの看板を下ろすほどではない。」は良かったですね(苦笑)。

夜間も昼間と同様の勤務実績があると認められているからこその是正勧告なのに「当直中の睡眠時間などは時間外勤務に入れる必要はない」というのはまさしく実態を誤魔化せと言っているような話としか取れませんが。

こういう事件があるとあちこちから語るに落ちるともいうべきホンネが漏れ聞こえてきて、またそれが別な場所で新たな火種になりそうで興味深いところではありますが。
労基署としては労働者の権利を保護すべく指導監督する責任があるわけですから、曖昧な話で誤魔化そうとするかのような態度に対しては断固として毅然たる態度で臨んでいただけるものと期待しておきます。

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2009年3月25日 (水)

レセプトオンライン請求義務化は先送りの方針

少し前に、ひっそりとこんな記事が出ていたのをご記憶の方も多いんじゃないかと思います。

レセプト電子化撤回求め、医師・歯科医783人追加提訴(2009年3月18日朝日新聞)

 11年度から原則義務化される診療報酬明細書(レセプト)のオンライン化をめぐり、全国の医師らが国を相手取り、従う義務の不存在確認などを求めている訴訟で、新たに43都道府県の医師・歯科医師783人が18日、横浜地裁に提訴した。1月に続く追加提訴で、集団訴訟の原告は45都道府県の計1744人になった。

 訴状によると、原告側は、オンライン化に伴って新たにコンピューターの購入が必要になるなど開業医の負担が増し、廃業に追い込まれる可能性があるなどと主張。「(医師の廃業は)国民の生存権につながり、営業の自由にとどまらない重要性がある」などと違憲性を訴えており、義務の不存在確認のほか、1人あたり110万円の損害賠償の支払いを求めている。

御存知のように保険診療において医療機関は窓口で被保険者である患者から受診料の一部である自己負担分のみを受け取り、残りは保険者に請求し支払いを受けるというシステムになっています。
この時に提出する診療内容の明細がレセプトと呼ばれるものですが、厚労省が法律にも基づかずに省令によってこのオンライン化を義務づけようとしていること、そしてそれに対して一部医師が訴訟沙汰に及んでいることは以前にも書きました通りです。
今回更に大勢の原告が加わったということですが、こうまで一部医師の反発を招いているという状況から厚労省が当初の方針を変更しつつあるようなのですね。

診療報酬:オンライン請求延期も 衆院選控え自民慎重姿勢(2009年3月18日毎日新聞)

 医師が治療費を請求するレセプト(診療報酬明細書)について、2011年4月からオンラインでしか認めないとした政府方針が揺らいでいる。日本医師会などが反発し、衆院選での日医の支持をもくろむ自民党が同調し始めたからだ。1月には35都府県の医師が義務化撤回を求め提訴する騒ぎも起きており、2年後に迫った完全オンライン化は先送りの可能性が出ている。

 医療機関は審査機関を通じてレセプトを保険運営者に提出し、報酬を請求する。オンライン請求なら不正請求やミスを発見しやすく、事務経費削減による医療費抑制も可能となるが、現在オンライン化しているのは病院の29%、開業医の3.2%にとどまる。

 そこで政府は06年4月、オンライン請求を段階的に義務化する方針を決めた。既に08年度から大規模病院で始めたほか、10年度には専用機器導入済みの開業医、11年度からは全医療機関に広げる。

 しかし、高齢の医師には機器の操作が難しい面があるうえ、設備費数百万円を自己負担する必要がある。厚生労働省は零細診療所には2年の猶予を設けるほか、代行機関による請求も認めるが、約1万4000医療機関を対象とした全国保険医団体連合会の調査には、医師の12.2%が「義務化されれば閉院する」と答えた。日医も「患者に利点はなく、医師不足に拍車をかける」と批判している。

 自民党も慎重姿勢に転じた。先月27日の同党医療委員会では「希望者だけにすればいい」といった声が相次ぎ、11年度からの完全移行を求める意見はなかった。

オンライン請求の免除拡大か 零細診療所のレセプト(2009年3月20日47ニュース)

 与党は19日、2011年4月から全国すべての医療機関にインターネットを利用したレセプト(診療報酬明細書)のオンライン請求を原則的に義務づける政府方針を緩和し、請求件数が少ない小規模診療所や高齢の開業医については免除する方向で検討に入った。

 現在の方針でも13年3月末までの2年間、1カ月当たりのレセプト請求件数が100枚以下の医療機関(歯科は50件以下)は例外的に免除されているが、与党は例外対象の拡大を視野に入れる。

 ただ、義務化は規制改革の重点計画事項として07年に閣議決定されており、政府の規制改革会議メンバーは「改革の後退だ」と反発。政府、与党間で今後、調整が本格化するとみられる。

 オンライン請求の完全義務化には、日本医師会や日本歯科医師会などが「廃業する医師が増え、地域医療の崩壊に拍車がかかる」として撤回を強く要求しており、総選挙を控え自民党内で同調する声が高まっていた。

レセプト電子請求「地域医療に配慮」明記 政府改定案(2009年3月24日日経ネット)

 政府の規制改革推進3カ年計画(2007―09年度)の改定案が23日、明らかになった。レセプト(診療報酬明細書)のオンライン請求については従来通り、11年4月からの完全義務化を原則としながらも、自民党側の求めに応じて「地域医療の崩壊を招くことのないよう配慮」との文言を追加した。例外を認めやすくする表現で、既定方針より後退した格好だ。24日の自民党部会に提示し、了承を得られれば月内に閣議決定する。

こうして改めて見てみますと、医師会などを初めとする一部の守旧的な抵抗勢力によって政府厚労省の高邁な理想が如何に歪められていくかということがおわかりでしょうか(苦笑)。

レセプト審査というものがいかに恣意的かついい加減なものであるかは以前にも取り上げてきたところではありますが、「オンライン請求なら不正請求やミスを発見しやすく、事務経費削減による医療費抑制も可能となる」とはどういうことでしょうか?
現状の恣意的な「不正請求」の指摘によって保険診療というものがどれほど歪められているかは人工透析患者に対する貧血治療薬使用に関わる「EPO訴訟」でも明らかになったところですが、恐ろしいことにこうした不当な査定が行われていた結果神奈川県では実際に透析患者の貧血は全国最低水準であったと言うことです。
「不正請求やミスを発見しやすく」なるとはつまり、ワンクリックでこうした足切りを簡単にできるようにするということなのかなとも勘ぐられるところではあるわけですね。

