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今日から国家1種。
まずは、アタマの体操。 法律行為の解釈の基準として下記のような考え方がある。 法律行為規定によって当事者の私法関係を規律するためには,法律行為の内 容を確定しなければならない。それには,最初に,当事者が表示行為に付与し た共通の意味を確定し,それが明確でなければ,表示行為によって相手方や社 会一般が当然に理解するであろう客観的意味を確定する。次に,当事者の表示 ないし具体的事情から導くことのできない部分については,慣習,次いで法規 をもって補充し,これでもなお不十分な場合または当事者の表示のままに法的 効果を認めると条理に反すると判断される場合には,条理によって補充的解釈, 修正的解釈を行なう。 民法の規定および上記の考え方に従った解釈として,次の1から5より,正 しいものを選べ。(国1H6) 1、売買契約において,契約書に代金が誤って100万円と記されているときは, たとえ売主と買主が代金は正しくは10万円であると認めている場合でも,代 金は100万円と解釈する。 2、売買契約において,契約書に記された目的物の引渡場所の意味内容について 売主と買主との間に争いがある場合には,その地方の商習慣によって解釈すべ きであり,売主および買主がその慣習に従わない意思を事前に表示していたと しても,その慣習に従って解釈する。 3、家屋の賃貸借契約において,賃借人が家賃を1回でも延滞したときは賃貸人 は無催告で解除できると定められている場合には、賃借人もその条項に拘束さ れるのは当然であるから,その条項を無効と解釈し,または例文的に記しただ けで賃貸人を拘束しないと解釈することは許されない。 4、売買契約において,契約書に記された代金のなかに政府から目的物の所有者 に与えられる補償金が含まれるか否かについて売主と買主との間に争いがあ る場合には,両当事者の間に意思の不一致があるから契約は成立しないと解釈 する。 5、売主と買主との間で花子という名の乳牛の売買契約がなされたが,花子とい う名の乳牛は実は2頭おり,売主は小さいほうの花子,買主は大きいほうの花 子のつもりであった場合には,まず,取引界の実情からして客観的にはどちら であるかを判断すべきであり,直ちに契約不成立と解釈すべきではない。
Yoshihiroさんより、以下の一文が寄せられました。
>話は変わりますが、株主総会の決議取消しの訴えと持分会社の設立の取消しの訴えとで。>は判決の効力が遡及するかどうかに違いが生じています。この理由を自分なりに考えて>みました。 >・株主総会の決議取消し 提訴期間:3ヶ月 >・持分会社の設立の取消し 提訴期間:2年 >から推測して >・株主総会の決議取消し:(最悪でも)過去3ヵ月に起こったことであれば、それを覆し>ても法律関係が錯綜しそうにない。また、会社法831条1項各号の原因を併せて見ると>決議を取り消して事業活動を修正していく必要性が高い。 >・持分会社の設立の取消し:もし効力が遡及するとしたら、(最悪の場合)約2年間の事>業活動そのものを否定することになり法律関係が錯綜してしまう。 >といったところでしょうか。 まず、最後の最後まで機械的記憶を廃除し、ウサギとカメ方式の記憶を完成させようというYoshihiroさんの試みに敬意を表します。 以下は、この点に関する、ぼくの意見です。 持分会社の設立取消しの効果が、遡及しない理由は、Yoshihiroさんのおっしゃるとおりだと思います。 取消しの効果が遡及すれば、それまでの法律関係をすべて不当利得の法理で解決するしかありませんが、それは、かなり困難です。 そこで、設立時の出資から、その後における法人の活動のすべてを遡って無効にするという考え方は採用しなかったのです。 つぎに、株主総会決議の取消しについては、以下のように考えた方が分かりやすいのではないでしょうか? 決議取消しの訴えは、「残りかす」なのです。 新株発行無効、合併無効、組織変更無効、株式交換無効、資本減少無効といった、判決の効果が遡及しては困るような、対外的な影響の大きい重要な会社の行為(もちろん、通常は、株主総会をやっているはず)については、その無効の効果が遡及しないということが明記されています。 