二十九日に投開票された銚子市の岡野俊昭市長(63)に対するリコール(解職請求)の是非を問う住民投票は、市立総合病院休止への市民の怒りが原動力となった。リコール運動は全国の注目を集め、住民にとって自治体病院がいかに大きな存在であるかを再認識させた。しかし、自治体病院の経営難や診療科の休止は同市にとどまらず、県内各地で表面化し、一部の病院には患者が殺到。現場では「もう限界」との声が強まっている。
「どこを見ても“焼け野原”だ」。国保旭中央病院(九百五十六床)の伊良部徳次副院長(59)は周辺の医療状況をそう表現した。
旭中央病院は、三次救急など県北東部で中心的な役割を担う。昨年九月末の銚子市立総合病院の休止後は、行き場を失った患者の受け入れ先の一つとなってきた。
伊良部副院長によると、状況が目に見えて変わったのは医師不足の原因といわれる医師臨床研修制度が始まった二〇〇四年度から。周辺の病院の機能が低下し、旭中央病院に患者が殺到し始めた。
病床利用率は95−98%と、常にベッドに空きがない状態。入院日数を平均十二日ほどに短縮して回転を早めているものの、限界がある。入院が必要と診断した救急患者を入院させられず、別の病院に移送するケースも増えているという。
現状を打開しようと、周辺病院に常勤医や外来応援として延べ約四十人の医師も派遣。だが、根本的な解決にはならない。伊良部副院長は「病院の体力はさらに落ちて、もっと悪くなるだろう」と指摘し、国の早急な対策を切望している。 (宮崎仁美)
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