不況脱出のため、将来につながるような内需拡大策が求められる。その有力候補のひとつが介護・保育の分野だ。予算を増強し十分な施設、サービスを確保するとともに働く人の待遇改善を図る必要がある。またこの分野は多くの規制があり、民間の自由な参入を妨げている。追加景気対策による一時的な歳出増だけでなく、財源確保の対策も含め制度のありかた自体もきちんと議論すべきだ。
高齢化の進展で介護のニーズは急激に伸びている。だが、受け皿の整備が追いつかない。高齢者施設はどこも開設と同時に入居待ちのリストができる。4月に保険料を引き下げる自治体には、サービス提供業者があらわれず利用が抑えられたのが原因のところもある。
保育も状況は同じだ。施設が不足し、都会で働く母親たちは、保育所に入所しやすい時期を考慮して出産するともいわれる。この春は不況で働きに出る主婦が増え、認可保育所に入れない待機児童が急増した。
需要があるのになぜサービスが提供されないのか。大きな理由が規制の壁と、それによる公費配分のゆがみだ。
2000年に介護保険が導入された際は民間活力の活用がうたわれた。しかし特別養護老人ホームなど施設型介護は企業や非営利組織(NPO)には開放されなかった。
加えてコスト抑制のため国・自治体が施設のベッド数を制限し、新設を阻んでいる。こちらは民間が運営する有料老人ホームなども対象だ。規制がない在宅介護に比べて、施設の介護サービスは都市部を中心に圧倒的に不足している。これを早急に改善する必要がある。
保育の場合、民間の参入は自由だが市町村の認可を受け、補助金をもらうには面積や職員数など国が定める基準を満たさなければならない。自治体の中には支出増を嫌い基準を満たしても認可しない例もある。
しかも社会福祉法人には施設費が補助されるが、民間企業やNPOには出ない。これでは保育事業への参入に二の足を踏まざるをえない。
認可保育所に入所できなければ、親は料金が高く一般的に質の低い認可外保育所を利用せざるをえない。同じ税金を払いながら不公平だ。
介護・保育とも処遇の低さから人材不足がいわれており、この解決も欠かせない。政府は4月にまとめる経済成長戦略で介護ヘルパーなどの人件費補助を打ち出す方向だが、当座の対策だけでなく中・長期的な制度改革も忘れてはならない。