そして「事務経費削減による医療費抑制」といった話を聞きますと、自分としてはいつも電子カルテ導入の経緯を思い出さざるを得ません。
「事務経費削減による支出抑制」もうたい文句に導入された電子カルテですが、確かに事務員が行っていたコスト計算などの業務を医師や看護師にやらせるようになったわけですから事務員の業務量は大きく削減されたことでしょう。
ところが実際に電子カルテを全国公立病院などではどういうことが起こったかと言えば、仕事が減ったはずの事務員の数は一向に削減された気配がなくアフター5を謳歌している、一方で業務量が増加し効率が低下した現場医療スタッフは更なる過重労働を強いられた挙げ句、暇になった事務員から「医業収入が落ちているぞ!もっと働け!」と尻を叩かれる羽目になったわけです。

個人的意見としては多忙を極める医療環境が効率化することは良いことであるし、そのための道具として電子化が使えるということであるなら大いに利用すればいいと考えているのですが、電子カルテに見られるように肝心の医療がかえって非効率になってしまうような見当外れの効率化など電カル業者を喜ばせるだけで全く意味がないことだと言うことです。
オンライン請求を義務化するなら少なくとも全国の医療機関にオンライン請求のためのシステムを導入する経費が幾ら、そしてそれによって削減される事務経費と関係職員数が幾らという実際の数字を出して語ってもらわなければならないし、何より現在進行形で崩壊しつつある医療現場にわざわざこのタイミングで後方から余計な負担を転嫁するだけの説得力があるのかということですね。

そんなこんなで「幾らなんでもあまりに胡散臭すぎる話じゃないか?これはまたぞろ巨額の利権絡みか?」などと邪推しながら経過を見ているところなのですが、面白いことにこういう話でも額面通りに受け取っておられる方々も結構いらっしゃるようなんですね。
あるいは何らかの意図を持ってそう受け取らせようと努力されているということなのかも知れませんが、レセプト電子化からこんなバラ色の未来絵図が描き出されるということであるなら、それは確かに世の詐欺師の皆さんも儲かるんだろうなあと言う気もしないでもありません。

【正論】政策研究大学院大学教授・大田弘子 医療費効率化の骨抜き許すな(2009年3月24日産経新聞)

 ≪大臣在任中から取り組む≫

 超高齢化が進む日本で、医療の質を高めながら、できる限り医療費負担の伸びをおさえていくことは、最重要課題のひとつだ。

 経済財政担当の大臣在任中から、医療費をどうするかはたいへん難しい問題だった。“骨太方針2006” で社会保障費の伸びを抑制することが決められていたから、国会でも批判の矢面に立った。たしかに産科・小児科を中心に医師不足は深刻な問題になっているし、勤務医の待遇も過酷だ。医療が本来果たすはずの役割を損なってまで、歳出を減らすべきだとは、私とてまったく思わない。

 しかし、だからといって、いまの医療にムダがなく、効率化の必要性がないとは決して言えない。いわゆる“薬漬け、検査漬け”の問題は、いまだに解決されていない。かかりつけ医と、高度な病院との分担・連携もとれていない。1人当たりの高齢者医療費は、一番低い長野県と一番高い福岡県とで1・5倍もの差がある。

 必要な医療費を増やすことには私を含めて多くの国民が賛成するだろうが、だからといって、いまのまま医療費が増え続け、負担が増加することに無条件で賛成、という人は少ないはずだ。

 医療制度がきわめて大事だからこそ、効率化の努力を怠らず、高齢化に耐える制度にしていかねばならない。“骨太方針2008”では、社会保障費の伸びを抑制するものの、必要な医療費は、道路財源など他の歳出を削減して捻出(ねんしゅつ)することを取り決めた。

 しかし、いま効率化のために一番大切なことが、骨抜きにされようとしている。それは、診療報酬の明細書(レセプトとよぶ)の電子化である。

 ≪診療報酬明細の電子化を≫

 医師は、患者への治療や薬の代金をレセプトに記入して健康保険組合などの「保険者」に請求する。それを審査機関がチェックして、医療保険から診療費が支払われる。このレセプトは、手書きや印字で作成された「紙」で提出されてきたが、年間16・6億枚もの紙レセプトを処理するには、多大な費用がかかる。1枚につき114円(健保組合・医科の場合)が、保険者から審査機関に支払われているが、このお金は私たちが払った保険料から出される。

 費用の問題だけではない。紙レセプトが電子レセプトに変わり、オンラインで請求されることで、治療や投薬のデータはIT上で分析される。これによって、検査が重複したケースや、複数の病院にかかって薬が過剰に投与されたケースが明らかになる。もちろん、不正請求の防止にもなる。医療情報が蓄積されることで、標準的な治療法の確立など、データに基づいた根拠ある政策につながる。

医療の質を下げずに医療費負担の増大を抑えていくうえで、レセプトの電子化は何より大切であり、これなしに効率化の糸口はないとすら言える。

 だからこそ、さまざまな反対を乗り越えてレセプトの電子化が徐々に進み、平成23年度から診療所や歯科を含めて、完全に電子レセプトのオンライン請求を義務づけることが閣議決定された。しかしここへきて、医師会や歯科医師会を中心に猛烈な反対が起こり、レセプト電子化の義務づけをやめたり、平成23年度の期限が先送りされたりする可能性が出てきた。私はこのことに、大きな危機感をいだいている。

 医師会は地元の国会議員に賛否を問う質問状を送付し、回答は一覧表にして、所属政党の政策責任者や全国各地の医師会に送付するという。

 ≪保険料負担者の立場で≫

 反対の最大の理由は、オンライン機器の導入など負担が増えることや、IT化に対応できない医師が多いことである。しかし、それなら補助金を増やせばいい。

 導入に対して税制上の支援や低利融資があるが、それで不足だというなら、拡大すればいい。補助金が一時的に増えても、電子化による効率化のほうが、メリットははるかに大きい。IT化に対応できない医師には、代行の仕組みを整えればいい。僻地(へきち)や離島など特別の理由で対応が難しい場合は、一時的な猶予を認めて策を講ずればいい。

