首都圏に点在する鎮守の森の3分の1が30年間で消失したことが、横浜国立大の調査で分かった。残された場所にも外来種の侵入が目立った。鎮守の森は、シイやカシに代表される照葉樹林が分布し、日本独自の文化をはぐくんできた。信仰で守られてきた都市近郊の自然が危機にさらされている現状が浮き彫りとなった。
72〜80年の記録や文献から1都4県(東京、千葉、神奈川、埼玉、茨城)で鎮守の森だった172カ所のうち、管理者の協力が得られた145カ所で02〜06年の状態を調べた。
その結果、25カ所が更地や墓地、駐車場などになって消失していることが分かった。別の26カ所はスギやヒノキなどに植え替えられたり公園に変化していた。
一方、鎮守の森が残る94カ所のうち20カ所で、約30年前に見られなかった街路樹などに使われる中国原産トウネズミモチが確認された。また、九州以南に分布するヤシ科シュロは46カ所から69カ所に増加していた。
森が失われた寺社は、住民から「日当たりが悪い」などの苦情や、参拝客の利便性アップのため駐車場や道路が設置されたところが多かった。残っていたのは、人が入りにくい急斜面や自治体の条例で保全されている場所だった。
研究チームの窪山恵美・大学院生(27)=植生生態学=は「鎮守の森は照葉樹林の遺伝資源の宝庫で、都会の数少ない生物のすみかだ。寺社と住民が協力して守らなければならない」と警告する。【足立旬子】
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