そして、その余の、どちらかというと重要度の低い、また、社内的な問題が中心となる「その他の株主総会決議」なるもの(判決の効果が遡及してもかまわない)について、「株主総会決議取消しの訴え」なる類型があると考えてはいかがでしょうか? >また、取消しの効力が遡及するかどうかは民法でも出てきたので(例えば婚姻の取消し>の効果は遡及しない、等)その辺の知識と絡めていろいろ考えてみたいと思います。 婚姻の取消しの効果が遡及しない理由は、記憶法VER3に書いたことと同じと考えられます。 つまり、子の福祉のためです。 子が嫡出子の地位を失うという事態を、民法は避けたいのだと思われます。 最後になりますが、以上に述べたのは、ぼくの意見にすぎません。 ウサギとカメ方式の記憶法は、自分自身で理由を考え、思想を導き出す作業そのものが「2度と忘れることのない」知識を産み出すという点に、もっとも重要な存在理由があります。 ですから、理由が正しいかどうかということは二の次でかまいません。 どんどん大胆に考えてしまってよろしいです。 やっているうちに、考え方がツボにはまってきます。
昨日の答えは以下のとおりです。
答「学校の先生が両方を一度に教えたから」 青→赤が酸性だけ覚えなさいと指導すればよかったのです。 それを、両方一緒に覚えろといいうものだから子供のアタマが混乱するのです。 青→赤が酸性と、覚えておけば、逆はアルカリ性に決まっているから、どちらが出題されても問題に答えられないわけがありません。 さて、以上の原理は、機械的記憶をするときの記憶の省略法として、大人の資格試験にも応用ができます。 たとえば、以下に、会社法上の訴えの提訴期間を挙げます。 今日は、これを覚えてみましょう。 会社設立無効の訴え 会社成立の日から2年 株式の発行の無効 株式発行の効力発生日から6ヶ月(非公開会社では1年) 自己株式の処分の無効 自己株式の処分の効力発生日から6ヶ月(非公開会社では1年) 新株予約権発行の無効 新株予約権発行の効力発生日から6ヶ月(非公開会社では1年) 資本減少の無効 資本減少の効力発生日から6ヶ月 組織変更の無効 組織変更の効力発生日から6ヶ月 吸収合併の無効 吸収合併の効力発生日から6ヶ月 新設合併の無効 新設合併の効力発生日から6ヶ月 新設分割の無効 新設分割の効力発生日から6ヶ月 株式交換の無効 株式交換の効力発生日から6ヶ月 株式移転の無効 株式移転の効力発生日から6ヶ月 株主総会の決議取消し 決議の日から3ヶ月 持分会社の設立の取消し 会社成立の日から2年 以上が、会社法上、「会社の組織に関する訴え」に分類される訴訟形態のうち、提訴期間の定めがあるものの全てです。 さて、以上のうち、みなさんが、覚える必要のあるものはどれか。 答えは以下のとおりです。 会社設立無効の訴え 2年 株式の発行の無効 6ヶ月(非公開会社では1年) 株主総会の決議取消し 3ヶ月 以上の3つだけです。 まず、提訴期間の基点は覚える必要がありません。 よくよく考えれば、すべてが、ある行為の効力発生日を基点としているからです。 (会社設立の日とは設立登記の日のことだし、株主総会決議の効力は通常は決議の日に生じる。) だから、「提訴期間の基点は効力発生日」と一律に考えてよしです。 次に期間ですが、6ヶ月が圧倒的に多いですね。 したがって「6ヶ月」のものを覚える必要は全くありません。 「6ヶ月」以外のものを完璧に覚えて「それ以外は6ヶ月」と、ひとまとめにすればよいのです。 次に、以下のものはグループで押さえます。 1、会社設立無効の訴えと持分会社の設立取消しの訴え →いずれも設立がらみです。設立関係は、2年と覚える。 2、株式の発行の無効 自己株式の処分の無効 新株予約権発行の無効 →いずれも株主が株式を取得するケースです。(新株予約兼は将来の取得) →この場合にのみ、会社が公開か非公開かを問題にする規定が存在します。「効力発生日から6ヶ月(非公開会社では1年)」 →その理由は簡単なことです。新たな株主が現れるケースだから、一般投資家が存在するかどうかを立法者が問題にしたのです。一般投資家のいない非公開の会社であれば、仲間うちの問題だから少々提訴期間が長くても第三者への影響がないのです。 