「デートDV」被害絶えず 監視や束縛…高校生向けに講座も
「居場所の報告を逐一求められる」「携帯電話から友達の番号を消された」…。恋人から暴力や精神的な嫌がらせを受ける「デートDV(ドメスティックバイオレンス)」の実態が次々と表面化している。24日に内閣府が発表した調査では、20、30代女性の約5人に1人が、交際相手から身体的暴行や恐怖を感じるような脅迫などを受けた経験があることが分かった。ただ、自覚のない加害者、被害者も多く、認識を高めてもらうための啓発活動が各地に広がっている。(安田幸弘)
◆別れ話に「死ぬ」
関東地方の30代の女性は昨夏、実業団の野球チームに所属する男性と付き合い始めた。優しくて、さわやかな感じに好感を持った。
だが、交際を始めると、男友達の連絡先を携帯電話から勝手に消されるなど、嫉妬(しっと)深さが目立つようになった。誰といるか監視の連絡が入ったり、「オレの彼女とどういう関係だ」と男友達に電話で問い詰めたりすることも。被害はエスカレートして、女性は首をつるし上げられ、殴られたこともあった。
別れ話を切り出すと、「別れるなら、オレは死ぬ」と男性は自分の首にサバイバルナイフを突きつけた。女性は「死ぬと言われるのは、ほとんど脅迫。精神的に苦しむなら、結婚した方がいいかも…」と悩みを記者に打ち明けた。
◆携帯電話普及が一因
デートDVへの社会的関心は、数年前から高まってきた。被害の内容は人によって異なるが、加害者の大半は男性で、多いのは過度の監視や束縛だ。
「携帯電話の普及で、いつでもどこでも連絡がとれるようになり、束縛したりされたりする時間が昔と比べて長くなった」。DVの防止活動などを行う市民団体「あゆみだした女性の会」(岐阜市)の広瀬直美代表(44)は、こう説明する。
同会では平成19年から、「デートDV防止プログラム」と題した講座を高校で開いている。「若いうちにデートDVとは何か知ってもらうこと」が狙いだ。
NPO法人「女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ」(神戸市)も昨年度から、兵庫県と共同で、高校での「デートDV防止出張授業」を始めた。要請を受けて昨年度は10校で、今年度は46校で開催。女子生徒の3割近くが何らかの被害を受けたことが分かり、中には「自分が加害者だと気づいた男子生徒もいた」という。
◆「愛と暴力は違う」
歌を通じて啓発する人もいる。2年前にシャンソン歌手としてCDデビューし、埼玉女子短期大で非常勤講師(女性学)を勤めるジャーナリストの宮淑子さん(64)は昨秋、デートDVをテーマにしたオリジナルCD「愛という名の暴力」(オリエントレコード)を発表した。
講義を受ける学生約200人のうち約20人が被害者だと分かり、ショックを受けたのが発端で、学生の実体験を基に自ら作詞した。
宮さんは「『愛』と『暴力』は全然違うのに混同しがち。若い世代の人たちが愛情とは何か、デートDVとはどんなことなのか気づくことが、結婚後のDV防止にもつながる。歌がそういうきっかけの一つになれば」と話している。
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■20、30代の20% 経験「ある」
内閣府が、10代か20代のころに交際相手がいた(いる)男性799人と女性943人に、相手から「身体に対する暴行」「精神的な嫌がらせや恐怖」「性的な行為の強要」のいずれか一つでも受けたことがあるかどうか聞いたところ、女性は20代が最も多く全体の21・3%、30代の19・6%が「ある」と回答した。男性は最も多い20代で9・4%。3項目のうち1つでも該当した女性128人のうち、21・9%は「命の危険を感じた」という。
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