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【社会】

銚子市長が失職 市立病院休止 リコール成立

2009年3月30日 朝刊

 千葉県銚子市立総合病院の診療休止を決めた岡野俊昭市長(63)に対するリコール(解職請求)の是非を問う住民投票は二十九日投開票され、解職への賛成票が有効投票総数の過半数を占め、岡野市長の失職が決まった。五十日以内に市長選が実施される。 

 当日有権者数は五万九千八百四人。投票率56・32%。

 自治体病院休止をめぐるリコール運動で住民投票が実施され、市長が失職するのは極めて異例だ。

 病院休止の責任を問い、約二万三千四百人分の署名を集めて住民投票を実現させた市民団体「『何とかしよう銚子市政』市民の会」は「公約違反」と主張。中核病院の休止で医療不安が広がる中、市民の幅広い支持を得た。

 「敗北」を認めた岡野市長は「病院側から『患者の命を守れない』と聞いた時、病院休止を決断した。その考えは今も変わらず、間違っていなかったと思う」と語った。出直し市長選への出馬については「支持者と話し合って決めるので白紙」と明言を避けた。

 市民の会の茂木薫代表(58)は「市民の力で銚子を復活させた。市長が市民の声を聞いていればこのようなことにはならなかった」と語った。

◆公約違反『ノー』

<解説> 千葉県銚子市の市立総合病院の休止問題をめぐり、二十九日投開票された岡野俊昭市長(63)に対するリコール(解職請求)の是非を問う住民投票で、市民は病院を存続させることができなかった市長に「ノー」を突きつけた。

 岡野市長は二〇〇六年七月の市長選で、病院存続を掲げて当選したが、わずか約二年後に休止を発表。毎年の九億円の支援に加え〇六、〇七年度は計十三億円を追加支援。医師の確保にも奔走したが、かつて三十五人いた常勤医は十二人に減少。病院を取り巻く環境は悪化の一途で「やむを得ず決断した」と釈明した。

 突然の発表に市民は猛反発。政治責任を求める声がリコール運動として広がった。

 休止から半年近くの間、入院や救急の受け入れを市外の病院に頼るケースが増え続け医療不安は強まるばかりだった。だが、岡野市長は「通院などで不便をかけるが、医療難民は生じていない」と言い切り、リコール運動を批判した。その姿勢に多くの市民は疑問を抱き、解職賛成に傾いたといえる。

 今後の課題は市立病院の再開だ。市は委託先に名乗りを上げた医療法人の選定を進めるが、医師の確保など問題は山積している。さらに新市長が決まるまで市政は安定せず、市民が望む再開への道のりは険しそうだ。 (千葉支局・宮崎仁美)

 

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