3/26日付
最新医療技術を誇る新装自衛隊中央病院 10階建て、21の診療科、屋上に大型機対応へリポート 50余年ぶりに新装成った自衛隊中央病院。自衛隊員が後顧の憂いなく任務にまい進できるよう最新の医療技術を持ち、最高の医療を提供し、さらには大規模災害にも耐えられる機能を備えた自衛隊の中核病院だ。完成までに13年の歳月を費やした新病院の施設の特徴などをまとめた。 新しい中央病院の全景。屋上にはCH47ヘリが着陸できるヘリポートもある 熱傷対応の集中治療室 感染症患者専用の手術室も 災害時には多数の傷病者を収容できる1階ロビー 院内には患者専用の食堂も設けられている 昭和31年に開院した自衛隊中央病院は、病棟を十字型に配置する斬新な建物配置と最先端の設備を誇り、「東洋一の病院」と高く評価された。その伝統を受け継ぐ新病院の建て替えでは、最先端の医療設備や技術を盛り込んだのはもちろん、大規模災害や有事の際には、トリアージスペースの確保や受け入れ患者を2倍まで増床できるなど、自衛隊衛生の中核を担う体制を整えた。 新病院は(1)大規模災害等の危機に強い病院(2)信頼される病院(3)自衛隊病院の中核として最新医療技術を保有する病院ーーの三つの理念が盛り込まれ、近代的で最新の医療を提供できる病院に生まれ変わった。 地震や地下鉄サリン事件のような大量傷病者発生が想定される大規模災害に備え、病室に予備のベッドを置けるスペースを確保して通常の2倍まで増床が可能なほか、トリアージスペースの確保や、屋上にはCH47ヘリも離発着できるヘリポートを設置するなど、災害や有事に即応できる「危機に強い病院」になっている。 また、旧病院に比べ、病棟の面積や個室率が増えた上、リハビリに必要な水治療室や作業療法室が設置されるなど、医療・療養環境は大幅に向上しており、「信頼される病院」としての設備は十分だ。 また、ハード面では、電子カルテをはじめ、医薬品やシーツなどの衣類など院内で必要な物品を運ぶための搬送システム、CT・MRI装置の増加、メンタルヘルス病棟を導入するなど、「最新医療技術を保有する病院」の体制を整えた。 他の自衛隊病院に先駆けて熱傷にも対応できる集中治療室や感染症患者専用の手術室を設けるなど、自衛隊の任務に必要不可欠な最先端の医療技術が結集されており、「自衛隊病院の中核」としての期待も高まっている。 地震の最中にも手術可能 「免震構造」取り入れ 建物に伝わる地震の揺れを軽減する鋼棒ダンパー 新病院は阪神大震災や関東大震災級の地震でも倒壊しない最新の免震構造を取り入れている。 病棟は地上10階建てで、高さ約40メートル、地下は3階、約18メートルあり、この計13階分を守るのが地震力を吸収する「免震装置」だ。 筋違などを入れた耐力壁と補強金物などで補強して、地震の揺れに耐えられるようにした耐震構造に比べ、免震構造は、地盤が速く激しく揺れても、建物は追随せずゆっくり動き、地震力を弱めて建物や設備の損傷、倒れてきた器材による人的被害を防げる。 新病院では、地下2階部分の上部構造と下部構造の間に、水平方向の地震力に対し、筒状の積層ゴムが左右に大きくうねることで激しい揺れも軽減できる「アイソレーター」を計145台設置。 さらに鋼棒の変形で地震力を軽減し、花弁状の形状で全方位の揺れにも対応できる「鋼棒ダンパー」も72台設置されている。この2つの免震材料により、震度7級の揺れを震度3ほどに軽減することが可能で、地震の最中にも外科手術を続けられるという。 新病院は阪神大震災や関東大震災級の地震でも倒壊しない最新の免震構造を取り入れている。 病棟は地上10階建てで、高さ約40メートル、地下は3階、約18メートルあり、この計13階分を守るのが地震力を吸収する「免震装置」だ。 筋違などを入れた耐力壁と補強金物などで補強して、地震の揺れに耐えられるようにした耐震構造に比べ、免震構造は、地盤が速く激しく揺れても、建物は追随せずゆっくり動き、地震力を弱めて建物や設備の損傷、倒れてきた器材による人的被害を防げる。 新病院では、地下2階部分の上部構造と下部構造の間に、水平方向の地震力に対し、筒状の積層ゴムが左右に大きくうねることで激しい揺れも軽減できる「アイソレーター」を計145台設置。 さらに鋼棒の変形で地震力を軽減し、花弁状の形状で全方位の揺れにも対応できる「鋼棒ダンパー」も72台設置されている。この2つの免震材料により、震度7級の揺れを震度3ほどに軽減することが可能で、地震の最中にも外科手術を続けられるという。 フロアガイド 10階建ての新病院には21の診療科などがどのように配置されているのか、1階から順に案内してみよう。 1階の正面入り口を入ると、右手に2階へと続くエスカレーター、左手に受付と会計のカウンターがあり、患者はここで受け付けを済ませ、1、2階の各診療科で診察を受ける。 1階の待合室付近の壁には、小さな扉が多数ある。災害や有事の際に大量傷病者が運び込まれることを想定して壁の中には、医療機器や酸素を供給できるコンセントなどがあり、緊急時には1階のエリアだけで数百人の傷病者の受け入れや応急処置ができるようになっている。 また、1階には整形外科をはじめ、リハビリ科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、放射線科、外科、呼吸器外科、脳神経外科、心臓血管外科、麻酔科があるほか、腫瘍などの脳疾患の早期発見や診断に欠かせない「ポジトロン断層撮影装置(PET)」など最新の機器をそろえた放射線・内視鏡の検査室がある。 患者用の食堂や家族が泊まれる部屋も 正面入り口のエスカレーターで2階に上がると、歯科、産婦人科、内科、眼科、小児科、皮膚科、形成外科、精神科が並ぶ。建物中央エレベーターでさらに3階に上がると、診療に欠かせない病理検査室や総務課などの管理部門の部屋が配置されている。 4階は手術室や集中治療室、透析室、血管撮影室、リハビリ室が入った新病院の心臓部ともいえる最重要エリアだ。特に、手術室・ICUエリアは、無菌手術室をはじめ、感染症患者専用の手術室や、熱傷を負った患者に対応する薬剤が入った浴槽が設置された熱傷室などが設けられており、感染症や重症患者の受け入れ体制は万全だ。 これら患者の管理には電子カルテを導入して患者情報の共有化を図った。また、人手がかかる器材や医薬品の配送には、専用通路や搬送システムを取り入れ、省力化を実現。手術で使用した器材を専用の通路で回収する回収廊下や、医薬品や衣類などをコンテナやカプセルで受け取れる搬送システムを館内に張り巡らせた。 東西に分かれた病棟はそれぞれ色で分け、病室には植物の名をつけて分かりやすくしているのも特徴の一つ。ちなみに1床室118、2床室32、3床室2室、4床室が76室。このほか患者用の食堂も設けられるなど従来にはないアイデアが凝らされている。 5階から9階までは病棟となっており、特別病室や患者の家族が泊まれる部屋も設置されている。 急患や大量傷病者への対処体制も万全で、急患を運ぶためのヘリポートが屋上に設置されており自衛隊で使用するCH47Jヘリのような大型機も降着できる。1階にはシャワー6台が設置された除染室もあり、地下鉄サリン事件のような化学兵器を使ったテロにも対処可能で、災害や有事に強い病院を実現している。