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きょうの社説 2009年3月30日
◎教員の職種拡大 能力主義の定着につなげたい
石川県の新年度教職員人事異動で、今年度から導入した「副校長」「主幹教諭」「指導
教諭」の新職種がさらに拡大したのは、学校現場に能力主義を定着させる点でも望ましいことである。学校は鍋ぶたのつまみ程度しか管理職がいない「鍋ぶた型」組織と言われてきたが、こ れらの職種が増えれば学校はより組織化される。うまく機能させることで、教員の力を伸ばし、教育の質を高める環境づくりにつなげたい。仕事ぶりや能力に応じた給与体系を定着させる弾みにもしたい。 教員の新職種は学校教育法改正で今年度から設置可能になった。多様化する教育課題に 的確に対応するのが狙いである。校長と教頭の間に置かれる副校長は校長を補佐して学校経営に参画し、主幹教諭は管理職を助けるとともに校務に一定の責任をもつ。指導教諭は他の教員の指導、助言を行う。 石川県では今年度、副校長四人、主幹教諭二十三人、指導教諭二十人が小中高に配置さ れ、新年度は新たに副校長四人、主幹教諭十四人、指導教諭十人が加わる。 新職種は任意設置のため、都道府県で対応が分かれている。教組の一部からは「管理体 制の強化につながる」「組織の風通しが悪くなる」といった批判も出ている。確かに、管理層が厚くなれば屋上屋を架す状況になりやすく、責任のもたれ合いが生じる懸念もある。だが、学校も一つの組織体であるなら、効率的に機能させ、教育の質の向上につなげねばならない。少しずつにせよ変えていくことが大事である。 学校が組織のかたちを整えていけば、一層問われるのが校長のリーダーシップや学校運 営能力である。副校長や主幹教諭などに雑務が集中し、負担がかかりすぎればポストの魅力も半減しかねない。校長は個々の役割を明確化し、仕事にやりがいが持てるよう目配りする必要がある。 外部での研修制度も手厚くなってきたが、教員の能力を磨く最たる現場は学校である。 教科指導に優れた「優秀教員」も含め、能力の高い人材については積極的に登用し、切磋琢磨できる環境を整えてほしい。
◎繊維で北陸連携 三県の強みで反転攻勢を
北陸三県が連携して繊維産業の活性化と集積(クラスター)を図る計画が、企業立地促
進法に基づき経済産業省の認定を受けた。産官による「北陸三県繊維産業クラスター」が新年度に設立され、商品開発や販路開拓、人材育成などの事業が行われることになっている。複数県にまたがる地域産業活性化計画が企業立地促進法の認定を受けるのは初めてであり、広域認定のモデルケースとなるよう、富山、石川、福井それぞれの強みを生かして連携の実を挙げてもらいたい。北陸に限らず国内の繊維産業の経営環境は厳しさを増している。中国の供給過剰と国内 需要の低迷が続いているところを世界同時不況に見舞われ、非衣料分野の需要も落ち込むという状況である。いわゆる川上から川下まで大変厳しい状況にあるが、世界経済が転換期にあるからこそ、高度な技術を持つ日本の繊維産業の重要性が増すという思いが業界に強い。 地域の関連企業や機関が協力して新製品や技術開発に取り組み、産地の力をつける産業 クラスターの考え方は、産業振興の新しい手法として期待が大きく、反転攻勢のテコとしてもらいたい。 最近の動きでは、石川、富山県が合同で健康関連産業の開発をめざす事業が、文部科学 省の第二期の「知的クラスター創成事業」に採択されている。行政の枠を超えた合同のクラスター事業は実験的な要素もあるが、北陸の繊維業界では民間企業を中心にした「東レ合繊クラスター」が二〇〇四年から活動しており、商品開発に成果を挙げてきている。 新たに設立される北陸三県繊維産業クラスターにとって、先行の東レ合繊クラスターと の関係をどうするかが課題の一つである。場合によっては「合流」も選択肢に挙げられよう。 三県の繊維クラスター事業は二〇一一年度までの三年間、集中的に行われ、原則として 富山県は研究開発、石川県は人材育成、福井県は販路開拓を担うことになっている。責任体制を明確にする狙いもあるのだろうが、役割分担にこだわり過ぎてもなるまい。
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