では、ついでに、以上の訴えについて、請求認容判決が確定した場合に判決の効力が遡及するかどうかという問題を整理しましょう。 会社設立無効の訴え 遡及しない 株式の発行の無効 遡及しない 自己株式の処分の無効 遡及しない 新株予約権発行の無効 遡及しない 資本減少の無効 遡及しない 組織変更の無効 遡及しない 吸収合併の無効 遡及しない 新設合併の無効 遡及しない 新設分割の無効 遡及しない 株式交換の無効 遡及しない 株式移転の無効 遡及しない 株主総会の決議取消し 遡及する 持分会社の設立の取消し 遡及しない 上記のうち覚える必要があるのは、一目瞭然ですね。 「株主総会の決議取消し 遡及する」 これだけです。 さて、今日の結論です。 1、機械的知識の省略の仕方として、グループ分けの技法があります。 2、この場合のコツは、「数の少ないものだけ」を覚えることです。 3、しかし、その少ない部分は「完璧」にやります。 4、そうすることにより、試験会場で、自分が覚えてない事項は「数の多いグループに属する」という判断を正確にすることが可能となります。 *参考 会社の組織に関する訴えには、提訴期間のないものもあります。 「株主総会決議不存在確認の訴え」 「株主総会の決議無効確認の訴え」 「株式発行の不存在確認の訴え」 「自己株式の処分の不存在確認の訴え」 「新株予約権発行の不存在確認の訴え」 →この類型の覚え方は、すべてが「・・・確認の訴え」であることです。 →上記の判決の効力は、いずれも遡及します。(というよりモトモト何も存在しません)
被嫡出子と強制認知の事例は、記憶法に関してもう1つの重要な事実を示唆しています。
と、いうのは、「1つのことを記憶するよりも、関連する2つ以上のことをまとめて記憶する方が簡単」だという事実です。 ぼくは、これを「比較対照法」と名づけています。(これは「宅建一発合格塾」において命名) まあ、知識のヨコ並びと言っても意味は同じようなものですが・・ さて、比較対照法を採り、複数の事例をまとめて覚える方式は、ちょっとしたコツを要します。 では、ぼくが、下手くそな記憶方式の代表例としている機械式記憶の欠点をみてみましょう。 問 リトマス試験紙が「赤から青に変わればその液体はアルカリ性」「青から赤に変わればその液体は酸性」です。 では、理科の授業で学校の先生が、上記の知識を教えてくれたにもかかわらず、生徒が覚えられなかった理由は何でしょう。 答えは、35歳からの資格試験学習法に書いてしまったので、同書を読んだ人には簡単なことですが、読んでいない人はカンニングをしないで考えてみてください。 では、今日は時間がないので、これでブログを終了します。 その理由は、Wお茶の水で講義のためです。 あれ、こんなことまで、理由付けは不要でしたか(笑)
ウサギとカメの記憶法を用いると、学習対象のうち、記憶すべき事項は極端に減ります。
特に択一式の試験は、出題者が提出する題材の正誤が判定できればよいだけの話しですから、事はひじょうに簡単なわけです。 基本ラインは以下のとおりです。 1、試験会場で思い出せることは覚える必要がない。 2、その記憶がなければ、正誤の判定ができない部分のみを覚える。 上記の2の部分を、ぼくは「急所」と呼んでいます。 たとえば、一昨日の方式で、嫡出否認と死後の強制認知の違いについての物語を完成させておけば、試験会場に持ち込むことの必要な「急所」の知識は以下の2点のみです。 1、嫡出否認 1年 2、強制認知 3年 じつは、この部分をもう少し「ウサギとカメ」状態にすることも可能です。 嫡出否認の期間が異様に短いのには理由があります。 それは、子の福祉の問題です。 民法は、常に未成年子の味方といっていいくらい、子をかわいがります。 だから、結果として、子が父の扶養を受けることができなくなる嫡出否認の期間は短くしておきたいというのが民法の本音です。 これに対して、強制認知の方は、これによって子に相続権が発生します。 だから子に有利なのです。 したがって、第3者の財産権の保護の要請を考えたうえでも、夫死後3年くらいの期間はあってもいいじゃないかというのが民法の考え方です。 