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2008年10月13日 (月)

「ユニトラック ガイドブック」雑感

 カトーから「ユニトラックガイドブック」と言うのが出ました。

Kato

 今はNゲージの場合、毎月怒涛のような新製品鋼攻勢で、ユーザーも、とにかく買うのにアップアップ、おかげで市場は供給過剰、在庫を残すわけには行かない量販店が、仕入れすれすれの値段の投売り合戦、というのが昨今の状況でしょう。

 この本は、以前の「レイアウトガイド」の延長にあるものなのでしょうけれど、基本セットの次に何をするか?といったビギナー向けの記事に重点が置かれているのが特徴です。それだけ現在の状況に危機感を持ったカトーの一つの答えなのでしょう。

 しかし、一読してみると、鉄道模型メーカーが出した指南本としてかなり疑問に思える表記が多いな、と言う感じもあります。例えば「ママにもわかるNゲージのしくみ」と言う項目(これ自体、メーカー自身が子供の玩具である、といっているようなものですが)で、「鉄道模型と鉄道オモチャの違いは?」と言う問いに対して、「オモチャより多少デリケートなものであると思ってください」と言う答えが出ています。「8歳以上」を対象年齢としながら、ママが見ていなければならない、というのもおかしな話ですが、それ以前に、模型と言うのは実物を一定の縮尺で可能な限りミニチュアとして再現したものである、という基本概念が完全に抜け落ちているのにはがっかりします。それがために、子供の玩具とは違ってデリケートな部分もあるわけですし、その分リアルに見えるわけでもあるのです。ですから、営業戦略上、ママを攻略する必要があるのならば、もっと本質が分かる説明をするべきですね。

 この本を読んだら、大人のNゲージファンの人だったら、「何だ、メーカーは子供の玩具と言う位置づけで作っているんだ」ということで怒るでしょうね。そして、当の入門者の子供たちだって、「鉄道模型は大人のもの」という感覚があって、ちょっと背伸びをした気になっているところに魅力を感じているのは間違いないはずですから、そこにママが口を挟んでくれば、気分は一気にしぼんでくるのではないでしょうか。

 このあたりの記述で感心したのは、天賞堂のプラ製16番製品の説明書です。16番入門者が触れる機会の多い製品ですから、まず冒頭で、「模型は実物を縮小して可能な限りミニチュアで再現したものであるからデリケートな部分もあるので丁寧に扱って欲しい」ということが端的に書かれています。模型と玩具の違い、取り扱いにあたっての留意事項もこのように書いてあれば初心者にも明確に理解してもらえると思います。

 現在では、Nゲージの模型も模型専門店ではなく、量販店の玩具部門で買うことが殆どですから、メーカーの営業戦略や販促媒体も玩具と同じようにならざるを得ないのかもしれませんが、少なくとも「玩具メーカー」ではなく、「模型メーカー」であるカトーの入門向け出版物だけに、少々期待はずれな結果になったと思います。

 小学校低学年の子供たちを入門の年代と位置付けるのならば、昔のカツミのHOゲージの自由形電関のように、いつかはスケール機を、そしていつかはフル編成を、といった夢を持たせるアプローチが欲しいですね。

 管理人も含めて、お客様にも、自由形の機関車からスタートしたと言う方は多いですね。自由形というのは実際に存在しない形式、「模型」というのにプラレール並みの2軸だったりします。でも、「玩具」とははっきり区別されていたし、夢中にもなりました。その後○十年と言う時を経て、念願のスケール機を手に入れたり、フル編成を実現したり、あるいは、その当時身近な存在だったけれどとても買ってはもらえなかった国電が手に入ったり、と今なお、模型に対する情熱は皆さん衰えません。

Eb45

 そのエネルギーの源が何であるかを読み解くことが、業界の発展にもつながってくるように思うのですが・・・。長い目で見れば、Nゲージだってきっと同じことが言えるはずです。

 模型メーカー自身が、もっと積極的に「模型は幼児用の玩具とは違うものだ」ということをアピールしなければなりません。奥の深いものだけに、セルフサービスのディスカウント店で、パッケージの説明を見ただけで初心者がすべてを理解できるはずなどないのです。

 基本的な使い方は難しいものではありませんが、繊細な注意を求められる部分は多々あると思います。ですから、「3時間で楽しむ・・・」だとか「2日で作る・・・」などといった簡単さばかりを強調するのもどうかと思います。鉄道模型は3時間や2日で終わりが見えるほど底の浅いものではないからです。おそらくこの表現は、玩具店や量販店への拡販を意識したものだろうとは思いますが。

 「対象年齢8歳以上」ということは、小学校3年生以上ということです。このくらいの歳になれば、事細かな注意事項があったとしても、「プラレールと違って、大人のものはずいぶん注意することがあるんだなあ」ということで、自分からすすんで理解しようとしてくれるはずです。背伸びをしたい歳ですから、難しい漢字や言葉があってもどんどん自分で読み進んでくれるはずです。であれば、「簡単に出来る・・・」というようなことよりも、鉄道模型の基本的な規格(運転電力が直流12Vであるとか、右側+で前進など)や、なぜ猛スピードで走らせたり、急停止や急逆転をさせてはいけないのか、などの基礎知識をまずは冒頭に整理してまとめておくべきだと思います。こうした事柄は、昔はデパートも含めて模型店で店の人から教えてもらったものですが、セルフ形態で初心者が購入することが非常に多くなった現在では、案外きちんと伝わっていない部分だからです。この本では、そうした事柄は載っているのですが、それぞれの記事に分散して記載されているので、全体的な基礎知識ということで把握してもらうのはちょっと難しい感じがします。

 でも、ひたすら車両製品だけを売りまくろうとするこれまでの方向から転換して、新たなユーザーの獲得と、トータルな鉄道模型の楽しみ方をメーカーサイドからアピールする方向になってきたのは歓迎すべきことだと思います。子供たちが目を輝かせて入門し、一生ものの真の鉄道模型趣味へとつなげて行ってくれれば、こんなに嬉しいことはありません。

Lay

 

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