◇浜の味、ゆであげ１分、塩加減が決め手

　瀬戸内に春の訪れを告げるイカナゴ漁。新鮮なイカナゴを大ザルに入れ、煮立った釜でサッとゆで上げる「釜揚げ」は、明石海峡を望む浜一帯の早春の風物詩だったという。少年時代を神戸で過ごした東京都大田区の西村真逸さんの手紙には、こう書かれていた。「旧制の神戸三中生だったころ、イカナゴ舟の水揚げを手伝い、浜で食べた釜揚げの味が忘れられません。毎年春になると、家内が動ける範囲の魚屋やスーパーを回り、探してくれていますが、どうしても見つかりません」－－。阪神間の浜でも、釜揚げの風景に、もう出合えないのだろうか。 続きを読む