このように考えておけば、強制認知は父が生きている間は「いつでもできる」という基本知識も、オマケでウサギとカメ状態にすることができます。 また、これとは、別の理由付けも可能です。 司法書士の受験生であれば、以下のことを知らないわけはありませんね。 1、債権者取消権 裁判上でのみ行使可能 2、債権者代位権 裁判外でも行使が可能 つまり、債権者取消権のほうが要件が厳格なのです。 その理由は「現状」をひっくり返すのが債権者取消権であり、「あるべき姿」を作り出すのが債権者代位権だからだということもご存知でしょう。 そこで、この知識にくっつけて、ヨコならびの知識にしておけばいいのです。 1、嫡出否認 「現状」をひっくり返すから制度が厳しい→1年 2、強制認知 「あるべき姿」を作り出すのだから制度がゆるやか→3年 さて、今日の結論です。 以上の作業の結果、嫡出否認と強制認知の問題に関して、みなさんが覚えるべき「急所」の知識は以下の点に限定されることになります。 1、1年と3年
相続と認知の問題といえば、民法910条が思い浮かぶはずです。
正確に言えば、遺産分割と認知の問題ですが、共同相続人が遺産分割をした後に認知子が出現した場合(典型例が死後の強制認知)には、遺産分割がその効力を失うことはなく、認知子は価額のみによる支払いの請求権を有するという規定です。(つまりカネをよこせといえるだけ) この規定は、もちろん、遺産分割を前提として特定の財産を取得した第3者を保護するための規定です。 では、今日は、この点を出発点に、物語を構成して見ましょう。 まず、第一に考えるべきことは、遺産分割の法的性質です。 条文は何と言っているでしょうか。 民法907条1項(要点のみ) 共同相続人は、・・その協議で、遺産の分割をすることができる。 この条文の急所は、冒頭部分にあります。 遺産分割をすることができるのは、共同相続人であり、言葉を代えれば「相続人全員」です。 したがって、被相続人に、認知をした愛人の子がいたにもかかわらず、その子を除外しておこなった遺産分割協議は「無効」です。 その理由の根本は、「共同相続人」がした遺産の分割ではないから、民法の遺産分割の定義に該当しないということにあります。 この理は、被相続人の死亡後に認知子が現れた場合にも当然にあてはまります。 しかし、それでは、第三者の権利を害するおそれがあるから、カネだけの問題にしてしまおうというのが民法910条の主旨です。 さて、以上に述べた、遺産分割の法的性質は、不動産登記法においても出題範囲となります。 相続人全員による遺産分割は有効であるという点を知っていればよいだけで次のような事案については容易に解答をすることができます。 「被相続人甲の共同相続人乙・丙・丁・戊および己のうち、乙・丙・丁間の遺産分割協議書に乙が亡甲所有の不動産全部を取得し、戊・己間の遺産分割協議書にも、亡甲所有の不動産全部を取得するものとされ、いずれにも、それぞれ丙・丁・戊および己が遺産の分割を受けない旨が明らかにされている場合は、乙はこれらの遺産分割協議書を、相続を証する書面の一部として添付の上、乙単独相続の登記申請をすることができる。」 (昭35.12.27民甲3327号) →共同相続人全員の協議を同視できるから登記可能なのです。 本来の一枚の分割協議書を、便宜、2枚に分けただけと考えればよい。 「甲の共同相続人がその子乙・丙・丁である場合において、乙の相続分を乙丙の2名の遺産分割協議により3分の2とし丁の相続分を法定相続分の3分の1とする相続の登記の真正は受理されない」 H3年27問 ○ →相続人全員による遺産分割ではないから無効。 この場合、丙は乙への相続分譲渡証明書を書けばよかったのです。それであれば、問題文の登記は可能です。 さて、遺産分割は共同相続人全員でなければすることができないという物語は、不動産登記法の別の論点に飛び火しています。 旧法時代の出題があるはずですが、遺産分割の調停調書を添付して相続登記をする場合には、戸籍等の添付が一切不要であるのです。 その理由は、この場合には、裁判所が相続人全員の意思の登場を確認しているからです。 つまり、裁判所が、戸籍等を精査して相続人全員が揃っているかどうかを確認しているはずだから、登記所が2重にこの点を審査する必要はないのです。 