 そもそもITへの対応は、他の業界でも楽だったわけではない。それでも民間企業は、生き残りをかけて新技術に懸命に対応してきた。ましてや、医療は保険料という半ば強制的に集められたお金を使っている。他の業界より効率化の努力をしても当然ではないか。なぜ医療においてだけ、私たちはIT化のメリットを享受できないのか。お隣の韓国は、1996年から10年かけて、オンライン化100%を達成している。

 ここで閣議決定をくつがえし、レセプトの電子化を骨抜きにすることがあってはならない。政府・与党は、徹底して保険料負担者の立場に立ち、レセプトの電子化を進めるべきである。

 また、医師会の質問状に対する国会議員の回答一覧表は、マスコミを通して、ぜひ私たちに開示してほしい。

何事にも公益というものがあるでしょうから、リスクとベネフィットを考慮してそれが最も有効かつ早急に行うべき方策だと言うことであれば、現場が何をどう言おうが強権でもって進めるべきでしょう。
そうした公益を考慮する上でも、まずは空想の世界ではなく現実的なデータに基づいての議論をすべきだと思いますね。

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2009年3月24日 (火)

医療関連の特許権保護

政府内部での議論と言うのは実際に表に出てこないことには見えにくいものですが、最近医療業界で目についたのがこの話です。
こうした話自体はかなり前からあったことですが、ようやく具体的なスケジュールまで見えてきたということですね。

手術・投薬方法を特許に 政府検討、法改正の柱に(2009年3月17日日経ネット)

 政府は先端医療の競争力強化に向け、診断や治療などの「手法」も特許として認める方向で検討に入った。現行制度は医薬品や医療機器などの「モノ」だけを特許の対象としてきた。実現すれば医薬品メーカーは新薬の投与方法などでも特許収入を得られるようになり、開発投資の促進効果が期待できる。2011年に予定する特許法の抜本改正の柱に位置付ける。

 政府の知的財産戦略本部の先端医療特許検討委員会(委員長・金沢一郎日本学術会議会長)が医師や医療関連企業、弁理士などと協議に着手した。細胞などを用いた先端医療は「モノ」としての定義が難しい場合があり、手術方法や薬品を投与する量やタイミング、組み合わせ、部位の違いなどに着目した特許取得が重要になるとみている。

これだけではさすがに良く判らないと思いますから、背景事情を説明するのが少し古いですがこちらのコラムです。
試しに色々と検索してみて興味深いのはこういう推進派の論点というのはどれもこれも非常に似通ったロジックであることなんですが、まずは内容を見ていただきましょう。

第53回「医療関連特許を早急に認めよ」(2004年10月22日ビズプラス)

アメリカが先行する医療関連特許

 ゲノム解読後の生命科学研究の急進展とIT(情報技術)ツールの融合によって、医療現場の技術革新が急速に進んでいる。医師の技量と最新機器や薬剤の効能によって患者はより先進的な医療を受けられる時代になってきたが、大きな課題があった。どこまで特許と認めるかである。

 特許はある一定期間、排他的独占権を認めるため、医療の現場では患者を救済する医療行為と特許技術がぶつかってしまい、命を助ける医療行為でも特許権利があるために行使できないということになりかねない。

 しかし一方で、医療に特許を認めないと技術革新に投資がされず、先進的な研究開発に取り組むことができなくなる。アメリカでは1952年に特許法を改正して広く医療分野に関わる方法を特許と認め、数多くの医療方法特許が成立してきた。アメリカが先端医療技術で常に世界をリードしているのは、この特許事情によることが大きい

 ところが93年に、白内障の手術方法で特許を持っていた人が、医師や病院を特許侵害で訴えた事件が発生した。そこでアメリカは96年に特許法を改正し、人道的立場から「医師などによる医療行為には、原則として特許権を行使することができない」との規定を導入した。
(略)
 これで見るように、アメリカはいわば何でもありであり、欧州は一部の診断技術で特許を認めているが、手術・治療法などはまだ認めていない。日米欧の3極で見ると日本が一番厳しい。これでは、先端医療研究で後れを取るとして、以前から日本でもアメリカ並みに特許を認めてほしいという声が企業や先端研究者らから出ていた。アメリカ並みにしないと、国際競争力は得られないというのが多くの意見である。

専門調査会の意見は出尽くした

 政府の知財戦略本部が昨年7月に策定した「推進計画」でも、「患者が先進的な医療を受けられると同時に、医療水準の向上と医療技術の進歩の促進をする観点から医療関連特許について幅広く検討すべし」(要旨)が盛り込まれた。

 知財戦略本部はこれを受けて、昨年10月「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」(井村裕夫会長)を設置して、10回にわたって論議してきた。外部からの意見聴取も重ねた結果、次の点で方向性が出た。

(1)人道的立場から、医師の行為に関わる技術は特許の対象から除外する。

(2)医療機器の作動方法と医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法は特許として認める。

 この事務局案に対し、企業や研究者の間からは、医師や医療に配慮しすぎた非常に狭い範囲であり、これではアメリカとは対等に競争できないという不満が出ている

 しかし一応、この方向で調査会の結論は集約する方向が見えており、井村会長を除く10人の委員の意見も出尽くし、最近の論議は各委員が同じことを繰り返し主張する堂々巡りである。委員の意見は、医療機器の作動方法を特許の対象とするべきという人が6人、欧州並みに検査方法の一部だけを特許の対象とするべきとする人が2人、特許の悪影響についてなお検討すべきという人と保留した人が各1人である。

 また医薬の新しい効能・効果を発現させる方法を特許として認めるとした委員は6人、反対が2人、なお検討すべしは1人である。

早期に国民の意見を聴く機会を設けるべき

医療特許に待ったをかける代表的意見は、日本医師会を代表する委員であり「特許を認めると排他的独占権が生じるので患者への影響が心配だ。もっと審議するべきだ」との意見を繰り返し主張する。

