|  高速道路をいくら走っても上限が千円となれば、家族で遠出しようという気分にもなるだろう。  高速道路料金の値下げが、きのうから始まった。土日と祝日、自動料金収受システム(ETC)を搭載した普通車と軽自動車、二輪車が対象だ。初日、各行楽地や高速道のパーキングエリアは観光客などでにぎわった。  二十日から割引を先行して実施した本州四国連絡橋三架橋の一日あたりの平均交通量は、前の週と比べて二倍近くに増えた。行楽地では値下げを機に、観光客を呼び込むためのイベントが企画されている。宿泊施設や土産店の売り上げが伸びるなど、消費を刺激する一定の効果は期待できそうだ。  日本の高速料金はもともと高いので有名だっただけに、安くなること自体は歓迎したい。しかし、手放しで賛同できない面もある。  一つは、割引の対象がETC搭載車に限られていることだ。駆け込み需要で供給が追いつかないため、値下げされても対応できない車がたくさん積み残された。搭載していない人には不公平感がぬぐいきれないだろう。  また、四月下旬のゴールデンウイーク直前まで、新料金システムの変更が間に合わず、大都市圏をまたぐ場合は上限千円の料金が二重取りされるのもしっくりこない。  財源の問題も気掛かりである。今回投入する税金は五千億円で、とりあえず二年分だ。政府の「埋蔵金」で賄うとしているが、継続するには新たな財源が必要になる。いったん値下げしたものを、二年後に果たしてやめることができるのかどうか。混乱は必至だろう。  高速道路の渋滞も懸念材料だ。フェリーや鉄道など、高速道路と競合する公共交通機関の減収問題もある。こうした面にどこまで目配りしたのだろうか。  値下げは、政府が追加経済対策に盛り込んだ柱の一つだ。しかし、民主党が掲げる「高速道路料金の無料化」に対抗する狙いがあったのだろう。解散・総選挙を控え、目先の人気取りの施策として進められた感は否めない。  景気対策の重要性はわかる。人が動けばカネも動く。だが、車の走行量が増えれば温室効果ガスの排出量も増える。環境への悪影響も懸念される。政府・与党は交通政策の将来展望もきちんと示すべきである。 |