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2007年11月23日号
人物風土記 逗子・葉山版一覧へ戻る
喜びも悲しみも、ともに。
児童養護施設 幸保愛児園園長
金子 エスター 聖美さん
逗子市在住 54歳
 ○…2歳から18歳まで50人が暮らす葉山町一色の幸保愛児園。隣接する小規模児童養護施設「Kobo Cottage」にも6人が生活している。親と一緒に生活できない子どもたちを、25人の職員とともに、家庭に代わって養育している。「家庭に代わって−」と言葉にするのは容易いが、子どもたちの状況は千差万別。親であれば誰もがみな生涯抱える迷い・葛藤を、何百倍も体験しなければならない。激闘の日々だ。

 ○…自身が生まれた年に、母親が創立。気づけば、周囲には何十人もの“兄弟姉妹”がいた。その環境にあって、幼い頃から多くの矛盾を抱えてきたのは当然のこと。しかし、それ以上に、みな兄弟なのだと身をもって教えてくれた両親を、心から誇りに感じている。

 ○…「ひとつでも多くの誇りをもたせてあげたい」と、約20年前に職員と園児によるスウィングバンドを結成した。音楽好きの園児が進学し、吹奏楽部への入部を希望したが、楽器を持っていないことを理由に断られたことがきっかけだった。「本当にゼロからよ。まずはマウスピースをくわえて、プーッと吹きながら園内を歩きまわったの。すると後ろから子どもたちがついてきて、『僕にも吹かせて!』『私もやってみたい!』って」。少しずつ楽器を購入。夢中になって特訓した。今では、地域行事をはじめさまざまな舞台に立つまでに成長。そうした数々の喜びもまた、園内には満ちあふれている。

 ○…「卒園する子どもたちの背中を見送るのは本当につらい」と、声をしぼり出すように語る。自身の子どもを奪われたかのような辛さだという。子どもたちは、単に家庭の問題だけではなく、社会的な問題が複雑に絡み合い、地域社会からも孤立を強いられた結果としてやってくる。卒園後、子どもたちが温もりある家庭を築いていくには、地域が心一つに、子どもの成長を見守ることが大切だと訴える。「人は、確かな絆によって悲哀や困難に打ち勝てるはずだから」。瞳には、そんな確信が光っていた。
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