 しかし、論議は1年間、10回もかけている。このスピード時代に論議の内容に進展なく、単に引き伸ばしに等しい「検討論」に引きずられて渋滞するのは多くの国民の利益に反するものだ。また、国民の福祉を担当する厚生労働省が日本医師会の意見に同調するような態度を見せているが不可解だ。

 さる10月13日に開かれた第10回調査会では、取りまとめ案が審議され、その内容を国民に広く公表して意見や情報(パブリックコメント、以下パブコメ)を得たいという事務局案に対し、一部の委員が時期尚早を強く主張する態度は、引き伸ばし策の何物でもない。事務局はこれまでの審議内容を公表して広く国民の意見を求めるパブコメ公募に踏み切った。

 医療の技術革新の是非は、厚生労働省や日本医師会やそれに同調する一部の人が決めるものではない。企業や医療研究者が主張するように、このままではアメリカに先進技術を根こそぎ特許で囲まれ、先端医療技術で後れを取り、回りまわって日本の医療費の多くの部分がアメリカ企業に吸い上げられるという構図になりかねない。医療関連特許を早急に認めるべきだ。

 不利益をこうむったときの責任は誰が取るのか。国民にツケを回すようなことは許されない。

またここでも国益に反する抵抗勢力、汝の名は医師会ですか(苦笑)。
現在進行中の知的財産戦略本部における「先端医療特許検討委員会」議事録についてはこちらにありますが、例えば特許権を保護することで企業競争力を確保する、あるいは最先端医療の特許を保護することで国際的な開発競争に後れを取らないようにするという相変わらずの話が出てくる。
また既存薬であっても投与法などで特許が取れるということであればメーカーも開発費用を回収しやすくなるといった話もあって、具体的な例としては服用後に色々と面倒の多かった骨粗鬆症治療薬を毎日飲む方法から週一回投与に改めた例などが出てきます。
このあたりの検討は既に数年前から繰り返されている議論で、例えば資料の一つとして「医療特許は患者を救う!」などという素晴らしいバラ色の未来絵図もあって是非参照いただければと思いますが、検討している主体が知的財産戦略本部であるところからも明らかなように話の流れとしてあくまで特許を取る側主体での議論であるという点には留意下さい。

しかしながら当然こうした医療特許取得が実現すれば問題もあるわけで、例えば第五回などを見てみますとこういう議論が出てきます。

第5回 先端医療特許検討委員会 議事録(2009年3月2日)

○羽生田委員 やはり負の部分は今、本田委員が言われた金銭的な患者さんの負担というのは非常に大きいと思うんですね。これはいわゆる特許を取った時に、簡単に言うと後発品ができないということになりますので、そういった意味では価格が下がりにくくなるというのは当然ありますから、その面だけから言うと、患者さんの負担はそのまま大きいままでいる時間が長いということは言えると思います。ただ、逆に今、本田委員も言われたように、研究費がその分から出ていくということももちろん大事なので、その辺裏表がかなりあると思うんですけれども、患者さんにとっては金銭的な負担というものは、大きな負の問題だろうというふうに思っております。

○金澤委員長 ありがとうございました。
 佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員 薬剤の場合には、物質特許が認められた時にも、価格の問題が問題になったんですね。医薬が独占されると、当然価格高騰につながるということで、その時に議論されたのは、特許法上、公共の裁定実施権というのがありまして、公共上必要なものについては国が裁定で実施権を他人に与えることができるという制度が特許法上担保されていると。だから、もしそういうことが公共的に必要であれば、裁定実施権を使えば問題を対処できるのではないかという議論が前回もされたということが一つと。
 それから、もう一つは前回の専門調査会の時にも、物質特許の時に議論された今のような問題点について、あれから十何年たってからの話で、十何年間の間に物質特許を認めて、医薬を特許化することによってどういう弊害が出たのだということをアンケート調査をしたら、実際には薬価も上がってないし、そういう弊害も出てなかったという結果が出たと。ただ、それだから即医療行為を特許にしてもいいという話ではないということで、前回は見送りになったというふうに覚えております。

企業権益確保のために特許を認めるというのであれば当然その分は納入価格へ転嫁されて医療費増大に貢献することになるかと思いますが、そのあたり政府が推進している医療費抑制政策と絡めて誰がその分泥をかぶるのかという点にも注目されますよね。
あるいは上記のコラム中でもアメリカでの特許訴訟の話が出ていますが、これについても既に類似の話が国内でも発生しているようです。

商標と治療手技(2008年11月11日All About プロファイル)

Q.商標と治療手技

こんにちは。
今、歯科業界でとある治療法について問題が起きています。仮にその療法をAとし、その治療法の開発者をTとし話進めます

TはAという治療法についてホームページで公開し、専門書、手技DVD、手技にもちる機材等を一般歯科医にもひろめていました。

昨年、その治療法の名称を商標登録したため、勝手に使わないでくれといった内容をホームページや封書にて警告してきました。

このAという治療法はTVなどでかなり誇大な表現をし、世間に広まっています。(実際TV放映の後などは、電話での質問が増えます)
ですからすでに多くの歯科医がこれを基礎とし、日々研究しています。

このような場合、商標登録者の意見を聞き、自院のホームページから「A治療法しています」などの関連文章は削除しなければいけないのでしょうか??

A.対応策

ご回答いたします。
河野特許事務所弁理士 河野 英仁

治療法についての名称を削除すべきと考えます。

T氏はA治療法について商標登録を受けており、これを許可なくHP等で使用することは商標権侵害となります。

対応策としては、T氏から商標の使用許諾を得ることが挙げられます。この場合、一定の対価を支払う必要があるでしょう。

その他、A治療法とは異なる名称をお考え頂き、その名称を同様に普及させることも一つの手です。その場合、商標登録出願しておくことも一つの手です。逆に広く第3者の自由な使用を希望する場合は、商標登録出願は不要です。

