3月25日の中医協
中央社会保険医療協議会は3月25日、診療報酬改定結果検証部会と総会、診療報酬基本問題小委員会を開いた。検証部会では、今年度に実施した「後発医薬品の使用状況調査」の結果(速報)を公表。それによると、後発品への変更を可能とする処方せんの74.8%で、実際には明確な理由なしに変更されなかったことが分かった。また、総会では、昨年の診療報酬改定後(7月1日現在)の主な施設基準の届け出状況を厚生労働省が報告したほか、今年6月に実施する医療経済実態調査の実施案と要綱案を了承した。基本小委では、DPC評価分科会の西岡清分科会長が報告した「新たな『新機能評価係数』に関する検討の経過報告2」を基に、来年の診療報酬改定で導入する新係数の候補について話し合い、「在宅医療への評価」など10項目は検討対象から外すことになった。また、「一定のルール」を設定することを条件に、DPC対象病院による出来高算定への自主退出を可能とすることなどで合意した。
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■「理由なしに変更せずが大きなネック」
検証部会が公表した「後発医薬品の使用状況調査 結果概要(速報)」によると、昨年12月に発行された全処方せんの65.6%が「後発医薬品への変更不可」欄に署名がなかったのに、後発品に変更していたのは、このうちの6.1%にとどまっていた。
変更しなかった理由としては、「後発医薬品が薬価収載されていないため」が10.2%、「患者が希望しなかった」が8.9%で、74.8%では明確な理由が挙げられていなかった。
遠藤久夫委員(学習院大経済学部教授)は理由なしに変更しなかった74.8%について、「ある意味、ここが一つのネックになる。原因を考えてみる必要がある」と指摘。牛丸聡委員(早大政治経済学術院教授)も、「医者はいいと言っていて、患者も拒否していない。すると、薬局に原因があるのか」と述べ、原因究明の必要性を強調した。
牛丸委員はまた、後発品の使用経験がある患者の17.4%が、「できれば先発医薬品を使用したい」と回答していることを指摘し、「実際に(後発品を)使ってみて、何かよくなかった理由があるのかを知りたい」と述べた。
これに対して白石小百合委員(横浜市立大国際総合科学部教授)は、後発品の使用に必要なことを聞いた質問で、「効果がある」(73.5%)や「副作用の心配がない」(58.0%)、「薬代が安くなる」(50.5%)などが上位を占めていることを指摘。「直接的な答えにならないと思うが、これらが一つのヒントになるのではないか」との見方を示した。
また、厚労省の磯部総一郎薬剤管理官は、後発品に変更された患者が、2回目以降に使用を希望しなかった理由として、「効果に疑問があった」(23.1%)に次いで「使用感が合わなかった」(22.9%)を挙げる回答が多いため、「外用剤の張り心地などを含めた使用感も、大きな要素になっていることが読み取れる」と分析した。
※【後発品可の処方せん、薬局の7割超が先発品使用】もご覧ください。■「入院時医学管理加算」の届け出が大幅減
総会で厚労省が報告した「主な施設基準の届け出状況」(昨年7月1日現在)によると、勤務医の負担軽減策として2008年度改定で基準が見直された「入院時医学管理加算」と「ハイリスク分娩管理加算」に関しては、共に届け出機関数が前年同期を下回った。このうち「入院時医学管理加算」の届け出医療機関数は、07年の206機関から88機関と大幅減。「ハイリスク分娩管理加算」も、07年の708機関から623機関に減少した。
邉見公雄委員(全国公私病院連盟副会長)は、「入院時医学管理加算については、各地域の中核的な病院から、絵に描いたもちのようで取りにくいという意見が多数来ている」と訴えた。
一方、承認された49件の医療機器は、医科では区分A2(特定包括)が25件、区分B(個別評価)が22件、歯科では区分A2とBが共に1件だった。
医科の区分A2では、ホルター心電計の「防水ホルター心電計 SEER Light WP」(スズケン)、低周波治療器の「アスリートmini」(伊藤超短波)、パルスオキシメーターの「オキシトゥルー」(アイビジョン)など。区分Bでは、人工股関節用材料の「バイオメットマグナムシステム」(バイオメット・ジャパン)、中心静脈用カテーテルの「SMACプラス」(日本シャーウッド)、両室ペーシング機能付き植え込み型除細動器の「コンサルタ CRT−D」(日本メドトロニック)など。
また、今年6月に実施する医療経済実態調査では、これまで調査実施の翌年に公表していた本報告については集計せず、今年10月の速報値に公表を一本化することになった。今回の調査では、従来の単月データ(今年6月分)に併せ、直近の事業年度の損益状況や給料なども集計する。さらに、法人立の病院や診療所、薬局に関して、税引き後の当期純損益を集計することも決まった。これにより作業量が増えることを踏まえ、調査項目は簡略化する。
このほか、2月末で専門委員を退任した黒崎紀正委員(日本歯科医学会副会長)の後任に、日本歯科医学会総務理事の住友雅人委員(日本歯科大生命歯学部教授・学部長)の選任が報告されたほか、米バクスター社の骨髄移植キットの製造中止に伴い、米バイオアクセス社製の代替品「ボーンマロウコレクションシステム」の保険適用を中医協の合意事項にない特例として認めたと厚労省側が説明した。
※【「医療クラーク加算」の届け出は730機関】もご覧ください。■「在宅医療への評価」など10項目は次期改定の対象外に
小委では、DPC評価分科会の西岡分科会長が報告した、現時点で新係数の候補と考えられる37項目を来年の診療報酬改定で新係数として導入すべきかを話し合った。その結果、分析に必要な「データの速やかな把握が困難か、DPCにおける急性期として評価することが困難」とされた10項目については、来年の改定に向けた検討対象としないことになった。
