コラム

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甘くはない「猫の生活」


  多忙な日常生活に疲れ果て、「来世は猫になりたい」と願う御仁も少なくなかろう。昼寝に明け暮れる猫の生活は、安穏の象徴である。しかし、データに見る限り「猫の生活」も甘いものではなさそうである。関西の保健所長を歴任された著者は、予防注射や死体処理の統計から、犬、猫の死亡統計を発表している。

 それによると、全国の人口10万あたりの犬の推定頭数は、4324頭(平成10年)、都市部である尼崎では同2895頭でともに微増傾向にある。死亡数でみると、人口10万対444頭の死亡が確認され、うち291頭(66%)の犬が火葬されたが、半分以上は登録も予防注射も受けていない犬であった。ゴミとして処理された路上死は同97頭(22%)、あわれ捕獲、引き取り処分となった犬は同46頭(10%)であったという。

 猫の場合はもっと哀れである。猫には予防注射などの機会が無いため、正確な匹数は把握できない。死亡数だけでみると、人口10万対猫の死亡数は870匹で犬の約2倍。火葬という手厚い処遇を受けた猫は同233匹(全死亡の27%)で、犬より格段に火葬率が低い。主人に忠義を尽くす犬と比べれば、大事にされないのであろうか。また保健所に引き取られ処分される猫は同211匹(24%)で、94%が子猫という哀れな数字が出されている。さらに驚くべきは、ゴミとして処理された路上死の猫で、同386匹、死亡数に占める割合は44%と犬の2倍に上る。つまり6割以上の犬は火葬してもらえるが、猫は6割以上が路上死または処分ということになる。

 主人に媚びへつらわず、マイペースで生きる所が猫の良いところと言われるが、それには「高い路上死亡率」という相応の代償がつきまとうようである。

文献:

ペットの生存数とその行方
金田治也:日本医事新報 No. 4061,63−65,2002年2月23日号

 





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