フランス海軍のフリーゲート艦「ヴァンデミエール」(2、800トン、乗組員93人)が30日、長崎市の長崎港に入港した。核保有国の軍艦寄港に平和団体や長崎市が「被爆地・長崎の市民感情を害し、核兵器保有を容認することにもつながりかねない」などと反対したのに対し、県は同艦の寄港を歓迎し、対照的な対応を見せた。
県によると、フランスの軍艦の長崎寄港は38年ぶり。同艦の入港目的は「友好と親善のため」で、4月3日に出港予定という。
同艦は午前10時、同港の松が枝埠頭(ふとう)に接岸。平和団体や労働組合の関係者約80人が岸壁で「軍艦は被爆地に来るな」「フランスは核保有をやめろ」などと声を合わせて抗議した。
長崎市は今月12日、外務省と在日フランス大使館に対し「核保有国の軍艦が入港することへの市民感情に配慮してほしい」として同艦の長崎寄港回避を要請。同艦のフレデリック・ブノン艦長が田上富久市長に表敬訪問する申し出も拒否した。
一方、県は米海軍艦船の寄港に反対してきたが、今回の寄港には反対せず、この日、ブノン艦長の訪問を受けた金子原二郎知事は歓迎の意を伝えた上で「長崎は今も多くの被爆者が苦しんでいる。原爆資料館を見学し、原爆の悲惨さを世界に広めていただきたい」と声を掛けた。
金子知事はブノン艦長との会談後、報道陣の取材に応じ、今回の対応について「米国は(原爆投下の)当事者だが、フランスは違う。核保有国ということにしばられると被爆の実相を見てもらえなくなるから」と話した。
=2009/03/31付 西日本新聞朝刊=