県立中央病院(鳥取市江津)は30日、むち打ちによる首の痛みや右腕のしびれを訴えた男性患者の治療で、脊髄(せきずい)から出ている「神経根」と呼ばれる神経の束に注射すべき痛み止めの薬を誤って脊髄に注射する医療過誤があったと発表した。男性には、両腕や腹部にしびれが残り、握力が低下するなどの障害が残ったという。
病院によると、男性患者は仕事中に転倒してむち打ちになり、07年11月に入院。退院後の12月17日に治療を受けた後、治療前にはなかった左腕のしびれなどが発症した。その後も治療を続けたが改善せず、両手とも治療前は40キロあった握力は5~6キロまで低下した。今月24日、院内の医療安全管理委員会が治療を精査した結果、医療過誤と分かった。
神経根に薬液を注射する「頸部(けいぶ)神経根ブロック注射」は、誤って脊髄を刺して全身にマヒやしびれが残る合併症が起こるリスクを伴うと教科書にも記載されている。だが、治療を担当した整形外科の男性医師はリスクについて説明せず、同意書もとっていなかったという。
病院は、針を注入する際に位置確認が不十分だったこと、インフォームド・コンセントが徹底されていなかったことを認めている。武田倬院長は「患者や家族に多大な迷惑をかけたことを心よりおわびします」と謝罪した。【宇多川はるか】
毎日新聞 2009年3月31日 地方版