
DVD 収録時間50分
この作品は無相さんが、生涯迷い続けた「煩悩」と「信心」と「念仏」をどのように受け止めたか、アルバム写真や、ノート、福井県で無相さんの身元を引き受けた加茂さん宛ての手紙、金光寿郎さんの番組「NHK宗教の時間」で放送された内容を通して、無相さんの生きざまを分かりやすく描きました。
木村無相さんが二十歳の頃、一家離散という境遇で育ち、人生が不安で外ばかりに眼が向けられていたものが、急に内側に向けられ「私の生きる道はどうも仏教にあるらしい」と求道生活に入り各地を遍歴します。最初は四国遍路をしたのですが、年を重ねるうち高野山(真言)で僧侶の資格まで取ります。しかし、十七歳の時に読んだ『歎異抄』が気にかかり、浄土真宗の他力の教えを学ぶため、徳島県や三重県、滋賀県に師を求めて聞き歩きます。
五十九歳になり、真宗大谷派の研修部長の招きで同朋会館にやって来ました。そしてここで12年間を過ごし、本山や同朋会館に出入りする人々を見つめて、その折り感じたことをノートにメモして「念仏詩」として、名古屋の聞法誌「慈光」に投稿しました。「信者になったらおしまいだ」等の詩を読んだ龍谷大学学長の千葉乗隆先生は、無相さんに出版を薦め『念仏詩抄』として永田文昌堂から発行されました。もう一人、福井県池田町の誠徳寺の加茂さんも、この詩に感動し同朋会館に会いに来たのが機縁となり、無相さんは福井県の老人ホームに引越したのです。

DVDのストーリー展開 (煩悩と信心と念仏)
1、無相さんの煩悩
木村無相翁25回忌法要記念で金光寿郎さん(元NHK教養部チーフディレクター)が無相さんについて講演、無相さんの「煩悩」がどういうものであったか紹介された。
正信念仏偈に「不断煩悩得涅槃」とありますが、この一句は煩悩を断ぜずして悟りを得ることを示した言葉。
無相さんは60歳の時に、二十歳の頃を回想して、
「私が20歳の時、煩悩を断じて悟りを開きたいと思っていた」が、それは間違いだった。煩悩は断じることが出来ないのだから、煩悩は浮かぶままにほっておけ、相手にしないでいいと。また煩悩が湧き出てきたら、その煩悩は、如来の光によって照らされた煩悩であるから、お念仏を申してふわふわと消してしまえと」。
● 生きるんだ 19p 〈口述〉
生きるんだ
生きるんだ
煩悩の一生を
生きるんだ
生きるんだ
無常の一生を
煩悩 無常が
人間の一生
ナムアミダブツと
生きるんだ
2、無相さんの信心
無相さんの信心について、福井県池田町水海の誠徳寺の住職、加茂淳光さんが次の詩を引用して無相さんの信心について話す。
信者になったら
おしまいだ
信者になれ
そのままで
ナンマンダブツ
ナンマンダブツ
「信心」を、こちらから求めるのではなく、阿弥陀如来からの戴きものとして、「信心」を受け止めた。
浄土真宗では「信心」を次のように理解します。
歎異抄に、
「この源空(法然)の信心も如来からいただいた信心です。
善信房(親鸞)の信心も如来よりいただかれた信心です。
だからまったく同じ信心なのです。」
「如来からいただいた信心」。
「如来よりいただかれた信心」
● ご信心(二) 29p 〈口述〉
ご信心とは
弥陀の智慧
わたしが信ずる
それでない
〃大信心は
佛性なり
佛性すなわち
如来なり〃
如来の智慧を
たまわりて
ナンマンダブツ
ナンマンダブツ
3、無相さんの念仏
79歳の時に、再び金光寿郎さんから連絡があり、「煩悩と私」を吹込み、NHK宗教の時間で放送された。
その内容は「ただ口に称えよという仰せのままに。鸚鵡や九官鳥が人間 に教えられて、ナンマンダとただ発音するだけ、と、それと 同じです。極重悪人は、ただ仰せのままに、ただナンマンダ、ナンマンダと折りにふれて思い浮んでくださるるままに、口に称え、現われてくださるままに、ただ念仏を発音、念仏をさせてもらうだけの、それ以外なにもないね。」と明るく楽しく笑って録音を終わった。
正信念仏偈に「極重悪人唯称仏」とあります。
極重の悪人は、ただ仏を称すべし。
● ただ念仏は 続p135 ナレーション
ひとさんがなんと言おうとも
ただ念仏よりほかないわたし
わたしがなんと思おうとも
ただ念仏よりほかないわたし
ただ念仏はさずかりもの
ただ念仏はいただきもの
ナムアミダブツ ナムアミダブツ
ナムアミダブツ ナムアミダブツ
エピソード
山頭火と同じ部屋で寝食を共にし、放浪を続ける無相さんに、山頭火は「流浪はやめなさい。ちゃんとした生活につきなさい。あなたはまだ若いのだからと、毎夜さとされた」といいます。

「煩悩」と「信心」と「念仏」をどう受け止めたか、この作品をご覧ください。
あなたの信心・念仏ちがいませんか。
DVDのチャプター
1 念仏詩抄
2 25回忌法要
3 無相さんの煩悩
4 二人の出遇い
5 無相さんの遺書
6 無相さんの信心
7 無相さんの念仏
8 最期79歳…
取材協力 木村無相翁二十五回忌法要世話人会 福井県越前市瓜生町三十三の二十の一 和上苑気付
資料提供 和上苑 木村無相文庫・誠徳寺 加茂淳光
音源提供 口述「念仏詩抄」 口述「歎異抄」 加茂淳光・NHK 宗教の時間「煩悩と私」昭和五十八年七月二十四日放送
撮影協力 越前市瓜生町 和上苑上宮寺・池田町水海 誠徳寺・川崎市 金光寿郎 (二十五回忌法要記念講演)
参考図書 『念仏詩抄』『続念仏詩抄』『続々念仏詩抄』 永田文昌堂発行・『木村無相追悼号 相念』 和上苑発行・『無相さんを偲んで』 木村無相翁二十五回忌法要世話人会発行
ナレーション KANTA