西岡分科会長が小委に報告した「『新機能評価係数』に関する検討の経過報告2」では、これまでに浮上している候補37項目を、「DPCデータを用いて分析が可能であるもの」や「既存の制度との整合性等を図る必要があるもの」など4つに分類している=表=。
厚労省は、来年の診療報酬改定で新係数に採用する項目として、データ分析が可能なものを優先的に検討する方針を示しており、検討対象から外れたのは、必要なデータを速やかに把握するのが難しいか、DPCにおける急性期として評価すること自体が困難とされた「在宅医療への評価」などの項目。
「既存の制度との整合性等を図る必要があるもの」など、これ以外の項目については次回以降に話し合う。
意見交換で、厚労省保険局の宇都宮啓企画官は、「このペーパー(経過報告2)は、あくまで分科会の意見。小委で、この項目は別のカテゴリーの方がふさわしいといった意見を頂きたい。今後の作業の時間を考えると、来年の改定に間に合わせないといけない。データを取るのが難しいものについては、例えば、係数の議論を今後も続けていくべきか、来年の改定には間に合わないのではないかというご意見も頂きたい」と要請した。
藤原淳委員(日本医師会常任理事)は、「DPCは、ある程度重症の急性期入院医療を担うものだと思っている。『地方の診療所や中小病院へ医師を派遣することに対する評価』や『在宅医療への評価』などは、こうした概念からかなり外れている。もっと言えば、がんも慢性疾患。同じように議論が進められるのには違和感がある。DPCが急性期の看板を掲げる意味は、既になくなっているのではないか」などと述べた。
中川俊男委員(同)も、「医師派遣への評価」について、「医師不足の最大の原因は、絶対数の不足と共に医師の偏在だ。派遣できる病院には、そもそも医師が偏在している。医師不足の原因をつくった病院が(他の医療機関に医師を)派遣するのを評価してくれという見方もでき、この項目は非常に問題だ。言葉は悪いが、勝ち組のおごりだと思う」と強く反対した。
藤原委員の意見を受けて厚労省側が、▽中医協で合意済みの急性期医療の定義はその後、変更されていない▽DPCでは、ケアミックス病院の急性期病棟だけを評価することが決まっている―などと説明すると、藤原委員は、他院への医師派遣や在宅医療の取り組みが急性期医療に該当するとは「とても思えない」と、あらためて指摘した。遠藤久夫委員長が「これらの項目を外すべきという意見か」と確認すると、藤原委員は肯定した。
これに対し西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、小委で了承済みの「『新機能評価係数』の基本的考え方」の中に、地域医療に対する貢献度への評価を検討する方向性が示されていると指摘。「医師派遣への評価」などの項目について、「お門違いなものというとらえ方は違う」と藤原委員に反論した。
さらに、今回、検討対象から外れた10項目について、「どれも重要だ。いずれ新係数にする可能性がある項目としては残していただきたい」と求めた。
※【新係数候補、10項目は検討対象外に−10年度改定】もご覧ください。
■DPCの自主退出、一定のルール下で可能に
一方、厚労省が提示した「DPCにおける今後の課題(案)」では、参加と退出をめぐる論点として、一定のルールの下でのDPC対象病院から出来高への自主退出と、10対1入院基本料の届け出などDPC対象病院としての条件を満たせなくなった場合の取り扱いを挙げた。また、DPC対象病院からの自主退出を可能にする場合の論点としては、▽退出する際のルール▽いったん出来高に退出した病院によるDPCへの再移行に対する考え方―を提示。DPCからの自主退出について反対意見はなく、今後はその際のルールを具体化することになった。
退出の際の一定のルールについて、宇都宮企画官は「極端に言えば、DPCがもうかるかどうかで出たり入ったりされたのでは困る」と強調。また、「病院全体として(DPCから出来高に)変わるのであれば、患者さんへの周知期間を設けないと、突然、支払い方法が変わったら、納得できない面があるかもしれない」とも指摘した。
中川委員は、「病院の機能は、患者さんの状況などで変わる。それでDPCがいいのか、出来高がいいのかをデータを取りながら判断している。『もうかるかどうか』という表現は慎んでいただきたい」と、宇都宮企画官にクギを刺した。さらに、一定のルールについて円滑に議論するため、たたき台の提出を求めた。
小島茂委員(連合総合政策局長)は、「診療報酬に合わせて2年に一度にするのか、年初にするかというところが、一つあるのではないか」と述べ、一定のルールをめぐる議論では、DPCからの退出時期が論点の一つになると指摘した。
西澤委員は、「(DPC対象病院としての)条件を満たさなくなった場合と、自主退出の場合のルールがどう違うかも検討すべきだ」とした。
厚労省はDPCをめぐるこのほかの課題として、▽調整係数を段階的に廃止すべきか▽調整係数廃止後の包括評価点数の在り方▽09年度DPC準備病院を募集すべきか―の3項目を提示。このうち調整係数の廃止については、経過措置を設けて段階的に実施することで合意した。
対馬忠明委員(健保連専務理事)は、調整係数の廃止方法について、「1回だけではなかなか難しいのではないか。どの程度で廃止するかは、新係数の議論の結論なり、方向性なりが出ないと難しい」と指摘。これに反対意見はなかった。
これ以外の課題については、次回に話し合うことになった。DPC準備病院の募集について厚労省は、4月中に結論を出す必要があると説明した。
※【DPC対象病院、自主退出可能に−中医協基本小委が合意】もご覧ください。
更新:2009/03/30 16:34 キャリアブレイン
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