意識を失い倒れた生駒市内の男性(63)が6病院に搬送を断られ死亡した問題で、県は30日、6病院への聞き取り調査結果をまとめた。県は死亡と搬送の遅れとの因果関係は不明としながら、「救命救急センターで受け入れられなかったのが一番の問題」とし、背景には医師不足があると指摘した。
県によると、男性は21日午後1時40分ごろ、意識を失って倒れ、救急隊が到着直後の同50分ごろ心肺停止状態となった。救急隊が近畿大奈良病院(生駒市)と、県立奈良病院(奈良市)の2救命救急センターに搬送を依頼したが、「他の患者を処置中」として受け入れを断られた。2救命救急センターでは空きベッドがあったが、対応できる医師がいなかったという。
男性は他の4病院にも断られ、約1時間後に大阪府大東市の病院に搬送され、約30分後に死亡した。
こうした状況から、県は問題の背景に医師不足があったと指摘。医師確保策を充実させる他、救急搬送時に各病院への照会に関する規則と病院側の受け入れルールを定める方針。
一方、生駒市の山下真市長は30日、市議会の井上充生議長、矢奥憲一市民福祉委員長に、3月議会が継続審査とした市立病院設置条例の早期審査を求める要望書を提出した。要望書は今回の搬送問題に触れ「市立病院の開設による医療環境充実の必要性は明らか」などとしている。【阿部亮介、泉谷由梨子】
毎日新聞 2009年3月31日 地方版