裁判所は、事件が民法に書いてあるとおりの要件を満たさなければ、判決が書けません。 ここは調停の問題ですが、共同相続人全員が登場していなければ、民法上、遺産分割をすることができないことは、裁判所は百も承知です。 だから、申立人が共同相続人を確定するための戸籍類を裁判所に提出しなければ、そもそも遺産分割調停は開始しないのです。 次に、この裁判所の性癖は、不動産登記法の別の局面にも現れます。 それは、判決による登記をする場合には、不動産登記令7条1項5号ハの、登記原因についての第三者の許可書の添付を要する場合は存在しないという定理です。 裁判所は、民法に書いてある法律要件が揃っているかどうかを審理する場所ですから、たとえば、利害関係人の承諾が得られていないのであれば、そもそも「何某は何番抵当権の順位変更の登記手続きをせよ」との判決が出るわけがないのです。 これが、判決による登記をする場合には、不動産登記令7条1項5号ハ書面は不要であることの理由です。 では、最後にオマケで一連の物語を完成しましょう。 「何某は農地法3条の許可を条件として所有権移転登記手続きをせよ」という判決の場合にも、上記の考え方が通用するのかという問題があります。 結論を言えば、この場合にも、農地法の許可書は登記申請には不要です。 この場合、農地法の許可書は裁判所に持っていくのです。 そして執行文をもらい、その執行文付きの判決書で登記申請をするのです。 さて、では、最後に、民事執行法に飛びましょう。 執行文は、執行裁判所で貰うと出題されたら○でしょうか、×でしょうか? 答えはもちろん×です。この場合、執行裁判所は、たまたまその管轄内に差し押さえ目的物の不動産が存在したというだけの裁判所です。 だから、「執行文をくれ」といきなり言われても、そもそもどんな事件なのかが分かりません。 この場合、執行文を付与するのは、「事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官」です。
知識をヨコにつなげることの重要性はすでにお話ししましたが、その方法については、まだこのブログではとりあげていませんので、今日から、少し、記憶法の問題をとりあげることにしましょう。
あちこちの本にも書きましたが、ぼくは基本的に講義の予習なるものはしません。 ぼく自身が半年間の司法書士の受験時代に蓄積した「絶対に忘れることのない」記憶が充分に存在するので、その必要がないのです。 そういう状況を作り出すコツは、自分のアタマで理由付けをすることです。 ぼくが基本書を読み込む、という場合の「読み込む」作業には、上記の理由付けの作業が含まれます。 では、実際にやってみましょう。 嫡出否認の訴え 民法775条 ・・・否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がいないときは、家庭裁判所は特別代理人を選任しなければならない。 民法777条 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知ったときから1年以内に提起しなければならない。 人事訴訟法41条 夫が子の死亡前に死亡したときまたは民法第777条に定める期間内に嫡出否認の訴えを提起しないで死亡したときは、その子のために相続権を害される者その他夫の3親等内の血族は、嫡出否認の訴えを提起することができる。この場合においては、夫の死亡の日から1年以内にその訴えを提起しなければならない。 民法787条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父または母の死亡の日から3年を経過したときは、この限りではない。 人事訴訟法12条3項 (要点のみ)夫死亡後の被告は検察官。 以上の知識は司法書士の受験生に必須のものです。 では、どうしたら、以上のことを忘れることのない知識にしたてあげることができるのでしょうか? 1、嫡出否認の訴えの被告が「子または親権をおこなう母」である点の理由。 通常、子の法定代理人は子を代理して訴訟をすることができるはずです。 では、なぜ、嫡出否認の訴えの場合には、「親権をおこなう母」に限られるのでしょうか。 