技術立国を目指す日本は基本的に知的財産権保護にも熱心であるべきで、この件に関しても総論反対という人はそうそういないんじゃないかとは思いますね。
実際問題として国内医療分野においても特許権を認めていかないことには企業権益以前に遠からず国外特許にがんじがらめになりかねないという危惧も濃厚な時代であるわけですから、最終的には認めるか認めないかではなくどこまで認めるかの話となることでしょう。
しかしながらその議論の推進力として患者である国民の利益が侵害される!けしからん話じゃないか!といった話を持ってくるのであれば、では最先端医療の法的権益が保護されているアメリカで国民が広くその恩恵を被っているのですか?安上がりに素晴らしい医療を享受しているのですか?という話もしなければフェアではないわけですよね。

医療を受ける金がないから仕方なく資金援助を受けられる先端医療の実験台になりますという患者層が一定存在しているアメリカでの話を、国民皆保険制度で全員に平等な医療がタテマエの日本にそのまま適用できると考えているとはまさか思えませんが、そうとも捉えかねないミスリードを行っているかに見えるのは何かしら裏の意図があるからなのか?
とりあえず容易に予想できる今後の話の流れとしては先端医療研究開発推進のためという名目での混合診療導入ということになってくるんだと思うのですが、まさか知的エリート数多の政府官僚の皆さん方がそんな安い上がり手で満足するとも思えないんですがね…

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2009年3月23日 (月)

岩手県立病院再編問題、ついに無床化決定か?!

岩手県立病院の再編計画を巡って県下自治体から反対の声が続いていたり、県議会が混乱したりしていることは前回にもお伝えした通りですが、その一方で現場の状況もなお一層厳しいものとなってきています。
ただでさえ不足している県立病院のスタッフがさらに減少しているというニュースから紹介してみましょう。

常勤医減員12機関 27の県立病院・診療センター /岩手(2009年3月13日岩手日報)

 常勤医不足が深刻化している県立22病院と5地域診療センターのうち、12医療機関が退職や異動する常勤医の補充がなければ2009年度からの診療への影響を懸念していることが、岩手日報社の調べで分かった。中には病院の要となる内科医が不在に陥りそうな病院もある。県立病院は常勤医の不足で診療科が休診になったり、ほかの病院からの応援診療に依存するケースもあるため、地域の病院や開業医との「病診連携」など、地域一体となった取り組みも必要になりそうだ。

 年度途中での退職も含め常勤医が減るのは10病院、2診療センター。このうち病院は▽異動のため常勤内科医が不在となる山田病院▽2人が退職し常勤内科医が1人になる千厩病院▽20人前後が退職し常勤医の補充見込みが10人程度の中央病院-など。

岩手県の場合広い県土に多数の公立病院が分散配置され地域医療を支えているといういささか特殊な状況がありますが、それだけに公立病院をどうするかという話は県の医療をどうするかという話にも直結してきます。
県下の公立病院全体での医療資源も先細りの一方ですから、当然ながら今まで以上に医療資源を効率よく、無駄なく活用していかなければ県全体の医療が崩壊しかねない状況になってきているわけです。
県立病院再編問題ではともすれば県議会での喧噪や地域住民の無床化反対論といった声の大きな人たちの言葉ばかりが流布されているところもありますが、実際に崩壊が進んでいる医療現場がどういうことになっているのかを直視しなければまともな改革など行えるはずがないですよね。
朝日新聞の連載「地域医療はいま」の第一回からそんな現場の声を拾い上げてみましょう。

地域医療はいま 1 勤務医の激務 /岩手(2009年03月19日朝日新聞)

 「きょうは九戸で泊まりだから」。2月26日午後5時半、県立二戸病院の副院長、佐藤昌之医師(53)はそう断り、二つ目の打ち合わせをキャンセルして慌ただしく会議室を出た。白衣を脱いで自家用車のハンドルを握る。向かった先は九戸地域診療センター。二戸病院から約20キロ、30分間の道のりだ。

    ◇

 二戸病院には佐藤さんを含め4人の産婦人科医がいる。この日は木曜日、佐藤さんは「病棟当番」。午前8時半からの外来診察を1時間ほどで切り上げ、約40人の入院患者を一人で受け持った。

 慌ただしくなったのは、午後から。午後2時半から30分ほどかけて卵巣がんの患者に抗がん剤を注射。直後、切迫早産の患者から「破水したかもしれない」との訴えが飛び込んだ。検査し、「5時半ごろにもう一度チェックして」とカルテにペンを走らせ、看護師に指示を出す。会議まであと25分。出席を促す携帯電話の着信音にせかされながら駆け足で25人を回診した。

    ◇

 県立病院の新しい経営計画で無床化が決まった九戸地域診療センター(19床)。常勤医1人のセンターの夜間当直を支えるのは、佐藤さんら二戸病院からの応援医師たちだ。入院患者の体調急変と夜間の救急外来に備え、副院長や診療科長クラスのベテランが毎夜、交代で泊まり勤務に入る。夜間は医師1人、看護師2人の体制だ。

 「九戸で泊まること自体が大きな負担なわけではない」と佐藤さんは言う。「心配なのは二戸病院。九戸の当直に人を出すことで、全体の負担が増えてしまう

 医師不足がひときわ厳しい産婦人科では、他の診療科に先駆けて08年度から医師の集約化が始まった。県北は、二戸病院の4人に県立久慈病院の1人を加えた5人で、すべてのお産を診る。二戸には、久慈からもリスクの高い妊婦が運ばれてくる。

 急な出産などに対応するため、二戸病院の産婦人科は毎夜、交互に「お産当番」を組む。呼び出しに備え、病院にすぐ駆け付けられる範囲にいる必要がある。九戸で当直応援が入ったこの週、佐藤さんはお産当番から外れ、別の医師が入った。

 副院長でもあるベテランの佐藤さんが盛岡の自宅に帰れるのは月に1、2度だけ。そして若手ほど、勤務状況は厳しくなる。

    ◇

 常勤医30人の二戸病院が一戸、軽米の2病院と九戸地域診療センターに出す診療応援の回数は年800回。県立中央病院(盛岡市)に次いで多く、一人あたりの応援回数は県内最多だ。

 二戸病院の佐藤元昭院長は「医師不足による過剰負担は地域診療センターでなく、基幹病院で起きている」と言う。地域診療センターは人も機材も乏しく、重症の救急患者を受け入れる力はない。九戸村で出動する救急車の9割が、二戸病院に患者を運ぶ。「そのためにも、二戸でしっかりとした受け入れ態勢をつくりたい」と無床化の必要性を訴える。

