千葉県知事選は俳優で元衆院議員の森田健作氏が当選した。知名度と政党色の薄さが有権者を引きつけた。「千葉を日本一にする」と威勢いい。まずはその元気を財政再建に持ち込んでもらいたい。
宮崎県の東国原英夫知事は観光PRぶりが、大阪府の橋下徹知事は国などへの激しい批判が話題に上がる。ともに行政経験はないが、タレントだった両知事の活躍ぶりは千葉県知事選にも影響したのではないか。
森田氏の知名度は抜きんでていた。前回の知事選では堂本暁子知事に約六千票差の惜敗。二度目の挑戦で名前は浸透していた。
他陣営が県財政立て直しなどの現実の課題克服を訴える一方で森田氏は「成田−羽田間にリニアを通す」「観光立県をめざす」と夢のあるフレーズを繰り返した。明るい言葉に希望を抱いて一票を投じた人もいるだろう。
自民と民主両政党のふがいなさは森田氏には追い風となった。中央では麻生政権への国民の支持は依然として低迷しており、民主党も西松建設の違法献金事件で小沢一郎代表への風当たりは強い。
加えて、両党県連の動きも迷走した。民主は白石真澄氏の推薦を取り消し、吉田平氏に乗り換えた。自民は白石氏擁立で民主、公明との相乗りを模索しながらまとまらず、自主投票になった。
来る総選挙を占う県知事選とされたが、有権者の政治不信が募っていることは裏付けたようだ。
千葉県も他府県と同様、財政状況は厳しい。二〇〇九年度末の県債残高は二兆六千億円と見込まれる。堂本県政の八年間で借金は六千五百億円増えた。
森田氏は財政再建の必要性を認めながらも「コストカットはもう限界」といい「県の収入を上げることに全力を注ぐ」と唱える。
しかし、財政は福祉や医療、教育といった生活関連の施策に配慮しつつ、費用削減を続けなくてはならない。公社など外郭団体の見直しは最優先課題だ。橋下知事が過激な発言を続けながら府民から支持が高いのは、悪化一途の府財政を改善させる手腕を示したからだろう。
県産品や観光をPRするだけでは県政は立ちゆかなくなる。歳出の刈り込みも進めるべきだ。
国直轄事業の地方負担金をめぐり、新潟や大阪の知事から見直しを求める声が上がっている。国会議員経験者の森田氏であればこそ、地方の切実な声を政府に届け、動かす役割も期待される。
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