理由は簡単なことでありまして、子を産んだのが母だから事情が分かるのは母だけだからなのです。 夫から「オレの子じゃない」と迫られたときに、真実を知るのは母のみですよね。 だから、「親権をおこなう母」に限られるのです。 被告が未成年後見人では、「オレの子じゃない」と迫られても困ってしまうだけでしょう。 それよりは、法律問題に詳しい特別代理人を家庭裁判所が選任した方が、訴訟の進行がスムースになるのです。 →以上の点から導かれるヨコのつながり 上記の特殊事情のない、強制認知において、原告は「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人」でかまいません。 もともと、子のための訴えの提起は法定代理人の代理権の範囲内だからです。 2、嫡出否認の訴えの被告について「子または親権をおこなう母」がいない場合に特別代理人が被告となる理由。 子が生きているからです。子に権利能力があるからその代理人を観念できるのです。 →以上の点から導かれるヨコのつながり 死後の強制認知において、被告は検察官です。 父はすでに死亡していますから、その代理人なるものは観念できません。 (代理制度は本人に法律効果を帰属せしめる制度であるところ、死亡したのであれば、本人に権利能力がなく、法律効果を帰属させることが不可能である) ですから、人事訴訟法は、公益の代表者である検察官を引っ張り出すしかないと考えたのです。 3、提訴期間について、なぜ、嫡出否認の場合には、子の出生を「知って1年」であり、死後の強制認知は父「死亡の日から3年」(死亡を知ってからではない)であるのかという理由。 一言で理由をいえば、第3者への、財産上の影響があるかどうかということが相違の理由です。 つまり、死後の強制認知であれば、ことの性質上、父は死亡しています。 ということは、父に相続が発生しています。 認知子の出現は、この相続財産の帰属に影響を及ぼしますから、法律関係を早期に確定したいという要請が生じます。 だから、死亡後3年という明確な基準を打ち立てたのです。 3年経てば、もはや、相続財産を、その後に取得した第三者の地位が覆されることはなく、取引の安全に寄与するのです。 しかし、嫡出否認の場合には、夫は生きています。 相続は発生していません。 だから、子の出世後20年が経過してから、はじめてこの事実を夫が知り、21年経過前に嫡出否認の訴えを提起することになったとしても、第三者に対する財産上の影響がありません。 単に、家族内の問題であるのです。 だから、夫を保護するために「出生を知ってから」という規定の仕方でかまわないのです。 →以上の点から導かれるヨコのつながり 嫡出否認の場合でも、夫死亡後の訴えの規定があります。この場合には、夫について相続が発生します。夫死亡により家族間の問題は終了し、残るのは、相続問題だけです。したがって、原告は、「その子のために相続権を害される者その他夫の3親等内の血族」です。 相続の問題ですから、「血族」のみが原告です。(理由 姻族が相続人になることはありえない) 3親等という区切りは、甥、姪までが相続人であるということに対応する規定です。 これらの者の提訴期間が「夫の死亡の日から1年以内」であり、「夫の死亡を知ってから1年以内」ではないという点も簡単に説明ができます。 相続が発生しているから、第三者の財産上の地位を早期に確定するという取引の安全の要請が生じたからです。 以上で作業は終了です。 いま述べたような理由付けを、物語として理解をしておけば、試験会場で解答に必要な知識が出てこないということはありえません。 すなわち「基礎が完成」したのです。 この方式を「ウサギとカメ」記憶法と、ぼくが名づけていることは皆さんご存知ですよね。 物語を知れば、ウサギとカメのどちらが勝ったかを忘れることはありえないという考え方です。 この方式を用いれば、物語はどんどん膨らみます。 では、その点は宿題にしましょう。 相続と認知の問題に関して、さらに物語をヨコに膨らませるとすれば、どういうことが考えられるでしょうか? 参考 記憶法については、拙著「35歳からの資格試験勉強法」PHP研究所において、系統立てた記述をしています。 「35歳からの資格試験勉強法」
今日は一日オフで、仕事はしません。
