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【政治】

東京特派員の眼 日本の心に触れる

2009年3月29日 07時09分

明治神宮を参拝し、お神酒を飲むクリントン米国務長官。日本の心に触れた?=2月17日

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 グルジアから先日、外相の夫とともに来日した世界的バレリーナのニーナ・アナニアシビリさんは、日本の感想を「大変温かくもてなしてくれる」と言っていたそうです。外国人はどんな時に、日本の心に触れたと感じるのでしょうか。

■日伊ともに義理人情 P・デミリア氏 SKY TG24(イタリア)

 遠い国同士なのに、イタリア人と日本人は性格がよく似ている。共通しているのは義理人情で社会が動いていることだ。人間関係を重視する。

 日本人がよく使う「お世話になりました」「よろしくお願いします」「この間はどうも」「頼みます」という言葉は、イタリア語にも同じ表現がある。

 米国は契約、ルールに基づく社会だ。イタリアと日本は米国とは全く違う。そうしたドライな社会ではない。

 ただ、先進国の中でイタリア、日本ともに汚職が多いのも、義理人情の社会だからだ。

 もちろん、イタリアと日本と全く異なる面はある。日本では、ビジネス上の約束の時間に十五分でも遅刻したら、懲役ものだ。情状酌量の余地はない。まあ、これは冗談半分だが。一方、イタリアでは十五分ぐらいなら謝る必要もない。

 日本人の時間厳守は、ビジネスの場合に限らない。親しい友人の間でもそうだ。イタリアでは、友人の家やパーティーに招待された時は、一時間遅刻しても問題はない。

 ただ、昔に比べれば、最近の日本人は時間にややルーズになった。この点でもイタリア人に近づいたのかもしれない。

■技術を愛し極める姿 朴 弘基氏 ソウル新聞(韓国)

 自分の技術を高めようとする日本人の姿に触れるたびに、「私は今、日本で暮らしているのだな」と実感する。

 技術を磨く姿を目にするのは「匠(たくみ)の技」と呼ばれる伝統的工芸に限らない。例えば料理人は人生をかけて、おいしいものを作ろうとする。時にはそれが子や孫まで代々続いていく。

 現代的な工業分野でも、担当者は自動車の部品一つ一つを、できる限り正確に、緻密(ちみつ)に作り上げようとする。外国発の技術でも、いったん取り入れたらそれを消化し日本発の新たな技術のように改良してしまう。技術を愛して極めようとする姿は、とてもすてきなことだと感じる。

 韓国は日本に比べて職業の貴賤(きせん)意識が残っている。技術職の人たちは、何とか転職したいと願う傾向がある。それとの対比で、技術にこだわる姿に「日本の心」を感じるのかもしれない。

 住宅地や商店街では皆で掃除をして、きれいに保とうとしている。「目で食べる」との表現があるように料理の盛り付けや皿にも神経を配る。清潔さや美しく見せる手順へのこだわりも、日本の心を感じる点だ。

■集団主義 三つの『わ』 王 開虎氏 北京日報(中国)

 日本文化の中心には、三つの「わ」がある。一つ目は「和」だ。例えば、中国ではレストランや電車の車内で客が大声でしゃべっている。とても騒がしい。

 ところが、日本ではそんなことはない。他人に迷惑を掛けないという気持ちがある。

 車の運転マナーも日本人は良い。ほかの車のことをちゃんと考えている。日本のサービス業の質が高いのも、「和」を大切にする精神が背景にある。

 二つ目の「わ」は「輪」だ。家族、職場、近所、国家と、小さな「輪」から大きな「輪」まで、日本人はさまざまな集団に属している。そして、集団の中の秩序、つまり「和」を大事にする。そのために自分の個性を抑えている。

 三番目は「話」だ。「輪」の「和」を維持するために、発言を慎む。中国人のように、自分の主張をズバリとは言わない。あいまいにしておく。

 だから中国人は、日本は口げんかが全然起きない社会だ、というイメージを持っている。

 日本精神の核心は「集団主義」だ。資源に恵まれず、災害も多い日本が世界第二の経済大国になったのは、この集団主義があるからこそだ。

(東京新聞) 

 

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