 副院長の佐藤さんは九戸で当直を終えた金曜日の朝、応援のためにそのまま久慈病院へと向かった。日曜日までの3日間、久慈地域のお産は佐藤さんが責任を負う。働きづめのまま、月曜から再び二戸病院での勤務が待っている。

現場の医師はなにも田舎勤務が嫌だと言っているわけではないことに留意しておく必要があるでしょう。
一方では基幹病院での激務がある現状で、そこから不足している人手を割いて僻地へ応援当直に派遣されているという現状がある。
仕事もないのに馬鹿馬鹿しいとか肉体的にきついとか言う話も当然ありますが、それ以上に基幹病院すらも共倒れになってしまったら患者を送る先が消えてしまう、そうなってしまったら地元に病院があったところでどうしようもないでしょう?ということを言っているわけです。

近くに病院があれば何かあっても安心だとか、遠くに通わされるのは不便だとか、今やそういうレベルの話をしていられるような状況にないということを地域住民も県行政の当事者も理解してもらわないといけない状況に来ているのに県議会は相変わらず迷走しているわけで、いい加減にしてくれという声がここに来て現場から噴出してきているようです。

病院長「現場は限界」 無床化、4月実施訴え /岩手(2009年3月18日岩手日報)

 県立病院の代表病院長会議は17日、盛岡市内で開かれた。県立5地域診療センターの入院ベッドを廃止する無床化を盛り込んだ県医療局の新経営計画が県議会で迷走を続ける中、出席した病院長らは「過酷な勤務を続ける医師の現状を知らなすぎる」と勤務医の叫びを相次いで代弁、計画の4月実施を強く求めた。これまで、どちらかと言えば沈黙を守ってきた現場の医師らがこうした声を上げるのは異例。地域医療の崩壊が進む一方、県議会などで理解が進まない現状に、危機感をあらわにした形だ。

 会議には、広域基幹病院などの9病院長、田村均次医療局長ら約20人が出席。田村局長は「無床化は一刻の猶予もならないことを繰り返し説明してきたが、医師不足の現状は理解されていない。県議会では関連する当初予算案の修正動議も出された。25日の最終本会議まで結論が見えない」と報告した。

無床診療所計画案:「机上の空論」 代表病院長会議で猛反発 /岩手

◇4月から無床化求め

 県立病院・地域診療センターの無床化問題で、県議会予算特別委員会で編成組み替え動議が可決された。しかし、17日に盛岡市内で開かれた代表病院長会議では、昨年から続く地元民や議会の無床化議論に対し、県立病院長から「やり方が拙速だと批判するが、机上の空論だ」などと4月からの無床化を求めて猛反発する声が上がった。

 会議では、田村均次医療局長が予算委員会でのやり取りを説明したうえで、「25日の本会議まで結論は出ない」と話した。

 これに対し、ある病院長は「無床化したら医師の負担ははっきり軽減される」と断言。基幹病院の医師が診療センターへの当直派遣をやりくりする現状を挙げ、「無床化になれば、基幹病院の仕事ができる。現場をあまりにも知らなさ過ぎる」と声を荒らげた。

 別の院長は「医師不足は深刻。ベッドを残しても誰がカバーするか決まっていない。このままでは残っている医者もモチベーションが下がる」と指摘。ほかにも「当直の応援に入る若い医師は、(することがなく)行って寝て帰ってくる。地域のためというモチベーションもないままに何百回と当直している」と訴えた。

ここまでストレートなことを言われれば普通の人間であれば何かしら考えるところもあるだろうと思われるような話ですが、先に無床化を前提にした送迎バスの予算を蹴った県議会でもようやく流れが変わりつつあるようです。
四月まで残すところもあと僅かという状況になってようやくというのは今さらという感じもしますが、決断すべき人間が何一つ決断もしないまま現場により一層頑張ってもらいましょうなんて馬鹿げた話になるよりはよほどマトモではあると思いますね。

県病院無床化 動議可決 /岩手(2009年3月17日読売新聞)

予算特別委 歩みより模索へ

 県議会は16日、予算特別委員会を開き、県立6医療施設の無床化に関する2009年度予算案の集中審議を行った。無床化に反対する政和社民、自民クラブなどは、予算案の一部組み替えを求め、19日までに県側に可否を問う動議を提出し、賛成多数で可決された。

 動議は、無床化の4月実施延期の検討を求める一方、無床化に伴う支援策に関する予算を増額するよう要求。採決では、両会派など26議員が賛成した。

 動議を提出したのは、両会派のほか、共産、公明、無所属の5人。動議で予算増額を求めているのは、〈1〉市町村や住民代表を含めた協議機関の設置〈2〉地域からの提案の再検討と空きスペースの早期活用〈3〉医師の勤務環境の改善――の3点。

 賛成した26議員は、これまで無床化に反対し、今月6日には無床化関連予算案を否決した。だが、今回の動議は、入院ベッドの維持を前提にした予算案の大がかりな修正を求めたものではない。大幅な修正案では、県側が受け入れる可能性が低い上、「2009年度予算案自体の否決は考えていない」(自民県議)ためだ。無床化の延期についても「検討」の文言を添えており、歩み寄りの姿勢を示している

 一方の県側も、この日の審議で、地域医療について住民を交えて話し合う2次医療圏ごとの協議機関を設置する考えを表明するなど、19日の委員会採決に向け、落としどころを模索する動きを見せている。動議について、田村均医療局長は「コメントできない」とだけ述べた。

無床診療所計画案:無床化実施を容認 知事、補正案提出受け--県議会 /岩手(2009年3月20日毎日新聞)

 県立病院・地域診療センターの病床休止(無床化)問題を巡り、県は19日、修正動議で求められていた、地域との協議機関設置費用などを盛り込んだ来年度一般会計補正予算案などを県議会に提出した。予算案提出を受け、野党会派の大半は態度を軟化。同日の予算特別委では、無床化を前提とした来年度の一般会計予算案と県立病院等事業会計予算案が、「政策決定過程が拙速」と指摘する付帯意見を付けて賛成多数で可決された。無床化4月実施は事実上、容認された形だ。

