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「新入社員各位、自宅待機を」入社直前、通告相次ぐ

2009年3月31日

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写真学生たちの就職相談をする「学生職業総合支援センター」。内定取り消しなどの相談にも応じる=30日、東京都港区六本木3丁目、遠藤真梨撮影

 4月の入社直前に、内定先の企業から自宅待機や関連会社への転籍を求められたり、内定を辞退するよう迫られたりするケースが相次いでいる。企業は「雇用を維持するための緊急措置」と説明するが、突然の条件変更を突きつけられた学生は、入社するか就職活動を再開するか、揺れている。

 「4月2日以降、自宅待機を願います」。3月下旬、卒業式を終えたばかりの関東地方の私立大生に、内定先の中堅人材会社から封書が届いた。業績悪化で配属先が決まらず、4月1日の入社式の翌日から自宅待機となり、賃金の6割しか支払えないと記してあった。手紙は「入社辞退を希望される方は御連絡を」と結ばれていた。

 この学生は「内定辞退を勧告されたようなもので、納得がいかない」と話す。就職活動を再開したが、新たな就職先は決まっておらず、「自宅待機をしながら活動を続ける」と言い切る。

 別の学生は「やっと内定が出た会社。いまさら就職活動を再開する気にならない。縁があった会社だから、入社してから考えたい」と話す。

 同社によると、内定者約20人のうち配属先が決まっているのは2人だけ。経験のある正社員の自宅待機も増えており、社全体で整理解雇の検討を始めたという。

 採用担当役員は「採用を決めた昨秋の段階では、急激な受注減は予測できなかった」と説明。「自宅待機は、内定取り消しを回避する努力を尽くした結果だ」と話すが、学生にとっては内定段階での条件が大きく変わってしまう。

 技術者派遣大手「シーテック」は3月初旬、新卒内定者250人全員に、初任給が数万円低い関連会社への転籍を求める「転籍同意書」の提出を求めた。すでに1万6千人の正社員のうち4千人の削減を発表している。

 広報担当者は「内定者の派遣先がなかった場合でも雇用を確保するための措置で、最長1年程度を想定している」と話す。ただ、シーテックに籍を残す「出向」ではなく、関連会社と新たに雇用契約を結ぶ「転籍」のため、元の会社に戻れる保証はない。同社は「同意書を出さなくても入社できる」と説明するが、関係者は「転籍しない場合、希望退職や整理解雇の対象になる可能性が高い」とみる。

 文部科学省によると、内定辞退を促されたり、給与や勤務地などの変更を告げられたりした学生は3月1日時点で1052人。各地の大学にはその後も報告が増え続けている。これらの大半は、厚生労働省が発表した3月23日時点の内定取り消し者数1845人には含まれていない。

 合意のうえでの自宅待機や転籍は、「内定取り消し」にはあたらず、行政指導の対象にはならない。内定を取り消すと学生に社名が知られ、次年度以降の採用活動に悪影響が出たり、取り消した学生に補償金を求められたりする可能性がある。こうした事態を避けるための例もあるとみられる。

 厚生労働省若年者雇用対策室は「悪質なケースは撤回するよう指導するが、全体像は把握できていない」という。(小室浩幸)

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