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日本の「歪曲教科書」、2種類登場する可能性も(下)

 「つくる会」と決別状態になった八木氏側は06年10月、「日本教育再生機構」を発足させ、さらに07年7月には「教科書改善の会」を組織した。「つくる会」との関係を解消し、「教科書改善の会」と手を組んだ扶桑社は、新しい教科書を発行する子会社として「育鵬社」を設立した。

 しかし、どうやって教科書を最初から書き直すというのだろうか。八木氏側のある人物は、06年7月に朝日新聞系列の週刊誌『AERA』が行ったインタビューに対し、「“つくる会”の教科書は極端だ。中国や韓国をいたずらに挑発するかのような記述も多く、これでは反発を招くだけで、教育現場で理解を得るのは難しい」と語った。

 これは「つくる会」の教科書よりも「洗練された記述」が必要だという点を指摘したものだが、基本的な歴史認識の差はほとんど見当たらない。北東アジア歴史財団のヨン・ミンス研究員は「“つくる会”の分裂は、日本の右派の理念や方向性の差というよりも、パワーゲームの結果と見るべきだ」と語った。「つくる会」からの脱退を主導した八木氏は06年9月、テレビ番組に出演中に、皇室に男の子が生まれたというニュースを聞いて「感激しました」と言い、涙を流した人物だ。

 実際、「教科書改善の会」側は▲旧日本軍の「従軍慰安婦」や、中国・南京での「30万人大虐殺」、沖縄戦での「集団自決命令」などは虚構であり、教科書の記述から削除する▲竹島(独島の日本名)や尖閣諸島(中国名・釣魚島)が日本固有の領土であることを明記する-といった、これまでの「つくる会」教科書の基本的な方針を維持することを決めた。同会が次に教科書の改訂の行われる12年に、「育鵬社版教科書」を発行することが予想されている。

 一方、「つくる会」に残ったメンバーは、藤岡氏を新たな会長に選び、右派の知識人の雑誌『自由』(今年2月号を最後に廃刊)を発行していた自由社から教科書を発行しようとしている。藤岡氏らは現在の扶桑社版の教科書の著作権の70%を有しているため、残りの30%について新しい教科書で記述を加えるものとみられる。なお、「つくる会」と「教科書改善の会」は現在、扶桑社版教科書の著作権をめぐって対立している。

 ヨン・ミンス研究員は「“つくる会”は最近、文部科学省に送った質問状で、1982年に策定された“近隣諸国条項(近隣のアジア諸国の立場に配慮した教科書検定の基準)”が“誤った自虐的な記述が教科書にあふれる原因になっている”と主張した。このことから、現在よりもさらに問題の多い教科書を執筆する可能性もある」と述べた。「現在よりもさらに歪曲された教科書」(「つくる会」の教科書)と、「洗練された記述で歴史を歪曲した教科書」(「教科書改善の会」の教科書)が同時に登場するという状況もあり得るということになる。

兪碩在(ユ・ソクジェ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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