石原裕次郎ゆかりの葉山に行ってきます。 その前に、今日も質問コーナーとします。 Q まささんより 先生は執筆活動、講師業、司法書士実務等ものすごい仕事量をバリバリこなされているようですが、元気の秘訣や健康法があればブログで紹介して頂きたいです。 ガイダンステープで本を書くのがおもしろくて仕方ないとおっしゃっていましたが、やはり勉強でも何でも『楽しい』感覚を身につけることがポイントですか? A 諸子百家のひとつに「老子」があります。 老子は、生き方の基本を無為自然と言います。 この言葉は、よく誤解をされるのですが、無為とは何もしないで漫然と暮らすことではありません。 「無になって為す」という意味です。 いわゆる禅でいう、「無」と似たものです。 では、無になるコツはなにか。 それは、明日を楽しいと考えることです。 執筆であれば「この本もベストセラー」講師業であれば「一発合格者百出」という感じです。 こう言うと、ただの虚言癖と思われるかもしれませんが、そうでもありません。 どこかの本で書きましたが、たとえば、野球のイチロー選手は、ストライクゾーンに来た球の7割はヒットにできると言っています。 いま、彼の打率は3割5分くらいですが、彼によれば、この結果は「半分もミスをした結果」です。 だから日々100%の努力(これが無です)をしているのであり、このあたりが、2割5分の打率をもう少し上げたいと思っている並みの打者との違いです。 受験の場合も、「当然受かる」と思っていることが短期合格の前提です。 ぼくは、Wの札幌校で、司法書士の6ヶ月合格コースをはじめたころ、校長先生にエレベーターの前で「ギリギリでもいいから受かってくださいね」と声をかけられ腹が立ったことがあります。 (後日、このことを言うと先生は、あやまっておられましたが・・・) というのは、ぼくは、ブッチギリのトップクラスで受かる気でいたのです。 ギリギリとはなんと縁起の悪いというのがその時のぼくの心境でした。 そして、フタをあけると、やっぱり上位10人くらいには入っているだろうという感じで受かっていました。 このように、明日を楽しく考えることが、力を発揮する基本です。 Q武田さんより 先生、いつも楽しく拝見させていただいております。 電子定款はまだ利用したことが無いのですが、やはり設備費用約3万円(ソフト代)は逃げることの出来ない出費なんでしょうか(笑)どーも、認証キットを別に買わなければいけないシステムが「変だな」って思ってしまいます。もしよろしければ、先生のお使いのソフトを教えてください。同じの買ってやってみます♪ A 多分、出費は逃げられないと思います。 ぼくのソフト等は以下のとおりです。 1、Adobe社 Acrobat Standard 6.0 3万円ちょっと 2、リーガル社 電子認証キット PRO 1万5千円くらい 3、日司連 ICカード 4、日立 ICカードリーダライタ(HX-520UJ) 上記のうち、Acrobat Standard 6.0はいまヴァージョンアップで7.0が出ていると思います。 日司連前副会長の純通先生が、PDFファイルの作成ソフトは、Adobe社のものでなくても他社の廉価なやつでも電子署名は可能だよとおっしゃっていたような気がします。(すいませんが、定かではありません) Q きろさんより 山本さんこんにちは。(ハンドルでシツレイ) 初書き込みです。 電子定款無事完了ですね。カードリーダーは大丈夫ですか? 私は住所が変わったため電子認証は全部取り直しです(号泣) その場での補正が出来ないこと以外は大変便利ですよね。次はオンライン申請かな? A その節は、たいへんお世話になりました。 きろさん作成の札幌司法書士会の資料で、なんとか、山場を乗り切ることができました。 とくに、委任状は、定款の合てつを知らずに公証人役場にいく可能性は100%でした。 カードリーダーとICカードは、PDFファイルに電子署名するときには、とても素直ないい子です。 どうして、法務省と相性がわるいのだろうか? 平塚か横須賀で、抵当権の抹消があれば、話題の不動産ハンラインをやってみようかと思うけど、あいにく、適当な案件がありません。 うちの義母が新琴似に引っ越しました。その節はどうもでした。 │一覧 │ 一番上に戻る │ |