重症患者を夜間や休日に受け入れる広島市の二次救急病院の輪番制が、崩壊の危機にさらされている。当直医師は日中の診察や手術に引き続く長時間勤務を強いられ、軽症患者の増加への対応に追われる。二次救急体制の維持の「瀬戸際」に立つ現場を訪ねた。
腕を骨折した幼児の診察中に、看護師が新たな救急車の到着を告げた。午後8時すぎのシムラ病院(中区舟入町)。外科部長の井上秀樹医師(43)は、エックス線撮影を待つよう母親に言い残して診察室を出る。待合室に寄って、別の親子に「もうちょっと待ってね」。搬送されてきた女性が待つ救急処置室へ急いだ。
午後6時から翌午前8時までに井上医師が処置した患者は6人。うち5人が午後8時台に集中した。午前2時、腕のしびれを訴える男性からの電話に応えた。井上医師は「来院や救急隊や患者からの電話が断続的にあり、ほとんど仮眠できない」と明かす。
多忙を理由に日中に受診せず、輪番病院に来る患者が目立つ。いわゆる「コンビニ受診」が二次救急の患者数を押し上げている。さらに、現場では急患より先に診察を要求したり、必要のない過度な検査を求めたりする患者からの理不尽なクレームも目立つという。
輪番病院の経営者たちは小規模な医院などが交代で時間外に軽症患者対応するシステムの整備を求めている。行政、医療機関、市民が協力し、医師がベストな状態で診療できる体制づくりが急務となっている。
【写真説明】腕を骨折して夜間に訪れた子どもを診察する井上医師(奥左端)
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