民主党の小沢一郎代表に厳しい世論が突き付けられた。西松建設の巨額献金事件で、小沢氏が公設秘書の起訴後も続投を表明したことに対し、共同通信社が実施した全国緊急電話世論調査で66・6%の人が代表辞任を求めた。
代表続投を容認したのは28・9%にとどまった。事件に関する小沢氏の説明についても「納得できなかった」が79・7%に上り、「納得できた」はわずか12・0%だった。小沢氏の説明に多くの人が納得せず、続投も支持していない現状が浮き彫りになったといえよう。
小沢氏は秘書起訴後の記者会見で、続投が次期衆院選に及ぼす影響に関し「プラスかマイナスか私は判断できない。国民の受け取り方次第だ」と述べた。世論調査の結果をどう受け止めるのか。
小沢氏はこれまで身の潔白と捜査批判を繰り返してきた。法的問題はもちろん裁判所の判断を待つしかない。一方で問われているのは、政権交代を狙う民主党党首としての資質や政治的責任である。
最も疑問視されるのは、西松建設と小沢氏との関係だ。献金額は起訴されただけでも三千五百万円に上る。過去にさかのぼれば、十数年で約三億円になるとされる。
減少する公共事業の受注競争にしのぎを削るゼネコンから、どうしてこれだけ巨額の献金を受けたのか。小沢氏は詳しい献金内容は知らないとするが、説得力に欠ける。
さらに西松以外のゼネコンとのつながりはどうなのか。癒着を疑われるような深い関係を指摘されながら、小沢氏ははっきり説明をしていない。かつての古い自民党のような、うさんくさい体質を想起している人が多いはずだ。
こうした疑惑に正面から答えない以上、国民の理解は得られまい。小沢氏はもう身を引くべきではないか。
小沢氏への不信感が強まる中、今回の調査では次期衆院選比例代表の投票先や、望ましい政権の枠組みに関する回答は、民主党が依然として自民党に対し優勢を保っている。国民はまだ、小沢氏個人の問題として受け止めているようだ。
きのうの民主党代議士会などでも、小沢氏から疑惑を晴らすような説明はなく、一部異論が出たものの続投を容認した。各議員は有権者にどう説明するのか。毅然(きぜん)とした危機対応能力を発揮しないと、いずれ党自体の信頼を損なうことになろう。
北朝鮮が「人工衛星」と主張して打ち上げ準備を進める長距離弾道ミサイルに対し、政府の安全保障会議の決定を経て浜田靖一防衛相が自衛隊に初の破壊措置命令を出した。北朝鮮が発射を通告した四月四―八日に向け、緊張が高まってきた。
「テポドン2号」とみられるミサイルで、国際海事機関に伝えられた発射計画通りなら「衛星」は東北地方を飛び越える。だが、失敗などで日本の領土、領海に落下の恐れがある場合、ミサイル防衛(MD)システムで迎撃する。命令に基づき、自衛隊は地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の移動や海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦の日本海展開などを進める。
MDによる迎撃は技術的困難を伴い、失敗すれば巨額の税金をつぎ込んだシステムに疑問が呈される。かといって使う姿勢を取らなければ批判を受けかねない。政府としても苦渋の迎撃態勢といえようが、決断した以上、万一の場合に備え防衛省は最善を尽くしてもらいたい。ミサイル発射や迎撃に関する情報の開示も重要だ。
発射予告時期まで、少ないとはいえ時間はある。備えを固める一方で、政府は北朝鮮が発射を思いとどまるよう、なお外交努力をすべきだろう。
ミサイル発射が強行された場合、政府は日本が主導する形で国連安全保障理事会で制裁、非難いずれかの決議採択を目指す考えだ。しかし、中国やロシアは「人工衛星打ち上げ」に一定の理解を示しているとされる。米国、韓国を含む関係国の北朝鮮をめぐる温度差解消にも努める必要がある。
北朝鮮はこれまでもしばしば強硬策で相手国の動揺を誘ってきた。日本としては冷静、着実な対応が肝要であろう。
(2009年3月28日掲載)