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【主張】地価の下落 資産デフレに警戒怠るな
地価の下落が急だ。景気後退から、このまま下落が長期化するようなら、資産デフレを通じて実体経済をさらに冷え込ませかねない。政府は追加的な土地対策を含め、金融、財政の両面から実効性ある景気のてこ入れ策にいっそうの知恵を絞るべきだ。
国土交通省が発表した1月1日現在の全国地価動向調査結果によると、公示地価は住宅地、商業地とも、全国平均が3年ぶりに下落に転じた。
全国の約2万8000カ所の調査地点で上昇が見られたのは、北海道の伊達市など23地点だけで、これは調査の開始から40年間でもっとも少ない。
昨年の調査では東京、名古屋、大阪の3大都市圏で特定地域ながら高い上昇が見られ、地方圏も下落幅を縮小した。長期下落傾向を続けてきた日本の地価にも、やっと持ち直しの期待が高まっていた中での落ち込みである。
今回の地価下落は、昨年来の金融危機を背景に海外の投資ファンドが日本の不動産市場から撤退しはじめた影響が大きい。予想されていた結果ではあるが、実際の調査数字が与える心理的インパクトは小さいとはいえない。
その一方、ここ数年の地価上昇は企業などの投機的土地取引によるものではなかったとし、バブル崩壊時のような地価下落による打撃は、それほど深刻とはいえないとする見方もある。
低迷していた首都圏の分譲マンション市場も、今年に入って客足が戻りつつあるとの報告もある。分譲価格の引き下げに加え、住宅ローン減税の延長、低金利が後押ししている。新築マンションの在庫も減少に転じており、明るい兆しがないわけではない。
だが、オフィスビルの空室率はなお上昇を続け、全体としては住宅売買もまだまだ低調だ。土地の担保価値が下がれば、金融機関はさらに貸し渋り姿勢を強め、企業の雇用や設備投資への意欲が一段と萎縮(いしゅく)する恐れもある。
実体経済の悪化で、地価の下落が株安や個人消費の落ち込みによる物価下落をさらに強めるようなら、日本経済はデフレの悪循環に陥る恐れも出てくる。
政府はこれまでに、住宅ローン減税の延長・拡充に加え、不動産譲渡益課税の軽減も打ち出している。だが経済対策で重要なのは何といってもスピードだ。そのことは肝に銘じてほしい。