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きょうの社説 2009年3月31日
◎高速割引スタート 混雑緩和へ周到な準備を
地方圏で休日は千円で走り放題になるなど、高速道路料金の引き下げが本格的に始まっ
た。北陸でも普段の休日を上回る観光客の増加が各地でみられ、上々の滑り出しとなったが、ETC車載器がさらに普及し、行楽シーズンが本格化すれば、道路や観光地の混雑も予想される。渋滞対策など観光客の受け入れ体制については今のうちから官民一体で周到に準備しておく必要がある。高速料金引き下げについては料金システム改修が遅れて一部で実施が先送りになったほ か、渋滞が多発するとか、地球温暖化対策に矛盾するといった批判が出ている。だが、スタートしたからにはケチをつけるだけでなく、トラブルを回避して制度を定着させることが大事である。 景気悪化で消費マインドが冷え込むなか、高速料金の割引はレジャー需要を掘り起こし 、消費刺激が期待できる。この施策には二年間で五千億円が投じられるが、国土交通省は宿泊やレジャー施設、外食産業などへの経済波及効果は約七千―八千億円と試算する。地方で落ち込みが目立つ海外観光客の穴を埋めることも可能だろう。 イベントを新たに企画したり、施設の割引を検討する動きが出てきたのも好ましいこと だ。せっかく盛り上がってきた機運に水を差さないためにも、トラブルはできる限り少なくしたい。 金沢市はゴールデンウイークに加え、九月の五連休でも高速道路インター付近に大型駐 車場を確保してバスを走らせるパーク・アンド・バスライド(P&R)を実施することを決めた。新年度は週末の三連休も五回あり、市街地の混雑回避へ向けた交通政策が試されることになる。歩ける街づくり推進の観点からも、P&Rを含めた公共交通への誘導策は重要である。 五箇山など駐車スペースに限りがある地域でも、交通誘導や観光客への情報提供、シャ トルバス活用、臨時駐車場開設などの対応策を詰めておきたい。 高速料金の大幅割引は過去に例のない取り組みだけに渋滞予測は難しい面もあるが、観 光客に悪印象を持たれないためにもマイカー流入対策は不可欠である。
◎北ミサイル情報 進まぬ警報体制の整備
北朝鮮が「人工衛星」と称して準備を進める長距離弾道ミサイルの発射計画で、総務省
消防庁が力を入れる緊急情報伝達システムの整備が思い通りに進まない自治体の問題があらためて浮き彫りになっている。これを機に、自然災害を含めた危機管理体制の強化に一層努めたい。北朝鮮のミサイル発射が確認された時、政府は五―十分以内に、都道府県を通じ一斉同 報システムで市町村に一報を伝えることにしている。しかし、市町村の担当部署から住民への周知を迅速に行う点では不確実さが残る。 このような場合に備えて、消防庁は通信衛星を利用して緊急情報を住民に伝える「全国 瞬時警報システム」を二〇〇七年から運用している。消防庁が緊急情報を発信すると、自治体の防災行政無線が自動的に起動し、各家庭の受信機や屋外拡声器で警報が流される仕組みである。 国民保護法の施行に伴う警戒体制強化の一環として導入された。ところが、肝心の自治 体への普及は遅れている。石川、富山県を含め大方の都道府県は受信できるようになっているものの、市町村はまだ一部に過ぎず、両県でシステムを導入しているのは、かほく市と上市町だけという。 財政難から導入を先送りしている自治体が多いようだが、有事情報や緊急地震速報、大 津波警報などの緊急情報を国が直接、瞬時に伝えて国民を保護する重要なシステムであり、導入のペースを上げてもらいたい。 万一に備えて防衛相からミサイル破壊措置命令が出された今回の事態は、自治体にとっ てまさに国民保護法の実践といえる。実際、青森県などは国民保護計画に基づく警戒態勢を敷いている。状況によって現在の初動態勢を格上げしていくという。いたずらに国民の恐怖心をあおることは避けねばならないが、各自治体は緊張感を持って対処してもらいたい。 現行の通報体制の確認はむろん、夜間警戒の宿直体制の強化、日本海で操業する漁船の 状況把握と情報提供など、事前対応をまずしっかりやってほしい。
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