トップへ戻る

執筆者

本田透Monday〜Friday

(Toru,HONDA)

名前

作家。『イマジン秘蹟』『円卓生徒会シリーズ』『ボクの紫苑』シリーズなど好評発表中。『喪男(モダン)の哲学史』等評論でも執筆活動を展開する。

ニコニコなネ申Tuesday

(nikonikoGOD)

名前

動画配信サービス「ニコニコ動画」で活躍する人間たちに目を向けて、彼ら(彼女ら)のリアルな考え方、生き方に目を向けていく。

堀田純司Wednesday

(Junji,HOTTA)

名前

大阪府出身。ノンフィクションライター。キャラクタービジネスやロボットテクノロジーなどの分野を主に取材する。著書に『萌え萌えジャパン』など。

北尾トロThursday

(Toro.Kitao)

名前

福岡県生まれのライター。著書に『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』『男の隠れ 家を持ってみた』など多数。現在「ダ・ヴィンチ」「週刊文春」などで連載中。

カラスヤサトシFriday

(Satoshi,KARASUYA)

名前

大阪府出身。「月刊アフタヌーン」等で作者自らを主人公にした4コマ漫画を連載。カラスヤサトシの奇行は単行本『カラスヤサトシ』『カラスヤサトシ2』でたっぷりどうぞ。

NAOH [講師]Sunday

(NAOH)

名前

関西発、ファンキーサックスプレイヤー。ライブハウスやクラブシーン、テレビ・ラジオ・WEBコマーシャル、また番組司会や執筆等で幅広く活躍中。日曜枠のサックス講座講師として、BBNに華を添える。

記事

ニコニコ動画の神インタビュー
第7話 歌に力を「ほんこーん」

ほんこーん

こんにちは。「ほんこーん」です
9月5日に放送されたNHK BS2「ザ☆ネットスター! 9月号」に出演した「ほんこーん」さん。彼女は「ニコニコ動画」の「歌い手」のひとり。透明感のある歌声と、愛嬌のあるキャラクターで人気の彼女にお話をうかがった。

取材・文/樋口夏樹 写真/金澤智康

歌い手として大事なもの
「歌ってみた」は、第1回でも紹介したように既存の曲や「初音ミク」オリジナルの曲(*1)を実際に歌って、アップするところである。最近ではその「歌い手」の中から、大手レーベルに所属するものや、アニメの主題歌を歌うものまで出て来ている。埋もれていた才能が、発掘されつつあるのだ。
「ほんこーん」さんは、他の「歌い手」とちょっと違っている。彼女は、その名が示す通り香港に住んでいるのである。国籍も香港だ。生粋の香港人である。とはいえ、投稿されている歌は、ほとんどが日本語で歌われている。あまり癖のない日本語の発音なので、一時期は「本当は日本人なのではないか?」などとも言われていた。

透明感のある歌声も特徴的だ。彼女の動画音声のMIXを担当している「あてっくす」氏によると、「他の音に負けない非常にヌケが強くマイク乗りの良い声質を持っていて、そのうえ、感情をきちんと歌に乗せて歌えるんです」という。確かに感情を込めた抑揚が歌の随所に表れていて、動画につけられるコメントも「感動した!」「泣いた!」などと書き込まれることが多い。ほんこーん「つきうさぎ」という悲恋を描いた曲を歌った際には、最後のところで感極まって泣いてしまったそうだ。実際に泣き声が微かに聞こえる。

「日本語はまだあんまり出来ない」という彼女は、1曲歌うだけで、ものすごい労力を使う。歌詞のアンチョコが載っているノートには、細かい書き込みがびっしりとあった。そこには、日本語の意味や発音はもちろん、歌の内容がどのような状況で、どういった感情を込めて歌うのか、などが細かく書かれている。プロ並みの努力である。

(*1)ニコニコ動画で公開された初音ミクが歌っているオリジナル曲。初音ミクが作っているわけではなく、初音ミクを操作した”P”と呼ばれる作曲者が作っている。

香港人もいるよ!
BBN:ニコニコ動画を見るきっかけは?

ほんこーん:去年の5月ぐらいまではアニメやMADを紹介する台湾のサイトを見ていたんですが、そのサイトには「ニコニコ動画」の面白い動画のリンクが貼ってあったんです。それで「ニコニコ動画」が面白いなと思って、会員になったんです。

BBN:では動画をアップするようになったきっかけは何ですか?

