当番組ではこれまで、公務員が勤務時間中に職場を抜け出す、いわゆる中抜けの実態を繰り返し指摘してきた。その後の取材で、この問題は、多くの自治体に共通した根深い問題であることがわかった。
取材:MBS(毎日放送)
2008年2月、我々の取材で明らかになった京都市の中抜け問題。京都市職員が勤務中に職場を抜け出し、車で向かった先とは…
○記者レポート
「あ、女の人を(車に)乗せた。」「パチンコ店でしょうか、(車が)パチンコ店に入った。」
問題の京都市職員に記者が直撃した。
○記者「中抜けしてますよね?」
○職員「してませんって。」
当初、取材に対してシラを切っていた職員だが、記者のある一言で態度が一転した。
○記者「パチンコした後 職場に戻って来てるじゃないですか?打ってたのは『スーパー海物語in沖縄』ですわ。」
○職員「in沖縄?あー『沖縄物語』。」
○記者「いつもそれ打ってるじゃないですか?」
○職員「そこまでつけてたん、ずーっと?そら申し訳ありませんわ。」
結局、問題の職員2人には懲戒免職と停職3ヶ月の処分が下された。
○門川大作京都市長(2008年2月、初登庁のあいさつ)
「過去の積年の膿を出している途中とはいえ、不祥事は根絶しなければなりません。」
就任初日に職員の綱紀粛正を明言した門川市長だが、果たしてその言葉は守られているのだろうか?
5月14日、我々は、中抜けが繰り返されていた京都市上下水道局配水事務所(京都・右京区)を再び訪れた。3ヶ月前には駐車場にずらりと並んでいた職員の自家用車がすっかりなくなっていた。
実は、中抜けの再発防止策としてマイカー通勤が原則禁止にされたのだ。しかし別の職場では…
○京都市役所(3月19日)
「本日付けで合計4件、5名の者に懲戒処分を行うとともに、4名の職員と管理監督者2名に対し懲戒処分を行いました。」
新市長の就任3週間後、再び職員の処分が発表された。酒気帯び運転などに加え、またもや中抜けが発覚した。
こともあろうか環境局の所長が、勤務中に高級車で職場を抜け出しゴルフ練習場通いを繰り返していたという。所長は懲戒免職となったが、職場は問題を見抜けなかったのか…
○京都市環境局 草川健治局長(当時の上司)
「不在時にも連絡をすればすぐに戻ってくるという状況ですので、私自身は(問題の職員が)業務についていると認識していた。」
京都市が頭を悩ます問題はこれだけではない。「親族が死んだ」とウソをついてズル休みする職員が相次いでいるのだ。
2002年からこれまでに53人の職員が、不正に忌引休暇をとっていたとして処分されている。
中には、わずか2年半の間に叔父と叔母10人が亡くなったことにして、
ウソの忌引を取っていた職員もいた。問題の職員に記者が尋ねると…
○記者「『親族が亡くなった』とウソをついて休暇をとってますよね?」
○問題の職員「わかりません」
事態を重く見た京都市は2008年4月に制度を改正し、忌引を認める際には、亡くなったとされる親族との続柄や告別式場の確認が必要となった。
京都市民の声を聞いてみた。
○男性市民「恥ずかしいと思いますよ 大人として。今さらって感じ。」
○女性市民「常識じゃありませんか?常識を今から教え込まないといけないかと思うとバカバカしい。」
○京都市監察室 松本和加子監察課長
「公務員は地方公務員法上、身分が安定していて、そう簡単にクビにはならないだろう、という甘い認識が職員の中にあったのではないか。」
呆れるばかりの、ズサンな勤務実態。しかも、問題は京都市に限ったことではなかった。
○大阪市による記者会見(5月13日)
「大変申し訳なく深くおわび申し上げます。」
大阪市でも、ケガのリハビリと称して職場を中抜けし、プールに行っていた職員がいたほか、5人の職員がウソの忌引きをとっていたとして、5月13日、処分された。
5月16日には大阪府四條畷市でも、人権政策推進課の幹部職員が勤務中にホテルで女性と会っていたことが明らかになった。
しかもこの幹部職員は、四條畷市の調査によると、裏金もつくっていたという。
○記者「疑惑の件について、お伺いしたいんですけど。」
○幹部「今、しゃべることを禁じられてますんで。」
○記者「中抜けはないんですか?裏金つくったりとかそういう事実は?」
○幹部「ありません。」
繰り返される公務員の不祥事。公僕のモラルとは一体、いかほどのものなのか?病巣は根深い。