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20/03/2009

微罪,以前に。

 矢部善朗・創価大学法科大学院教授は次のように述べています。

このエントリについて、小倉秀夫弁護士は
 といいますか,政治資金規正法との関係でいえば,企業が直接国会議員の政治資金団体に寄付をするのではなく,一旦特定の政治団体に寄付をしてそこから国会議員の政治資金団体に寄付をするという形をとる際に,寄付者として大本のお金の出し手を記載しなければならないのはどういう場合なのか,という多分に法律解釈の問題だったりするので,この時期に突然「ネタ」が手に入るという性質のものではないようにも思えたりします。
 このような指摘をしていますが、本件が虚偽記載と言えるかどうかについては、「多分に法律解釈の問題」という以前に、献金の経緯はどうであったか、その経緯について西松建設側の誰と小沢氏側の誰との間でどのような接触があったのか、何回くらいあったのか、それぞれの機会においてどのようなやりとりがあったのかなどなどの具体的な事実関係の解明なしに法律解釈の問題は論じることができません。

 しかし,「政治資金団体Aが団体Bから献金を受けた際に,団体Bへの資金の提供元が企業Cであることを政治資金団体Aの会計責任者Dが知っていた場合,Dとしては収支報告書に献金元として,団体Bの名称を記載すべきか,団体Cの名称を記載すべきか,団体Bの名称を記載しつつ団体Cを資金元ととして注記すべきか」という点は,「その経緯について西松建設側の誰と小沢氏側の誰との間でどのような接触があったのか、何回くらいあったのか、それぞれの機会においてどのようなやりとりがあったのかなどなどの具体的な事実関係の解明なし」に論ずることができます。また,上記論点について,団体Cの名称を記載すべき,あるいは団体Bの名称を記載しつつ団体Cを資金元ととして注記すべきという見解に立った場合,団体Bの資金元が団体Cであることの資料としてどのようなものを政治資金団体Aの会計責任者Dは控えておけばいいのか(逆に言うと,政治資金団体Aの会計責任者Dは,どのような資料がある場合に,団体Bから送金を受けた献金を,団体Cからの献金として収支報告書に記載することが許され,かつ,義務づけられるのか)ということは,「献金の経緯はどうであったか、その経緯について西松建設側の誰と小沢氏側の誰との間でどのような接触があったのか、何回くらいあったのか、それぞれの機会においてどのようなやりとりがあったのかなどなどの具体的な事実関係の解明なしに」議論することが可能です。

 矢部善朗氏は,

 自分たちのいう国策捜査の対象になりたくなかったら、法律をきちんと守ってればいいんですよ。

と述べているようですが,「政治資金団体Aが団体Bから献金を受けた際に,団体Bへの資金の提供元が企業Cであることを政治資金団体Aの会計責任者Dが知っていた場合」収支報告書にどのように記載すればよいのかということは,政治資金団体の会計担当者としてはそんなに単純ではありません。団体Bから送られてきた献金の献金元を団体Cと記載した収支報告書を提出すれば,それはそれで虚偽記載に問われそうな気もします(公明党の太田代表と同じ選挙区に出馬されると噂されていた大物政治家をつぶすために何としても秘書を逮捕してやろうという気に捜査機関がなっていたとすればなおさらです。)。

 普通に考えると,金銭については形式的な占有者の所有物として取り扱うのが通常なので,上記の例についていえば,団体Bの資金元がCであったとしても,団体Bの口座から金銭が献金として送金されている以上,団体Bが企業Cから送金手続の代行を委託されてこれを行ったに過ぎないなどの特段の事情がない限り,団体Bを献金元として収支報告書に記載するのは,会計責任者の立場からすれば,やむを得ないのではないかという気がします。矢部善朗氏は,このような場合に団体Bを献金元として収支報告書に記載することは国民を欺くことであり、民主主義の根幹を揺るがすものであると考えるべきではないのかとまで 言っているわけですが,「企業Cが団体Bに資金を提供していた」という事実を知っていたとしても,「実際に献金を送金してきたのは団体Bであった」という現実がある以上,政治資金団体Aの会計責任者がその献金の献金元を団体Bと収支報告に記載することが,「国民を欺く」ものであるとまでいいうるのかは大いに疑問です。

 もちろん,このような場合には収支報告書には献金元として企業Cを記載すべきだというのであれば,献金元として団体Bを収支報告書に記載した会計責任者をいきなり逮捕して見せしめにするのではなく,国会議員等の政治資金団体の会計責任者宛に,「政治資金団体Aが団体Bから献金を受けた際に,団体Bへの資金の提供元が企業Cであることを政治資金団体Aの会計責任者Dが知っていた場合に,団体Bを献金元として収支報告書に記載する運用が広く行われているようですが,企業Cを献金元として記載するのが正しい運用です。○○年度以降,団体Bを献金元として収支報告書に記載した場合には政治資金規正法上の虚偽記載の罪に問われる場合がありますので,ご注意下さい」というアナウンスを事前にしておけばよかった話だと思うのです。そのアナウンスにおいて,必要な添付書類の例示なんかもしておけばなおも親切だと思うのです。実際,官庁の解釈とは異なる解釈に基づく法の運用が広く行われている場合に,官庁が公権的解釈を示した上で,一定の猶予期間を設け,その間に公権的解釈に沿った運用に切り替えたときには過去分について刑事・行政的責任を問わないという運用がなされることはあるので,今回のケースでもそれでよかった話だとは思ったりします。

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