キノコとの最終戦争後 人類はなんだかんだで生き残っていた 僅かに残った人類は 文明社会の復興を目指し再び歩み始めようとしていた 諏訪 楡(すわ にれ)は、とある共同体の寺院で孤児として育った。 労働と祈りの日々。 辛い思いをすることもあるが、いい子にしてさえいればなんとなく全てをやり過ごせるはず。 それが欺瞞でしかないことを、本当は知っていた──。 ある日、共同体を野盗の集団が襲う。 「水と食料とガソリンをよこせ!」 バギーで大挙してきたのは野生化したキノコ達だった。 蹂躙される共同体。楡はその時確信した。神も、仏も、在りはしないのだと。 そしてついに、寺院にも襲撃者の魔の手が伸びる。砲撃を受け炎上する寺院。しかしその崩壊のさ中、楡は見た。大戦の慰霊碑「コロナタワー」に亀裂が走り、中から一振りの長大な刀剣が姿を覗かせたのを。 引き寄せられるようにしてその柄を握る楡。その瞬間、かつての英雄達の声が彼女の心に語りかけてきた。 |
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宇宙へ飛び去った始祖の遺した置き土産。 個体として独立した生を持つようになったキノコは、人と同じように物思い、そして死んだ。 かつてほどの力を持たない彼らは取り残された大地で路頭に迷い、人類から迫害を受けた。 彼らが以前とは逆に、人類に淘汰されるのも時間の問題であるように思われた。 黒き呪いの剣を背負い、楡はその強大過ぎる力でキノコ達を駆逐してゆく。 ある時は孤高なる王の、ある時は処女英雄の、またある時は馬頭鬼神の、数多の英霊達の荒ぶる魂が楡に力を与える。 「殺せ、壊せ」 「ブスもモテも皆死刑」 「サーチ・アンド・デストロイ」 ──だが、それでいいのだろうか? 自ら発する暗黒の炎にその身を焼かれながら、楡は思う。 彼らは一体何のために地上に遺されたのだろう。 そして彼女は、キノコの少女シイマと出会う。 「死んじゃえ、鬼畜ヒューマン!」 出会いがしらに腹に果物ナイフを突き立てられる楡。 だが、彼女はシイマを抱きしめて言った。 「ほ、ホラ、怖くないっ!」 |
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