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くらし

国と医師の対立深く レセプトのオンライン請求義務化 

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治療内容などを書き込む紙のレセプト。2年後には原則廃止される予定だ=神戸市内

 レセプト(診療報酬明細書)のオンライン請求の完全義務化をめぐり、医師団体と国の対立が深まっている。事務作業の効率化や予防医学への活用などの“効能”をうたう国に対し、日本医師会など三団体は昨年十月、義務化撤廃を求める声明を発表し、今年一、二月には全国の医師がオンライン請求の義務がないことの確認などを求め横浜地裁に提訴した。「地域医療が崩壊する」とまで批判されるこの問題。患者への影響は-。(萩原 真)

 レセプトとは、医療機関が健保組合などに提出する書類で、投薬や注射などの医療行為が記されている。保険者が委託した審査機関が内容をチェックした後、医療費が支払われる。

 国が唱えるメリットは、オンライン化による医療保険事務のコスト削減と、データベース化したレセプト情報による疾病予防の二つだ。厚生労働省の試算では、国民健康保険を除く医療保険を担当する審査・支払機関だけで〇七年度と比べ、五十五億円の削減効果があるという。

 これに対し、医師側は、数百万円ともされる設備投資や機器操作が高齢医師や小規模診療所には負担▽情報漏えい対策が万全でない-といった問題を指摘している。

 日本医師会によると、オンライン化を機に廃院を考えている医療機関は約三千六百。兵庫県保険医協会の調査では、回答した医師百七十七人中二十二人がオンライン義務化に「対応できない」とし、うち十三人は「保険診療をやめるか廃院する」と答えた。

 もっとも、当事者の間では議論百出だが、患者への影響となると、メリット、デメリットはあまり提示されていない。

 医療を“消費者”の視点からとらえるNPO法人「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」(大阪市)の山口育子事務局長は「オンライン化によって、患者にとってはレセプトを開示請求した際、従来よりも開示にかかる時間が短くなるメリットはあると思う」と一定評価はしながらも、手放しでは賛同できないという。

 山口さんが指摘するのはレセプトデータの利用方法だ。厚労省は「診療報酬がどの科に手厚くなっているかなどの検証に使う。保険者はデータを分析し保健指導などに活用できる」とメリットを挙げるが、山口さんは「レセプトはあくまで請求書で、医療行為の詳しい中身までは分からない。検査をするため『○○の疑い』などと一枚のレセプトに多くの病名が並ぶこともあり、統計などに正確に使えるのかは疑問だ。情報漏えいへの不安もある」と疑問を呈する。

 医療消費者ネットワークMECON(東京)代表の清水とよ子さんも「レセプトの標準化や審査の厳格化で、過剰診療や不正が少なくなるなら歓迎」としながらも、「厚労省は医療費抑制に躍起になっており、重要なのは医療内容の適正化と質向上。あと二年で強制するというのも酷で、現場の混乱を招くのでは」と話している。

 レセプトのオンライン請求 厚生労働省によると、1年間に発行される紙レセプトは全国で16-17億枚(2006年度)。現在は手書きや電子媒体など4種の提出方法が認められているが、08年度から医療機関の規模とコンピューターの導入状況に応じ、オンライン請求が義務化され、11年4月からは完全実施。請求数が少ない施設はさらに数年の猶予がある。社会保険の審査機関の調査では今年2月末現在、医科のオンライン請求普及率(施設数ベース)は全国で6・8%、県内では10・0%。

(3/30 11:21)


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