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「重症救急」崩壊の危機 広島市の一部診療科 '09/3/30

 ▽当番病院数、来月から不足

 入院や手術が必要な重症患者を診る二次救急を休日や夜間に引き受ける広島市内の病院が減り、四月から一部の診療科で必要な病院数を確保できない日が生じることが二十九日、分かった。軽症の来院患者の増加などで疲弊した病院が輪番制の参加を敬遠し、踏みとどまった病院にさらに激務がのし掛かる悪循環が生まれている。(藤村潤平)

 ▽軽症での来院増 負担に

 広島市内で必要な二次救急の病院数は、市と市医師会でつくる広島地区病院群輪番制運営協議会が診療科ごとに決める。うち整形外科は一当番当たり「二病院」が受け持つルールだが、新年度は年間平均で「一・九病院」となり、一九九七年の輪番制開始以来初めて下限を割り込む。十日に一度は当番病院が一つになる計算だ。

 新年度の輪番制には、公立の広島市民病院(中区)と民間の計二十七病院が参加を計画。ピークだった一九九八年度の三十二病院から五減となり、参加頻度が月一、二回にとどまる病院も増えた。

 病院が輪番制を敬遠するのは、軽症患者の来院が増え、診療件数の約九割を占める現状に大きな要因がある。本来受け持つはずの救急患者を断らざるを得なくなったり、当直医師が十分な休息を取れないまま三十時間を超える連続勤務を強いられたりするケースが頻発している。

 事態を重くみた市、市内や近郊の三医師会、広島大病院(南区)などは四月から、二次救急体制の在り方の見直しを始める。同運営協議会の種村一磨委員長は「二次救急は、医師や病院の使命感を支えに成り立っていたがもう限界。新たな手だてを考えなければ崩壊する」と危機感を強めている。

 ▽意識変革が不可欠

 症状を問わず可能な限り患者を受け入れる兵庫医科大救急救命センターの丸川征四郎主任教授の話 患者のニーズに応えるのが医療本来の姿。名乗り出た病院だけが二次救急を担う現制度は時代遅れだ。小規模な医療機関も救急に参加し、軽症者の診療を担うなど、地域すべての医療従事者で支え合うような意識変革が不可欠だ。国はその環境を整えるための制度改革を進めるべきだ。

 ▽救急医療体制

 患者の病気やけがの重症度によって3段階で対応する。軽症者を受け持つ初期(一次)は在宅当番医や夜間急病センター、入院や手術が必要な重症患者を診る二次は輪番制の中規模病院、二次で対応できない重篤患者を受け入れる三次は救命救急センターがある大規模病院などが担う。

【写真説明】腕を骨折した子どもを診る二次救急病院の当直医師(広島市中区)




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