自動料金収受システム(ETC)搭載の乗用車などを対象とする上限1000円の高速道路料金引き下げが本格スタートした28日、東、中、西日本の各高速道路会社が初日の交通速報をまとめた。午前0時~午後3時の交通量が前年3月最後の土日曜(29、30日の平均)と比べ最も増えたのは岐阜県の東海環状道土岐南多治見-土岐ジャンクションの52%増(通行台数1万7500台)だった。九州の高速道路では全調査地点で増加した。全国的に激しい渋滞はみられず、各社とも「まずまずの出足」と評価した。
西日本高速道路九州支社によると、管内の高速道で最も通行量が多い九州自動車道の太宰府-筑紫野間は7万1420台。前年同期比で30・8%増(今月14、15両日の土日の平均値に比べると44・8%増)だった。最も伸び率が高かったのが通行量3万2758台の熊本-植木間で、同46・0%増(同69・1%増)だった。【高橋昌紀、綿貫洋】
28日、九州自動車道もETCを利用して各地へ繰り出す大勢のドライバーで混雑した。高速道の通行量が増えた一方で、不況や天候の影響か九州・山口の観光施設の客足は今ひとつ。肩透かしを食らった各施設の関係者は「今後に期待したい」と口をそろえた。
長崎県の68の宿泊施設は28日から、宿泊客に高速道路往復分2000円の還元キャンペーンを始めた。ところが、長崎市の主なホテルによると、出足は低調。長崎市の「長崎全日空ホテルグラバーヒル」の担当者は「まだ、これからでしょうね」と苦笑いしていた。
同県佐世保市の大型リゾート「ハウステンボス」も28日午後5時現在の入場者が約1万人と前年比約5000人ダウン。広報室は「天気が優れなかったことが理由」と分析した。
鹿児島市吉野町の島津家別邸・仙巌園には2191人が来場。大河ドラマ「篤姫」ブームに沸いた08年に比べ800人近く減った。「みやざきフラワーフェスタ2009」のメーン会場、宮崎市の「こどものくに」も前年の4分の1の約1400人と、“ETC特需”にはほど遠かった。
大分市の「大分マリーンパレス水族館うみたまご」や北九州市の「スペースワールド」、福岡市の「キャナルシティ博多」も前年同期とほぼ同じだったという。
出足について、西日本高速道路九州支社は「時間帯割引と違って、利用が分散していたのではないか」と分析している。
一方、高速道路と競合する新門司-神戸などの航路を持つ阪九フェリーによると、同日の上り便は前年同期と比べて乗船する普通車数は少なめ。同社は「景気後退による影響かもしれず、当面は様子を見なくては分からない」と話していた。【阿部周一、綿貫洋】
毎日新聞 2009年3月29日 西部朝刊