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【健康】

被害遺族らの連絡協が呼び掛け 『イッキ』『酒の強要』やめて

2008年4月4日

『飲めません!』 コースターで予防対策

 大学の新入生歓迎コンパや企業の歓迎会の季節。急性アルコール中毒で救急搬送される若者も増える。死亡事故も毎年のように起きている。イッキ飲み防止連絡協議会(石谷師子代表)は、ことしも防止キャンペーンを実施。若者たちに酒の怖さを訴え、「飲酒を強要しない文化」を呼び掛けている。 (安藤明夫)

 ことし三月、岡山県にある神戸学院大の学外厚生施設で、クラブ合宿中の二年生の男子学生(20)が急死した。

 アルコール薬物問題全国市民協会の調べでは、クラブの宴会で四リットルの焼酎を回し飲み。この学生が最後の番で、残りを飲み干した。酔いつぶれて寝かされている間に吐いた物がのどに詰まり、窒息死したとみられる。

 同協会の今成知美代表は「強い酒を短時間で大量に飲ませたうえ、救急車を呼ばずに放置したことが原因だと思う。急性アルコール中毒による死亡事故の典型」と話す。

 イッキ飲み防止連絡協議会の調査では、大学や会社の宴会で「イッキ飲ませ」などによる急性アルコール中毒で亡くなった人は、一九八三年以降の二十六年間で七十九人に達する。

 体内でアルコールが分解される速度は、体重五〇キロの人で一時間に平均五グラムほど。日本酒一合またはビール中瓶一本を分解するには四時間かかる。イッキ飲ませなどで短時間に大量の飲酒をすると、分解が間に合わず血中濃度が急上昇。「ほろ酔い」「酩酊(めいてい)」を通り越して「泥酔」や「昏睡(こんすい)」から死に至る危険がある(メモ参照)。

 同協議会では▽イッキはさせない▽酔いつぶれた人を絶対に一人にしない▽横向きにして自然に吐かせる▽おかしいと思ったらためらわずに救急車を呼ぶ−の四点を、命を救うポイントとして啓発している。

 分解速度は、個人差も大きい。日本人の一割は「まったく飲めないタイプ」、三割は「飲んだら悪酔いするタイプ」で、少量で急性アルコール中毒になったり、肝臓などの臓器にも害を受けやすい。逆に六割の「悪酔いしないタイプ」は、アルコール依存症の危険がつきまとう。

     ◇

 同協議会は、イッキ飲ませによってわが子を亡くした遺族が中心になって一九九二年に結成。毎年この時期に、イッキ飲みやアルコール・ハラスメント(酒の強要、暴力、暴言など)の防止を呼び掛けてキャンペーンを展開している。

 酒メーカーや全国大学生協連も協力するキャンペーンは、今年で十六回目。全国の大学六百二十校にポスターやチラシとともに、予防対策を促す要望書を送った。また、希望者にはポスターやチラシを送料着払いで送るほか、宴会での「お断りアイテム」として四種類のコースター二千セットを作った。「イッキ飲めません!」「車なので飲めません!」「体質的に飲めません!」「限界なので飲めません!」の四つで、うち一枚を希望者に送る(送料無料)。

 申し込みは、アルコール薬物問題全国市民協会内の事務局=電03・3249・2551=へ。同協会ホームページ=www.ask.or.jp=に詳しい情報を掲載している。

 【酔いの4段階】ほろ酔い(血中濃度0.02%以上0.1%未満)は、アルコールの作用で大脳皮質がまひし、気分がほぐれる状態。まひが大脳辺縁系に及ぶと酩酊(同0.1%以上0.2%未満)で、ろれつが回らなくなったり、足元がふらつく。大脳全体と脳幹、脊髄(せきずい)にまひが及ぶのが泥酔(同0.2%以上0.3%未満)で、酔いつぶれ、窒息死の危険が高まる。さらに脳幹から延髄にまひが及ぶと、昏睡(0.3%以上0.4%未満)。たたいても反応がない状態から、死に至る。

 

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