シンポジウム第3部では、第2部の「事例紹介」で採り上げられた3社の制度担当者が登場。企業の側から見た短時間正社員制度の導入の成果や、それによって組織がどのように変化していったかを語り、さらに会場から寄せられた質問に答える形でパネルディスカッションを行った。
◇コーディネーター
- 学習院大学 経済学部 特別客員教授 木谷 宏氏
◇パネリスト
- サイボウズ株式会社 人事部 椋田亜砂美氏
- 株式会社高島屋 人事部 人事政策担当部長 経営職 小林士郎氏
- 株式会社ロフト 取締役 執行役員 篠田信幸氏
短時間正社員を選ぶのは「能力の差ではなく、働き方の違い」
――(木谷、以下同)まず、皆さんの会社で短時間正社員制度を導入された結果、組織や社員がどのように変わっていったのかをご紹介いただけますか。
椋田(サイボウズ) 当社は社員200名という、規模で言えば中小企業です。制度の導入は2006年8月からで、まだ3年未満ですが、すでに制度の利用実績が男性も含めて出てきていることを考えると、企業規模や時期という面から見ても適切に導入できたと思っています。
また導入効果としては、女性社員の定着率向上が挙げられます。制度導入前は女性の離職率が27%だったのに対して、導入後は10%へと大きく減少しました。
離職率が高かった背景には、30歳という平均年齢があります。ちょうどこの時期は女性が結婚・出産を迎える時期にあたり、従来のフルタイムのみの勤務体系を前提とした場合、結婚後のキャリアプランニングが難しかったのです。
それが、短時間正社員制度の利用者事例を参考に、結婚後の自分のキャリアモデルが見えるようになり、安心して仕事を続けられる女性が増えたのです。私自身も、この短時間正社員制度を現在利用している者の1人です。
苦労した点としては、これまでがワーク重視だったところで、ライフ重視の働き方をあえて選ぶと、能力が下がったと思われるのではないかという不安を口にする人が出てきました。そこで、「あくまで能力の差ではなく、働き方の違い」である点を繰り返しアナウンスして、社内の理解を促すように努めました。
とはいえ、私自身利用者の1人として、意識の切り替えが難しく感じたのも事実です。今までバリバリ仕事をしていくのがよいと考えていたのですから。こうした経験からも、制度の浸透は周囲の人間の協力も重要ですが、本人の意識が何より大事だと痛感しています。(次ページへ続く)