ほんこーん:台湾人が作った「組曲ニコニコ動画の大合唱」というのがあったんですよ。大人数で集まって動画を作るという。それで、それを見た日本の人たちが集まって、お返し動画を作ったんですね。その動画がすごかった。感動しました。日本人は予想以上に優しいなって思いました。「日本人はこんな動画を返してくれるんだ」って。だから、台湾以外の国の人は、あれを見てすごく羨(うらや)ましかったんだと思いますよ。「台湾人いいなぁ~」って。香港人の私も何かしたいなと思ったんです。「ニコニコ動画に香港人もいるよ~」って教えたかったんですよ。

ほんこーん

ダメなオタクです
BBN:投稿する前はどんなことやっていたんですか?

ほんこーん:同人誌を作ってました。この前に日本に来たときに、「マリみて」(*2)の小説とかを買いました。まだ全部読んでないけど。元々は絵を描くのが好きだったんです。中学2年生のときは、ずっとネットゲームをやっていて成績を落としたりしていました。次の年には頑張って上のクラスに戻ったんですが。なんというか、ダメなオタクです(笑)。

BBN:絵は今も描いているんですか?

ほんこーん:今はもうほとんど描いてないです。前は大事なテストの前日でも、同人誌を描いているぐらいだったのに(笑)。今はその時間で歌の練習をしてます。

BBN:歌は好きですか?

ほんこーん:今は好きです。でも、投稿する前はそんなに興味ありませんでした。シャワーを浴びているときとかに歌うだけだった。学校の音楽の授業だっていつも寝るだけ(笑)。はじめて投稿した動画も「歌ってみた」だけど、絵がメインだったんですよ。そのあとも、しばらくは絵がメインで、「メルト」のPV描いたり、「コンビニ」のPVを書いたりしていました。でも今は歌がメインで、動画もあんまり作ってないです。

(*2)『マリア様がみてる』今野緒雪著。アニメなどにもなった大人気の少女小説。

私にとって日本は夢が叶(かな)う国
ほんこーんBBN:将来の夢は?

ほんこーん:今は受験生だからはっきりと分からないです。受験勉強を一生懸命やらないと。

BBN:勉強は好きですか?

ほんこーん:大嫌い。でも、勉強はやる気の勝負!だから頑張ります。

香港では成績によって、だいたい行く大学が決まっているんです。だから、高校3年生になるのもちょっと難しいんです。高校2年生の時に公開テストがあって、それに落ちてしまうと進学できない。3割ぐらいの学生は落ちてしまうんです。その成績によって「あなたの成績はこのぐらいだからここ行きなさい」ってなるし、「ここの大学を出たらこの企業に就職しなさい」ってなる。日本よりもちょっと厳しいんです。

だから、将来の夢を聞かれても難しい。例えば、私が先生に歌の仕事をしたいって言ったら「目を覚まして、勉強をしなさい」って言われました。夢なんて叶わないから、ちゃんと勉強して、良い仕事を探して、良い人生を送りなさいって。

BBN:じゃあ、歌手にはならないんですか?

ほんこーん:香港では難しいと思います。香港は人口が少ないから、商業活動以外の仕事がほとんどないんです。日本に来て初めてストリートミュージシャンというものを知りました。香港にはそんな人いないです。そんなことしたってなんにもならないから。親も歌手なんかよりも、事務員がいいと言っています。親にとって歌手なんて不安定で良い仕事じゃないですし。香港では、人生でいくら儲けたとかが人間の価値みたいになっているところがあるのが、悲しいところですね。

だから、私にとって日本は夢が叶う国です。才能のある人が、才能を生かして夢を叶えられる場所。日本はすごい国ですよ。自由で誰にでもチャンスがあって。どれかひとつでも才能があれば認めてくれる国。香港ではそうはいかないです。

ほんこーん

歌い手として良い音楽を作っていきたい
BBN:歌い始めてからと歌う前ではどう違いますか?

