■日本海側元山
北朝鮮が「人工衛星」と主張して「テポドン2号」改良型とみられる長距離弾道ミサイルの発射準備を進めている問題で、この発射計画とは別に、北朝鮮が日本海側の元山(ウォンサン)付近でも中・短距離ミサイルの発射準備を進めていることが28日、複数の政府関係者の話で分かった。米国の偵察衛星などが監視を強めており、新たな発射計画はテポドン2号の発射直後に実行に移されるとの分析もある。
[フォト]海上自衛隊のイージス艦「ちょうかい」甲板のミサイルの垂直発射装置
相次ぐミサイル発射計画は、平成18年に国連安全保障理事会が北朝鮮に「大量破壊兵器と弾道ミサイル計画の完全なる放棄」を求めた制裁決議1718号に違反するだけでなく、「衛星」打ち上げとの北朝鮮の主張が矛盾に満ちていることを示している。
複数の政府関係者によると、新たにミサイルの発射準備が進められているのは、北朝鮮の東海岸にある元山付近の発射基地。元山は北朝鮮が4月4−8日に長距離弾道ミサイルを発射しようとしている舞水端里(ムスダンリ)の基地から約250キロ南西に位置し、貨客船「万景峰92」の母港がある主要都市で、米国や韓国は偵察衛星で付近の基地を監視していた。
これまでの日米韓3カ国による分析により、新型ミサイルの射程は「短距離か中距離タイプ」(防衛省関係者)と推定されるが、ミサイルは燃料タンクの大きさや注入量、何段積み上げるかによっても射程を調整できる。
舞水端里よりも元山の方が韓国や日本の大都市圏に近く、日韓は特に警戒を強めている。発射基地には複数発が配備されているとの見方もあることから、日米韓で緊密に情報交換している。
また、具体的な発射計画は明らかではないものの、この中・短距離ミサイルの発射は「長距離弾道ミサイルの発射後になる」(政府関係者)と分析されている。国連で対北朝鮮制裁決議が採択されたり、米国からエネルギー支援などの譲歩が引き出せなかったりした場合に「北が次々とミサイル発射のカードを巧みに使ってくる可能性がある」(米政府関係者)との見方からだ。
また、北朝鮮は北西端の東倉里(トンチャンリ)にも新たなミサイル発射施設を建設して、エンジン燃焼試験などを行っているという。「東倉里で実際にミサイル発射ができるまでには時間がかかるものの、発射基地は増えている」(政府関係者)と、北朝鮮はミサイル配備を着々と進めているとの見方が有力だ。
日米韓は元山での新たな発射計画の実態をつかんだことで、北朝鮮への制裁強化や長距離弾道ミサイルの迎撃などに慎重な姿勢を崩さない中国、ロシアに対する説得材料とし、働きかけを強めていく考えだ。(尾崎良樹)
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