 ◇「大局的判断で」賛成議員

 無床化対策を計上した来年度一般会計予算案などの見直しを求める動議を予算特別委が16日に可決、達増拓也知事の対応が注目されていた。補正予算案は23日からの常任委員会で審議する。

 19日提出された一般会計補正予算案では、地域医療に関する懇談会運営費の598万円など計約908万円を計上。県立病院等事業会計補正予算案は、無床化後の空きスペースを活用策を公募する約310万円を盛り込んだ。勤務医の退職防止を図る労働環境の整備や医師と協議し、追って補正予算などで対策を進めるとした。

 19日の予算特別委に出席した達増知事は「医師不足が危機的状況で、医療体制の崩壊を招きかねない」と従来通り理解を求めた。

 動議に賛成した自民クラブの千葉伝代表は「知事の回答で地域との協議や医師の勤務環境改善などが担保された」と説明。政和・社民クの田村誠代表は「一刻の猶予もない事業会計であり、大局的判断で賛成せざるを得なかった」と述べた。一方、民主・県民会議の佐々木順一代表は「可決され、勤務医の離職を防ぎ、県立病院の体制が守られる」と歓迎した。

 無床化問題を巡っては、4月実施の「凍結」を求めてきた県議も「予算案の否決は混乱を招くだけ」などと、態度を軟化。第1会派の民主・県民会議を除く野党4会派と無所属の5議員が提出した動議では「無床化の延期を検討」を求めるよう表現を抑えていた。

 動議では、(1)協議機関設置(2)無床化後の空きスペースを活用する医療・福祉関係者の公募(3)勤務医の退職防止--を進めるため関連予算を増額、来年度の一般会計予算案や県立病院等事業会計予算案を見直すよう求めていた。

来月無床化確実 県議会特別委新年度予算案を可決 /岩手(2009年3月20日読売新聞)

 県議会予算特別委員会は19日、県立6医療施設の入院ベッド廃止を前提にした新年度一般会計及び県立病院等事業会計の新年度予算案を賛成多数で可決した。これにより、沼宮内病院を除く5地域診療センターの入院ベッドは4月から廃止されることが確実になった。採決では、斉藤信議員(共産)が反対したほかは全員が賛成した。新年度予算案は25日の本会議で採決され、可決される見通し。
(略)

■住民へ配慮欠く

昨年11月の計画案公表以来、論争を巻き起こしてきた無床化問題は、県の計画通りに実施されることがほぼ決まった

 この問題を巡っては、地元住民との間でも、県議会でも、終始、激しい対立が続いた。その最大の要因となったのが、県側の初動対応のまずさにあった。計画案公表から実施までの期間があまりに短かったことに加え、県内の医師不足が危機的な状況にあることを強調するあまり、地元住民への配慮を欠いていたと言わざるを得ない。もっと早く、丁寧に説明していれば、展開は違っていただろう。

 一方、自民、政和社民両クラブなど野党側は当初、無床化計画の「撤回」を主張したが、その後、「凍結」、「延期の検討」へと態度を軟化させていった。県側が無床化を前提にした人事を公表するなど、既成事実を積み上げていくのに対し、野党側は病院の運営自体をマヒさせかねない新年度予算案を否決することはできず、押し切られた形だ。

 県民の生活に直接かかわる深刻な問題だけに、県側には今後、今回の教訓を踏まえた対応を期待したい。

県側の対応にも幾らでも突っ込み所はあるんだと思いますが、それ以前に現場が危機的な状況に追い込まれていることは昨日今日の話でもないのに関係者一同が今まで知らぬ存ぜぬという態度で無視を決め込んでいたことや、そうした状況を知った後も何ら県民への啓蒙に努めるでもなく県批判に終始した自称社会の木鐸が存在していたことなどもそれ以上に批判されるべきだと思いますけれどもね。
社会の木鐸と言えばこういう記事とも言えぬ独語が片隅にひっそりと掲載されていました。

散歩みち:「岩手」に鼓舞された私 /岩手(2009年3月22日毎日新聞)

 「県議会が早朝4時半まで続いたので、そのまま神子田の朝市に行ってラーメンを食べた」。県外の知人に何気なく話したところ、絶句された。「県議会が朝まで続く? あり得ない」

 県立病院・地域診療センターの無床化問題で、6日に始まった議会は日付をまたいで約15時間に及んだ。他県の常識では理解し難いかもしれない。「岩手県議会の無床化問題に対する真摯(しんし)な姿勢を見れば大いにあり得る話だ」と返しつつ、内心その岩手に住んでいる自分が誇らしかった。

朝まで議論する岩手県議会の真摯な姿勢を誇るのも結構ですが、日常的にそれ以上の激務を行い長年にわたって県の医療を支えてきた声なき医療従事者に対してもほんの少しでも敬意を払っていたなら、あるいは今のような状況はなかったのかも知れませんよね。
岩手県の医療が最終的にどうなっていくのかはもう少し経過を見ていかなければならないと思いますが、現場で身を削りながら頑張っている人間に対して報いない社会は結局のところ現場から支持されなくなっていくだろうということだけは確かなんだと思います。

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2009年3月22日 (日)

今日のぐり「骨付鶏一鶴 土器川店」

近ごろ世間ではゆとり世代の恐怖なるものが盛んに言われているんだそうです。
「個性を重視し、自ら学び自ら考える」ゆとり教育なるものを受けた第一世代が1987年生まれに相当すると言いますから、ちょうど今大学を出て社会人となってくる年代ですが、既にその弊害が言われて見直しが始まっていると言う教育を受けてきた世代ですから企業の方でも色々と対応に苦慮しているのだとか。
しかし世間ではおもしろおかしく「さすがゆとり」なんてトンデモ世代みたいな言い方をしますが、実は遠くアメリカあたりでも似たような話は幾らでもあるらしいというニュースがこちらです。

アライグマに襲われて… 米国人の5人に1人は週イチで遅刻 - 米調査(2009年3月3日マイコミジャーナル)
オンライン求人サイトを運営する米CareerBuilder.comがこのほど行った調査で、アメリカ人の5人に1人が少なくとも週1回は会社に遅刻していることがわかった。