ほんこーん:歌の才能を自分が持っているとは思わなかったです。だから自分の価値が上がったような感じ(笑)。さっきも言いましたけど以前はもっと絵を描いてました。でも今は歌詞を考えるとか、感情を込めるとか、そういう練習をやって毎日3時間ぐらい練習しています。音楽がこんなに素晴らしいものだったなんて、前はそんなこと全く考えていなかった。だから「ニコニコ動画」で音楽に出会えて本当に嬉しいです。

BBN:中国の歌を歌おうとは思わなかったんですか?

ほんこーん:やっぱり日本語は外国語だから、難しい。だからこそ深く読んだり考えたりできるんです。しっかりと歌うなら私にとって、中国語より日本語の方が歌いやすいように思います。私が歌った曲はみんな初音ミクのオリジナル曲です。私はミクには感情があると思います。そこに作曲者の愛があるから。でも、ミクはプログラムだから、人の色々な感情をうまく表現できない場合もあって、時々、原曲の魅力が100%を出せない。

例えば、「つきうさぎ」という曲は素晴らしいと思います。でも、ミクに歌うのはなんか足りない。これはすごくもったいないと思いました。それが原曲の良さを思うとちょっと悔しいと感じるから、私が頑張って、原曲の感情を表現したかったんです。みんなにこの感情を教えてあげたいって。だから感情を込められない歌は歌いたくないです。原曲に失礼だし。

ほんこーんBBN: 「ニコニコ動画」でアップするとき、どう思いますか?

ほんこーん:マイリストとか再生数とかは気にしないです。それは、他の人と比較することだから。私は私にしか歌えない歌を歌います。自分は自分だから。

コメントはすごい気にしますけど。最近は、コメントやメールやメッセージでたくさん「感動した」って書いてもらえるんです。そう言われて、自分の歌は他の人を感動させる力があると思ったんです。

コメントは私の力です。ファンの人には本当に感謝しています。みんなすごく優しい。私は気持ちを言葉で表すのが苦手だから、あんまりちゃんとしたことが言えないです。だからお礼として歌をみんなにあげたい。本当にファンの人たち好きだから。

BBN:そんなに好きなんですか?

ほんこーん:私、とても緊張しやすいんです。だから、NHKの取材のときも緊張して、眠れなかった。それを日記に書いたら、ファンの人からメールが来たんです。「そんなに緊張しなくていいよ。私たちはそんな完璧なほんこーんを求めていないから。ほんこーんの笑顔を見たいだけ」っていう。それを読んだときに、感動して泣きました。今思い出しても泣きたいぐらいの気持ちになります。

ファンの数は他の歌い手さんたちと比べると少ないほうだと思います。でも、みんなすごく良い人たちばっかりです。

BBN:今後も歌っていきたいですか?

ほんこーん:もちろん。歌はずっと続けて行きたいです。大学に入学したらきっと暇があるから、そしたら今よりも真面目に歌に取り組みたいです。

BBN:真面目にというと?

ほんこーん:「ニコニコ動画」で素敵な音楽と出会って、音楽が好きになったんです。だから歌手として良い音楽を作っていきたいと思います。

ほんこーん

(プロフィール)
ほんこーん
1990年3月12日生まれ。香港在住。ニコニコ動画内で活躍中の歌い手。9月からの新学期で中学7年生になるので多忙になるとのこと。
香港では小学校6年・中学校7年・大学3年。 
ブログはhttp://www.noborustation.com/

ニコニコ動画を再生するには無料会員登録が必要です。

marron

超空転神トランセイザー

店じまい3rd

<関連記事リンク>

最終話「ニコニコ動画」から生まれた「森之宮先生」
第12話 海の外でもニコニコ!異邦の歌い手たち
第11話 みんなのグラウンド「ピアプロ」
第10話「IKZO」の青春時代
第9話「ニコニコ技術部」はっしんせよ!
第8話「阿部ダンサーズ超監督」の恩返し
第6話 北の大地の「タイツォン」
第5話 エレクトーンの神奏者「maru」
第4話 ベースプリンセス「ティッシュ姫」の冒険
第3話 ヴォーカロイド化する作曲者「doriko」
第2話 ニコ動で産声(うぶごえ)をあげたニコドル「47」
第1話 なんだ、ただのカニか。
第0話 ネットには、ものすごい人がいる

Mopix PSP版発売決定!!「アイドルマスター」制作者に直撃!

CloseUp WebMovies(かーず・極楽とんぼ他)
CloseUp Flash(UG-K)