「手抜きをせよ,依頼者を裏切れ,サボタージュせよ」という外野の絶え間ない要求
思えば,ネット上では,「手抜きをせよ,依頼者を裏切れ,サボタージュせよ」という要求に絶えず弁護士は晒されています。
光市母子殺害事件では,刑事弁護人としての職務を全うした弁護人たちが囂々たる非難を受けました。医療問題では,患者側代理人として難事件を勝訴に持ち込んだ弁護士のブログがコメントスクラムに襲われ,その後も矢部弁護士のブログの常連コメンテーターを中心に,法律家どもは医療問題から手をひけとの要求が盛んに突きつけられました。また,池田信夫氏のブログでは,高利貸しからの借金の返済に苦しむ消費者を救うために頑張ってきた弁護士たちが,「一段階論理の正義」云々と揶揄されて攻撃を受けました。新自由主義者たちの「二段階論理の正義」に従って利息制限法の上限での再計算やその結果としての過払い金請求を拒否しつづけなかった実務法曹は,新自由主義者から,「官製不況」の戦犯にさせられました。
これは,現代の日本にのみ見られる希有な現象です。権力にたてつく弁護士を権力の側が弾圧する,という図式なら古今東西いくらでもあるのですが,弁護士を攻撃する主体がそれとは異なります。例えば4大公害病訴訟の結果,企業が有害物質の河川等への垂れ流しができなくなり,有害物質除去装置の装備等のコスト増を余儀なくされたときは,公害病患者のために闘った弁護士たちを経済学者たちが「一段階論理の正義」などと揶揄することはありませんでした。
平成の司法改革は「法化社会」の実現を目指して始まったわけですが,ここではむしろ,「法律は引っ込め,弱者は強者に跪け」ということが公然と要求されル用になってきています。そして,弁護士がその職務を全うして弱者を救ってしまったことに対するいわば「制裁」として,弁護士資格を無意味化していこうという提言がなされたりするようになっているのです。
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Voici les sites qui parlent de 「手抜きをせよ,依頼者を裏切れ,サボタージュせよ」という外野の絶え間ない要求:
» 批判するなというつもりはないのだが [モトケンの小倉秀夫ヲッチング]
他人を批判するなら弁護士たるものもっとまっとうな批判をするべきではなかろうか。... [Lire la suite]
Notifié le le 24/02/2009 à 07:52 AM
» 弁護人の職務とは何か [文理両道]
小倉秀夫氏は彼のブログ記事「手抜きをせよ,依頼者を裏切れ,サボタージュせよ」という外野の絶え間ない要求の冒頭で、<光市母子殺害事件では,刑事弁護人としての職務を全うした弁護人たちが囂々たる非難を受けました。>と述べている。
しかし、これは普通の市民感覚からは極端にずれているのではないか。公判の当初の予定日に主任弁護人が欠席して弁論が翌月に遅延させたり、事件が母恋しさ、寂しさからくる抱き付き行為が発展した傷害致死であるという一般市民の良識からは理解できないようなことを主張するのが弁護人の職務を全... [Lire la suite]
Notifié le le 24/02/2009 à 06:49 PM
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