きょうの社説 2009年3月28日

◎志賀1号機再稼働へ 石川支店を「本店」と同格に
 志賀原子力発電所1号機が今月三十日にも再稼働する見通しとなったのを機に、北陸電 力に熟慮してほしいことがある。金沢市に置く石川支店を「本店」に格上げし、富山本店と同格に扱ってもらいたいのだ。

 北電が、水力発電に適した富山の地の利を生かし、石川に電力を供給していた時代なら 、本店機能は一つでもよかった。だが、電力供給の主役は、水力から石油火力、さらには原子力や石炭火力へと移った。志賀原発1、2号機(計189万キロワット)、石炭燃料の七尾大田火電1、2号機(計120万キロワット)を抱える石川県の存在感は、これからますます高まるだろう。

 特に志賀原発は、2号機に加えて1号機が再稼働すれば、北電の発電電力量の約四割を 占めるまでになる。石川県が「電力輸入県」から「電力輸出県」になった意味は重い。北電が発祥の地の富山県を大切にするのは当然だが、電力供給地としての石川県にも相応の目配りをしてほしいのである。

 電力各社が、使用済み核燃料を再利用するプルサーマル計画の実施準備を着々と進める なか、周回遅れの北電は、今まで以上に「地元企業」として認知される存在にならないと距離は詰められない。

 臨界事故隠しは、志賀原発という北電の現業部門の心臓部と、経営本体の心臓部が、距 離的にも心理的にも遠い関係にあったために起きた。原子力発電は、細心の注意をもって扱わねばならぬデリケートな先端技術である。技術はまだ成熟途上にあり、ひとたび事故が起きれば恐るべき厄災をもたらす。本店からの「遠隔操作」では制御し切れないのは明らかだ。

 一昨年、志賀町に原子力本部が移管され、経営責任を持つ副社長と常務が本部長、副本 部長として常駐し、業務を統括するようになった。閉鎖的な「原子力ムラ」の風通しが良くなったのは前進だが、顔はまだ「富山本店」を向いてはいないか。

 業務拡大に伴って、企業が社内機構を再編し、地元と東京などに「二本社制」を敷く例 は珍しくない。北電もまた本店機能を富山市に集中しておく理由は、もはや無くなったと思うのである。

◎09年度予算成立 回復の兆し追加策で拡大
 麻生太郎首相が「最大の景気対策」と位置づけてきた二〇〇九年度予算が年度内で成立 したのはよいとしても、実質GDP(国内総生産)指標が示す需要の落ち込みなどに対応するには明らかに力不足である。景気回復の足がかりをつかむには、予算の効果的な執行とともに追加経済対策が大きなかぎを握る。

 米国が打ち出した金融機関の不良資産買い取り策などが市場に歓迎され、住宅着工件数 や耐久財受注などの米国経済指標にも改善傾向が見え始めたため、日本の株価もここにきて回復基調を続け、ほぼ二カ月半ぶりに八六〇〇円台まで戻した。年度末の過度な悲観論は遠のいたように見える。

 だが、四月以降は企業の三月期決算が発表され、その内容次第では株価が再び下落し、 実体経済の落ち込みが深刻化するとの指摘もある。米国にしても、不良資産買い取り策の実行段階で思った通りの成果が伴わなければ失望が広がることも予想され、とても楽観視できる状況にはないだろう。

 二〇〇九年度予算は一般会計総額八十八兆五千五百億円と当初予算ベースでは過去最大 となる。住宅ローン減税や中小企業の資金繰り支援、雇用の安全網を整備する施策なども盛り込まれた。予算配分の詳細が決まっていない施策については具体化を急ぎ、景気浮揚が確実に期待できるものは可能なかぎり前倒ししてほしい。

 地方圏でも高速道路料金引き下げが始まり、定額給付金支給に伴う商戦も活発化してき た。街角の景気実感を示す現状判断指数が二カ月連続で改善するなど、明るい数値が一部で出てきた。

 そうした回復の兆しや消費の前向きな動きを強力に後押しし、経済全体へと波及させる うえでも大規模で実効性ある追加経済対策が欠かせない。矢継ぎ早に対策を打ち出すことで市場の期待感をつなぎ止め、冷え込む消費者心理を刺激し続けることが大事である。

 麻生首相は週明けにも〇九年度補正予算案を含めた追加経済対策を正式に指示する。い たずらに空白を置かず、検討作業を急いでもらいたい。