同調査は、調査会社のHarris Interactiveに委託し、2008年11月12日から12月1日にかけて、全米の18歳以上の雇用主および人事専門家3,259人とフルタイム雇用労働者8,038人を対象に実施。その結果、「最低でも週に1度遅刻している」と回答した労働者の割合は前年の15%から20%に上昇した。さらに「週に最低でも2回遅刻する」と回答した割合は12%にのぼった。

また、遅刻の理由で最も多いのは「交通渋滞」(33%)。次いで24%が「睡眠不足」、10%が「子どもを学校に行かせる準備や世話のため」と回答しているほか、「公共交通機関」「着ていく服で悩む」「ペットの世話」などが主な理由として挙げられている。

一方、雇用主の30%が遅刻が原因で従業員を解雇したことがあると回答。CareerBuilder.comの人材開発部門のバイスプレジデントの Rosemary Haefner氏は「従業員は遅刻に関する自社の就業規定を把握し、マネージャとオープンにコミュニケーションが取れるようにしておかなければならない。雇用主はあらゆる言い訳に通じているので、正直が最善の策だ」とコメントしている。

その他雇用主が回答した「最低な遅刻の言い訳」には、次のようなものが挙げられた。

    * 暖房の電源が切れたので、ペットのヘビを暖めるため、家にいなければならなかった
    * 夫が仕事に出掛ける前に私の鍵を隠すことが愉快だと思っている
    * 玄関を出るとき、蜘蛛の巣に引っかかってしまったったので、家に戻ってシャワーを浴びなければならなかった
    * 息子がトランクに閉じ込めた
    * クルマの左折方向指示器が壊れたので会社までの道のりをすべて右折でたどり着かなければならなかった
    * 救急車から担架が落ちて交通渋滞が起きた
    * アライグマの襲撃に遭い、狂犬病に感染していないかを検査するため病院に立ち寄らなければならなかった
    * 定刻に出社したら皆と同じだと感じてしまう
    * 父親が起こしてくれなかったから
    * ウッドチャック(リス科の動物、マーモット)が自転車のタイヤに噛み付いてパンクしてしまった
    * 通勤経路が昨夜の雨で流されてしまった
    * ビンゴゲームに行かなければならなかった

いやまあ、その、やはり何事にも説得力というものはある程度要求されてしかるべきなんじゃないかとは思うんですけどね…
しかし思うのはこういう言い訳が通じるだろうと考えてしまう、そういうキャラクターな人たちは確実に増えてきているんじゃないかということです。

昔はこの手の「ちょっと風変わり」という人たちは孤立した状態で周囲から矯正されちゃっていたんでしょうが、近ごろではネットなどでのコミュニケーションがありますから妙なところで多数派意識が形成されちゃうのか、あまり引け目も感じずに社会に出てきているように思えます。
ま、端から見ている分には面白いなあで済む話なんですが、実際に自分が関わることになってきますとね…

今日のぐり「骨付鶏一鶴 土器川店」

四国は香川県丸亀市の名物に「骨付き鶏」なるものがあります。
骨付きの鶏もも肉を塩やスパイスで味付けして焼いたものですが、近ごろでは市を挙げて名物として売り出し中であるとか。
中でも元祖とも言われるのがかれこれ半世紀の歴史を誇る「一鶴」なんだそうですが、この土器川支店に行ってみました。

昼飯時に到着したのですが、ここは川沿いのかなり大きな店構えながら広い店内はすでにけっこう埋まっていて、なおも後から後からお客がやってくるという状態でした。
店内でも一番奥の座敷に案内されましたが、ここも待っている間に埋まってしまいましたから結構繁盛しているのでしょう。
ちなみにこの手の繁盛店で隅っこの席と言うとしばしば目が行き届かず放置プレー状態に陥りがちなものですが、幸いここの店はけっこう店員教育はしっかりしているようでそのあたりは支障ない感じでした。
もっとも少しばかり過剰気味なほどスタッフを配置しているという贅沢なマンパワーの使い方のせいもありそうなんですが、こういうチェーン展開もするような繁盛店で儲けた分を十分なスタッフ雇用という形で地域と顧客双方に還元するのは悪いことじゃないと思いますね。

結構サイドメニューもいろいろとあるようなのですが、ここではごく無難に「おやどり」と「とりめし」を頼んで見ました。
ちなみに柔らかい「ひなどり」と以前に食べ比べてみて、自分的には硬くても「おやどり」の方が味が深くていいかなと思っているですが、やはり相変わらず噛み応えはけっこうあります(控えめな表現)。
このももには一応包丁でカットが入っているんですが、熱変性で組織が硬くなっているんですから骨と軟部組織の間を剥離するような感じで割を入れておいていただいた方がありがたかったかなと言う気もしますかね(←軟弱者)。
スパイシーな味付けは店ごとの秘伝なんでしょうが、手にした鶏をがぶりとやりますと少し強めかなという塩梅の塩加減がちょうど肉の味を引き出している感じで、付け合わせの生キャベツを囓って塩気と脂気を中和しながら食べるといい具合です。

単品メニューとしては控えめな分量のとりめしは一転してあっさりと食べられる味で、肉と組み合わせると量的にもちょうど良い感じなんですが、上に乗っている紅ショウガは全部一緒にして食べてしまうと少しきつかったですかね。
わざわざ「熱いですから気をつけてください」と出されるスープは鶏の味から濃いものを想像していましたら思いのほかさっぱりした味わいで、これくらい熱々だと口の中の脂をキレイに流してくれてありがたい。
少しばかり気になった点としては付け合わせのお新香ですが、いつ切ったのか知りませんがこの干からびようはちょっと半端ないような…

この店の場合サイドメニューもある程度そろえてあるんですが、一人一本だと鶏自体のボリュームも結構ありますからそうそう色々と試すという気にならないのは少し残念なところでしょうか。
あとは元々の伝統みたいなものもあるのでしょうが、今の店構えや価格帯からしても特に安さで勝負という店でもないんですから、そろそろこの昭和っぽい金属皿は卒業してもいいんじゃないかなという気がしますがどうなんでしょう。
こういう地域性豊かな料理の場合はやはり店毎の味の違いを食べ比べて回るのも楽しいんじゃないかなという気がした一日ではありました。

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