玉造厚生年金病院(松江市玉湯町)で早期に手術をしないなど不適切な処置があり、下半身まひの障害を負ったとして、県東部の男性(60)と家族が病院を運営する「厚生年金事業振興団」と男性医師に約3億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。秋吉仁美裁判長は「適正な部位について緊急に手術を行い、腫瘍(しゅよう)を全摘すべき義務があった」などとして、約1億800万円の支払いを命じた。
判決などによると、96年10月、男性は髄内腫瘍と診断された。早期の摘出が必要で、同12月に男性医師の手術を受けたが、腫瘍と関係ない部分の組織を摘出された。手術後も症状が進行し、翌年9月、医師からは「手の尽くしようがない」と誤った説明を受けた。同月に別の病院に転院し、適正な部位の手術が行われたが、下半身にまひが残った。
27日、県庁で会見した男性は医師や病院から謝罪はないといい、「長い間戦ってきてやっと判決が出て、ほぼ納得いく内容で喜んでいる。ただ、医療ミスを7、8年も隠し、『もう手の尽くしようがない』とまで言われた。今後のためにも、そういう病院を許すことはできない」と訴えた。
同病院は「判決文を吟味して対応したい」と話している。【御園生枝里】
毎日新聞 2009年3月28日 地方版