2009年3月30日3時1分
麻薬ヘロインの原料物質「無水酢酸」約1.4トンが2月下旬に名古屋港でアフガニスタン向けコンテナから押収された関税法違反事件で、国内で無水酢酸を調達して輸出元のパキスタン系の業者に持ち込んだのは、千葉県市川市の会社員男性(40)だったことが警察当局への取材でわかった。愛知県警は、類似事件を捜査する神奈川県警と30日、この男性宅など関係先を家宅捜索する。
警察当局によると、男性は商社など2社を通じて昨年10月以降、大阪市の大手化学メーカーから計約25トンの無水酢酸を購入。うち約1.4トンが、長野県の産業廃棄物業者で別の容器に移し替えられるなどした後、2月上旬に愛知県弥富市のパキスタン人経営の中古車販売会社に運び込まれていたという。
男性は当時、部下の会社員(35)=神奈川県相模原市=とともに、購入した無水酢酸の一部を大手運送会社の千葉県内の倉庫に保管。同倉庫からは、名古屋に向けて運び出したのと同じ2月上旬、外国人の男らが3トン余りを運び出していたことが警察当局の調べでわかった。
直後に横浜港で、パキスタン人経営の会社がアフガニスタンに向けて輸出しようとした荷物の中から、約2トンの無水酢酸が発見・押収されている。警察当局は、市川の男性らが横浜港事件の調達にも関与している疑いがあるとの見方を強めている。
名古屋港事件では、約1.4トンの輸出元だった中古車販売会社の幹部モハメド・シャブラーズ容疑者(33)=パキスタン国籍=が関税法違反(無許可輸出未遂)の疑いで指名手配されている。愛知県警が3月、相模原市の会社員宅を捜索するなどして流通経路を調べた結果、市川市の男性が浮上していたという。
警察当局は、パキスタン人ら密輸グループが国内で無水酢酸を調達する際、この市川市の男性が重要な役割を担っていた疑いがあるとみて、互いの接点などを調べる。